第1話勘違いの始まり

普通の住宅街、その中にひと際目立つボロアパートがある。そのアパートには住人があまり住んでおらずド貧乏少年カズキたった一人が住んでいる。



 今にも死にそうな少年は空腹で餓死しそうな状態であり、横たわっている。



 ピンポーン



 チャイムの音が鳴るがカズキは餓死寸前で体が思うように動けず、出ようにも出れない状態である。

 チャイムの音は何十回も鳴り響いていたが、急に鳴り止んだ。



 ドォォォォォン



 バズーカのような音が鳴り響いた。

 どうやら誰かに扉を破壊されたようだ

 カズキは餓死しそうであったが、命の危険を感じたからか身体が少し動いたそして...こけた

 カズキは再び立とうとしたが、一ミリも動かずただただ謎の襲撃者を待つ事しか出来なかった

 


 「いるじゃないですか、何故出なかったんですか?」



 カズキは突然現れた見覚えのない赤髪の美少女をただ見ることしか出来なかった。



 「もしも~し聞いていますか、返事してくださいよ~」



 カズキは返事をしたかったが数日間水を飲んでいなかったせいか思うように声が出なかった。

 


 「あぁそういうことですね、分かりましたわ」



 赤髪の美少女は急に何かに納得した様子で外に出でいった。

 帰ったのかなと思っていたが急に閃光が発せられた。

 カズキは何が起こったのか訳も分からずただ呆然としていが、すぐに気を取り戻し何かに気づいた。

 木端微塵だったはずの扉が新品同様に直っていたのだ。


 「これでいいですわね」


 赤髪の美少女は満面の笑みを浮かべながらカズキに問うた。

 しかし、カズキの頭の中では赤髪の美少女は一体何をして木端微塵の扉を直したのか疑問だった。



身体が小さい女の子が重い扉一人で運べるわけないし、誰かに手伝ってもらったわけでもない...一体何をしたんだ。疑問に思っていると赤髪の美少女が唐突に叫んだ。


 

「もういいです!勝手に話を進めます!!」


何切れてんだ!?


「あなたは【選ばれし者】!!!」


こいつは何を言ってるんだ?


 「おっと、信じていないようですわね。ではこれを見てください」


赤髪の美少女は1冊のノートをカズキの前へと差し出した。そこには妙な図が書かれており、暗号のようなものも記されていた。


ただの子供の落書きか


「まぁ、見ても分かるはずもありませんわ。何故なら魔界語なのですから」


意気揚々とした態度でカズキの目の前で仁王立ちしてみせる赤髪の美少女。その姿にどうリアクションすればいい…という戸惑いよりも、お腹が空いて仕方がなかった。


何か変な奴が入ってきたが、これはチャンスかもしれない、あいつから金をむしり取れば、食料が買える。そしたら、こんな空腹ともおさらばだ


生きるために犯罪同様のことを犯そうとしているカズキの脳内は金と食料で占めている状態でそれ以上考える余裕は無かった。


よし、立つぞーぉぉぉ


必死に足に力をいれるが麻痺している感覚があり、びくりともしない。それでも力を入れることを止めずカスッカスの声で思いっきり叫ぶと不思議と力が漲り、立つことに成功した。

フラフラな姿ではあるが目は獣そのもので獲物を捉えるため一歩一歩と重い足を引きずるように歩いた。


「おっと、武力行使ですか。流石【選ばれし者】簡単には協力してくれませんわよね」


それにしても凄い殺気。これはちょっと本気出しませんと


「先手必勝、下級魔法ダークボール!!」


最初は目くらまし程度の初級魔法で様子見ですわ


魔法が着弾し、ボロアパートの窓が全壊した。初級魔法といっても手榴弾程度の威力はあり、魔力を持たない者に当たると目も当てられない姿になり、あと型もなくなるのだ。それにどう対応してくるか赤髪の美少女は様子見をしていたが、中々動く姿を見せないので不審に思い恐る恐る魔法の放った方向へと近づいた。


「何処にもいない…流石【選ばれし者】悠々とかわした訳ですわね…っ、ということは、私の後ろにいる可能性が」


瞬時に後ろを振り向き回し蹴りをするが、そこには誰も居らず空振りするだけだった。


「あれ、何処に行ったのかしら」


攻撃を仕掛けた所を探しても見つからず困っていると出口の方から音がした。


「あ、やっと見つけたわ、って怪我してるじゃない」


爆風で出口付近まで飛ばされたカズキは危険を察知し、体力が限界であるも這いずりながら部屋を脱出しようと試みたがドアノブを回す音で気づかれてしまったのだ。


この怪我はお前のせいだろと言いたかったがカスッカスの声では相手に伝わらず、声すら届かなかった。


「んーおかしいですわね。このノートには【選ばれし者】なる人間、異能であらゆる攻撃防ぐべしって書かれてますのに」


指を唇に当て考え込んでると何かを思いついたのか、うつ伏せに倒れているカズキに目をやりニコッと笑みを浮かべると少し離れた所から魔法の詠唱を唱え始めた。


「私分かりましたわ。恐らく先程の魔法は当たっていなく、瓦礫の破片で怪我をしたんですわね。では、再び実戦であなたが【選ばれし者】であることを証明させてあげますわ」


(はっ…こいつ何言ってんだ。この傷はお前の攻撃モロにくらってなってるんだよ。しかも、よく分からないがその【選ばれし者】じゃないって)


カスッカスの声でそう言うが相手にはやはり伝わらず、次々と話が展開していく。


「では、先程の魔法をもう一度放ちますわよ」


(ちょ、待て待てさっきは運よく当たっても死ななかったが、次当たったらほんと死ぬって!!!!)



「そんな心配そうな顔をしなくても【選ばれし者】なら異能で防いでくれたらいいんですから使ってくれて構いませんわよ。ではカズキシさんいきますわ。初級魔法ダークボール!!」


(そうかー、異能使ったらいいんだな。うぉぉーって…出るかー!!ってか今カズキシって言ったよね…ちょ待て待て待てそんな初歩的な勘違いで俺は殺されるのか。ストッープストッープ!!聞こえないのか、あ!…そういえば今俺声でなかったんだった…)


 そう叫んだ瞬間何もない空間から邪悪な闇が現れそれが俺を殺したのだ...



「ふぅーいい仕事をしましたわ」



 赤髪の美少女はやりきった表情を浮かべながら汗を拭うような仕草をした。



 「お~い、カズキシさん生きてますかーって生きてるに決まってんじゃん」 



 一人でノリ突っ込みを入れる程機嫌がよくなっている。

 なぜかは不明だが人に魔法を放っておいて機嫌がよくなるのは異常であるという事は確かである。


爆風により塵が舞いカズキの姿は一時的見えなかったが、数分経つと塵が晴れハッキリと姿が見えるようになった。


 「次は死んだ振りですか、【選ばれし者】は簡単に死なないということは知ってますから無駄ですわよ」


 そう放置する事約十分、赤髪の美少女はようやく異常である事が分かったのか、カズキの元へと駆け寄り意識、呼吸、脈、体温などを調べ生きているか確認をした。

 そこでやっと赤髪の美少女はカズキいや赤髪の美少女にとってはカズキシが死んでいる事が判明したのだ。



 「え!!何で死んでるのよ、私が放った魔法は下級魔法、普通の人間ならともかく【選ばれし者】が死ぬはずがない.......ハッ!」


 赤髪の美少女は気づいた、この少年は選ばれし者ではなく普通の人間であるということを...


しかし、一つ疑問が残る何故彼は体の原型が留まっているのか。ただそれが疑問でならなかった。

continue...

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