地下1
地下都市第3層行政地区、第6ステーションホーム
会計検査院があるのは3層行政地区、通称第2霞ヶ関。そこから目的地の地下鉄管理委員会事務所へは地下鉄で行くことになる。
会計検査院は昔は金銭面での調査が主なもので会ったそうだが、その独立性の高さを評価されて昨日や権限が拡大していくうちに「あらゆるものを調査する組織」になっていた。今では「会計検査院」とは呼ばずに「検査院」と呼ぶ方が多い。
第6ステーションには何人か地下鉄の利用者がいた。
『どちらへ行かれますか?』
「委員会事務所だ」
『了解致しました、最適のルートを算出しました、お手元の端末に転送します』
自動応答技術は人々が地下に潜ってから随分と進歩したが、まだ機械らしさを残している。
この待ち時間の15秒の間に、空洞都市間を網の目のように結ぶ鉄道ダイヤから、最適なルートを選ぶ演算を行い場合によっては新しい路線を付け加え車両をホームに滑り込ませるにだから凄いものだ。
今では当たり前の技術となっているが、一昔前は未解決問題とされていた最適化問題と呼ばれるジャンルの数学の定理が使われている。
地下鉄は窓に好きな風景を写すことができるが日向はそのままの風景を眺めるのが好きだった。線路の数が多くなったり少なくなったり、分岐していたり合流していたりとそういうのを見るのがなぜだか好きだった。
「あっ…」
一瞬の出来事だったが日向は見逃さなかった。3両編成の地下鉄増設用作業車だった。
珍しい車両が観れたので今日は幸運に違いない、などといい加減なことを考えているうちに乗り換えの駅に到着した。
4回の乗り換えを経て地下鉄管理委員会事務所入り口駅に到着したのは40分後のことだった。
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