委員会6
「―ではこの件はそのように処理いたします」
委員長は、まるで録音でもしてあるような一切変わらない口調で議事を進行していた。
いつまでも続くように思われる会議を中断したのは、会議室の隅に設置してあった内専用電話だった。セキュリティの観点から事務所内での無線通信の利用は原則禁止されている。一番近くに座っていた西野事務局長が即座に受話器を取る。
「こちら中央会議室」
「こちら諜報二部です、緊急の連絡です。第一層で異変発生の第一報です。武力衝突の模様ですが、続報が届き次第お伝えします」
受話器から流れる声はかなり緊迫していた。
「わかった」
西野は受話器を置くと委員会の御歴々が座る大机に向き直り。
「第一層で武力衝突が発生した模様です、詳細は不明ですがここにいる方々には現在の会議を中断して緊急事態への対応のために待機していただきたいと考えます、―」
最後の方は机の一番奥に座る老人に向けられていた。
「―よろしいですね、委員長?」
「いいでしょう。ところで警備局長」
委員長と呼び掛けられた禿頭の老人は頷きながら言った。
「はっ」
「警備隊全隊に地下への突入準備を発令して下さい」
会議室がにわかの騒ついた。
「地下への突入でありますか?しかし地下は警備システムの管轄で我々は地下戦闘の訓練もしておりません」
古谷は困惑の中でも平静を取り戻して言った。すると禿頭の老人は笑いながら。
「トンネル内戦闘と言って地下鉄内部戦闘の訓練をしていたことは知っておりますよ、バレてないとでも思っていらっしゃいましたか?諜報部から報告があったのに地下鉄システムから何も報告が来ないのは妙ですね、システムに異常が生じたと考えるのが妥当でしょう」
「わかりました、全隊に第一種戦闘態勢を取らせます」
古谷は内線用電話に駆け寄るとき西野にそっと耳打ちした。
(どうやら老人は耄碌していなかったらしい)
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