第6話 初恋×初恋

ベンチに腰を掛けて、2人で座ってみるとなかなか話題が思いつかない。

こういうときは映画館に行くべきだったか。


「そうだ。次に会うときは映画館で映画を見ないかい?」


「・・・面白い映画があるんですか?」


「あるのかな。・・・いやいや、君が見たい映画があれば、それにするよ。」


「そうですね。でも映画には疎いです、私。」


「じゃあ、調べておくよ。好きなジャンルは?」


「ふふっ。」


「どうしたんだい?」


「この会話、どこか映画のワンシーンです。」


「・・・ほう。」


「でも、デートの早い段階で突然指輪をプレゼントして、デートの途中でもう次に会う話。」


「ああ。」


「雪だるま君の恋愛経験が知りたいな。」


「そうだな。僕には・・・今までにない感情が芽生えてて。そしてこの感情は初体験だ。」


「もしかして、今までに恋をしていないという意味ではないよね?」


僕は、夜空を見上げる。学校時代に、何名か異性という意味で憧れを感じた子は居る。


「僕は、そういう意味では・・・」


「面白い映画が見たいんじゃなくて、私と映画が見たい。そうなのね?」


「・・・そういう意味だ。」


「正直に言うよ。私もです。」


「一緒だな。」


「一緒ですね。」


「よし、一緒に映画が見たいんだな?」


「それにもまして、一緒に初恋なんですよね。」


「換言すれば、僕たちにもはや映画館は必要ないな。」


「ラディカルですね。そう、このベンチで映画です。」


(つづく)

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