エピローグ、そして明日のプロローグ
日向は倒れて動かなくなった老人をじっと眺めていた。
傍らの平沢は銃を撃った時のまま固まっている。
「もっと銃の扱いに離れていると思ってました」
「まさか、射撃訓練を一回やっただけですよ…」
二人が力なく軽口のようなものを叩いていると、地面が激しく揺れた。天井から砂埃が降り、二人はとっさに屈み落下物に備えた。遅れて轟音が響いた。
「隕石ですかね?」
「でしょうね、これで委員会は文字通り跡形もなく消えたでしょう…」
平沢が目を伏して言った。
「日向さん、この後どうなるんでしょうか…?」
「委員会は無くなりましたが、まだ政府があります。あれだって立派な統治機構です」
「ノウハウなんて何も持ってないでしょ?形だけの組織だと認識しています」
「だから、これから忙しくなりますね。あなたにも手伝ってもらうことになるでしょう」
「確かに、生きていればどうにかなるでしょうね、あなたみたいな地下鉄を疑ってこれたような人間がいればどうにかなります」
「ところで、彼の言っていた大いなる知性は、本当にあるのでしょうか?」
平沢がトンネルの奥でチカチカと点滅を繰り返すコンピュータ群を眺めながら聞いてきた。
「もし、僕が大いなる知性なら、そっと隠れているでしょうね」
地下鉄の国 槻木翔 @count11
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