第2話想いの力

俺の名前はカズキ貧乏少年である。まだ16歳なのだが親もおらず、兄弟もいない。

 親は母親一人で買い物に行ってくると言ったきり帰ってこない。  

 まぁ俺を捨てたのだろう、でも別に母を恨んではいない。

 恨んでもしょうがないからな。


 ドンドンドン



 色々と昔の事を思い出していると激しくドアをノックする音が聞こえた。



 「おいおいおい、いるんでしょカズキさん」



 いつもの借金取りがカズキの家に来たのだ。おそらく母が残していった借金だろう。



 「ほんっと迷惑な母だな~」



 ドアを激しくノックする音は鳴り響いていたがカズキはビビる様子もなく、淡々と述べた。



 「よし!そろそろ逃げるか、捕まったら何されるかわかんねぇしな」



 カズキはバックに所持金2000円と昔母に貰ったブローチをバックに入れ窓から飛び降りて逃げた



 「あんなはげ猿に捕まるかよ、ずっとノックでも叩いてろ」



 馬鹿にした様子で町の方へと歩いて行った。  



 「どこ行くんだい?はげ猿をおいてさ!」



 待ち伏せをしていたのか、ヤクザの一味がカズキの行く手を阻んだ。



 「なんでいるんでしょうか....はげ猿...いや紳士な猿はドアの前にいたはずなのに」



 「お前がいつも逃げるとき窓からだって事はわかってんだよ。1週間も逃げられりゃな、あとはげ猿と紳士な猿何が変わってんだよ!!!!」



 今にも人を殺しそうな様子でカズキの元へ近づいてきた。



 「いや..さ...あの...紳士な猿はお利口さんな猿ではげ猿は言葉の意味ハゲてる猿ってことかな」



 「どっちにしろ猿じゃねぇか!!」



 今にも沸騰しそうな勢いでグラサンのおっさんがカズキに襲い掛かってきた。



 カズキは己の身体能力でかわした。

 相手はたったの3人、カズキは軽々とかわし相手に一発蹴りをいれた。



 ボキッ



 普通なら相手に蹴りをいれたならば相手にダメージがいくはず、しかしカズキの場合そうはならなかったのだ。



 「いっっってぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」



 「折れたって絶対折れた救急車誰か救急車ぁぁぁぁぁ!!」



 えっ....



何が起こったの



 ヤクザの一味は唖然としていた



 そして一瞬のうちに辺りは笑いの渦に包まれた



 「ハハハハハハハハハハハ....」



「見たかよ今の蹴った方がボキッってよ、笑いが止まんねぇよ、ハハハハハ....」



グラサンのおっさんが嘲笑いながら言う



 追い打ちをかけるようにグラサンのおっさん達ヤクザの一味はカズキに蹴りや殴りをいれるといった暴行行為に及んだ。



 「おいどうしたんだ?さっきのように逃げてみせろよ!」



 ボキッ グギッ ボグッ



 すでに骨が何本も折れているがヤクザの一味は攻撃を避けられた腹いせか、攻撃を止めなかった。



 「グホッ、ゲホッ、ゴホッ、ゴァッ、ガッ、アガッ、グァ、グァァァァ、.....ッ!」 




 「なにしてるの?」



 青髪の10歳ぐらいの女の子が先生に質問するかのように軽く問いかけた。



 唐突に発せられた少女の声に皆一同驚き攻撃を止めた。



 「お嬢ちゃん何してるんだい、ここは危険だよあっちに行ってな」



 グラサンのおっさんはさっきとはうって変わって優しい口調で話しかけた。



 「危険なのはおっさんの方だよ!」



 ごもっともな意見を述べた少女はカズキの元へ駆け寄った。



 「大丈夫?」



 「ああ、こんなもん唾つけとけば何とかなる」



 「何言ってるの、唾で治るわけないじゃん」



 かっこつけたかっただけだったのだがバカにされ肉体的なダメージがあるのに、精神的なダメージもおった。



 「勝手なことされたら困るなぁ、お嬢ちゃんそこどいてくれないかな」



 さっきとは異なり眉間にしわをよせながら言った。



 「どかないよ、だってこの人傷ついてるもん」



 なんて正義感の強い女の子なんだ、でもここは危険だ。

 これ以上ヤクザを怒らせたら少女に危害が...



「お嬢ちゃんあんま調子乗るなよ、こっちは商売でやってんだ!!」



 頭に血が上って手を上げようとしたが



 その手が止まった



 グラサンを掛けたおっさんは唖然として、自分の手を止めた方に目をやった



 「何故動ける!?」



 「さぁーな、俺にもさっぱりだ。でもな女に手を上げようとしてる奴を見逃せる訳ないだろ!」



 カズキは相手の腕を掴んでいたのだ。



 「最初は借金返済のために出向いたが、お前は年上に向かって常識がなってねぇーお灸をすえてやるよ」



 カズキは少女を庇うように戦闘態勢をとった。



 「君は俺の後ろにいてね、こいつらは俺が何とかするからさ」



 「蹴っただけで骨が折れる身体じゃ無理だよ」



 「さらりと痛い所突いてくるな、ってその時みてたのか!?」



 「うん、見てたよ。だから来たの!!」



 少女はどや顔で言ってきた。


 

 この子は本当に正義感強いな、でもその正義感は危ない。現にトラブルに巻き込まれているからな、こいつらを倒したらそこんとこ注意しないとな。

 カズキはちょうど地面に置いてある鉄の棒を片手に持ち、反撃を開始した。



 「なめんじゃねぇーぞ、クソガキ!!」



 相手も片手に棒状のようなものを持って襲ってきたが

 優雅に相手の攻撃を避け、カウンターをいれた。

 カズキの部屋にいた残りのヤクザの一味もあっさりと倒した。

 カズキは生まれ持った身体能力フル使って倒したのだ。



 最後にグラサンのおっさんだけが残っており、顔を強張らせながら



 「お前こんな事してただで済むと思うなよ、借金は倍にしてやる!」



 そう捨て台詞を吐き、カズキに敗れ倒れているヤクザらを置いて逃げて行った。



 「あ~あ~仲間おいて逃げるとか最低だな..なぁ」



 後ろにいる少女に問いかけたが返事がない



 もしやケガをしたのかと思い後ろを振り返ると



 「やはり、あなたは危険ね...」



 先程の少女とは思えない冷たい声で囁いた。



「なっ!!」



 急に顔を近づけられカズキは本能的に離れようとしたが



 おそかった..



 グサッ



 腹に何かが刺さり地面に倒れた



 「..っぐ...なぁ..ぁぜぇ...っ..ぇ...」



力を振り絞って問うたが答えは返ってこず

 その代わり 



 「ご..めん..ね..」



 涙声で謝る少女の声が聞こえたような気がした。

何故謝ったのかは分からなかったがカズキは少女に対して勘違いをしていたのだ。



■■■■



 「......ッハッハァハァハァ...何だ夢か、そうだよなあれがリアルな訳ないよな」


 激しい息遣いの後、夢と思い安堵したカズキは布団から出ようとしたが、何故か身体に力は入らず布団から出れなかった。

 助けを呼ぼうにもこんなボロアパートにはカズキ一人しか住んでいないのだ。カズキはある事件が起こるまで数日間水も食料もないボロアパートで一人何とか生きながらえていたのだった。そうあの日までは....


                   

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る