第3話溢れ出る闇
「どうしようどうしようどうしよう!!!!!!!!!」
慌てふためく赤髪の美少女は頭を抱えていた。十分前、人間でありながら特別な力を宿している【選ばれし者】——だと思っていた人間を殺してしまったからだ。
「このままではまずいすっごくまずいのです。どうしたらこの事をなかった事に...」
赤髪の美少女が殺した事実をなんとか無かった事にしようと試行錯誤していると追い打ちをかけるように唐突にドアをノックされた。急なことに思考が回らなかったのかカズキ、赤髪の美少女にとってはカズキシという少年を置いて自分だけボロアパートのぼろっぼろの押入れに身を隠した。
「カズキさんいるんでしょ?」
「わざわざ借金の取り立てに来たんですよ。出てきてくださいよ、あっ忠告しときますけど逃げても無駄ですよ」
父である魔王から譲り受けた魔法道具の一つである千里眼橋を使い外を見た。すると柄の悪い借金取り達がそこにいた。中年男中心のメンバーだろうか皆、額にシワを寄せている。その中でも悪魔である赤髪の美少女ですら一瞬怯んでしまう程の強面のグラサンをかけた男がリーダーだろう。見た目で決め付ける癖がついているため
「えっ、あれは何!?」
押入れの中で動揺を隠せない赤髪の美少女。それも当然のことである。関係ない人間を殺してしまい、そのうえ前触れもなく激しくドアを叩く音が鳴り響いたからだ。魔法を駆使すればこの場をなんとか出来るのだが無意味に使うと後々面倒なことが起こるので震える右手を抑えた。
「出てこないのならしょうがないですね」
ため息交じりに言う借金取りのリーダーはドアを破壊するよう命じた。瞬時に粘土のようなものをドアに貼り付け、ヤクザ達は10m離れた所にある岩に見を隠した。
「何よ、あれ?」
千里眼橋で外の様子を観察していた赤髪の美少女はいきなり粘土遊びかしら、いや、かくれんぼでも始めましたの?と思い強面なのにそんなこともするのねと微笑ましくなり、笑みを浮かべていた。
「では、そろそろいきます」
ヤクザの男の一人が裾のポケットから赤いボタンだけが取り付けられたシンプルなリモコン状の機械を取り出した。
「かくれんぼが始まりますのね、ちょっと観察してもいいかもしれませんわね」
「では参る」
男が赤いボタンをポチッと押した1秒後、赤髪の美少女の脈拍は一気に速くなった。
「な、な、な何ですのよーー!!!!」
今にも泣きだしそうな声色で叫んだ。
「成功しました」
双眼鏡越しにドアが破壊されたのを確認した後、隣で一緒に隠れているグラサンをかけた男に報告した。
「では、突入だ!!」
グラサンをかけた男は野太い声で辺りの岩に隠れている者達に聞こえるように命令を下した。
ボロアパートのドアは跡形もなくデジャブを見ているような木端微塵になっていた。さらに大きな音が鳴り響いたため赤髪の美少女は涙目になっていた。ブルブル震えていると借金取りの一人が悲鳴をあげ、それに便乗するかのように二人、三人、四人と部屋に入る人数分に比例するように悲鳴をあげていた。リーダーがどうしたと言わんばかりに部屋に入っていくと強面で冷静なリーダーでもさえが悲鳴をあげた。
「これ俺らがやったのか?」
ドアの下敷きになっている人間を指しながら皆に尋ねるが皆青ざめた様子でだんまりしていた。しばらくの沈黙の後ヤクザ達は人を殺してしまったという恐怖から取り乱し、一同一斉外へ逃げていった。
「次は何なのよぉぉ」
怯えた様子で悪魔とは思えない程ビビり、縮こまっていた。急に音が鳴り止み赤髪の美少女は押入れの隙間から目を覗かせ部屋中を見渡した。誰もいないようなので押入れから出ると自分が勘違いで殺してしまった少年カズキがドアの下敷きになっていた。
「この人間カズキというのね、カズキシだと勘違いして魔法を撃ってしまったわ...」
赤髪の美少女はやっと自分が誰に向かって魔法を撃ったのかハッキリし、これからどうしたものか腕を組み考え込んだ。
「それにしてもさっきの連中何故悲鳴をあげていたのかしら?」
しばらく考え込んでいると答えが見つかったのか不敵な笑みを浮かべ。
「...あっそういうことね」
——ドアを破壊した連中、その下敷きにされているカズキという少年なるほどなと呟き、翼から漏れでる黒いモヤが全体を包み込んだ。暫く経ち、黒いモヤが消え背中に生えている漆黒の翼を伸び伸びと広げた。
「んんっ…ふぅー」
気持ちが良かったのか甘い吐息が漏れ出た。
「では、行こうか」
その声音は何処か重々しく、先程の甘ったるい声とは裏腹に覇気のある声であり、荒々しくもあった。
「下級魔法ダークボール!!」
天井へと大胆に穴を開け、崩れ落ちる藻屑の破片をかわしつつ空へと羽ばたいていったのだ。
——ドアがピクリと動いたことに気づかずに...
continue...
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