彼の戦う理由
直撃したのだろう。
ムカデの装甲でも防ぎ切れなかったらしい。その結果として足が無くなった。痛みに叫びそうになるが、叫べば位置がばれてしまう。だから耐えた。それでも、思う。
拙いな。
そう思う。血が止まらない。
「子号、建材で固めてくれ」
――ピッッ!
警告!:撤退を優先するべきである件
「却下だ。撤退の必要性が見つからない」
――ピピッ!
警告!:左脚喪失は十分な撤退理由である。
「それでもだよ、子号。僕等には金が要る。金の為に指揮官の首が居る。これだけ派手にやったんだ。緊急事態の動線が漸く読める。指揮官まで皆様にご案内願おうじゃないか」
情報が集まるのは中心だ。中心にいるのは指揮官だ。
それを殺す。
それだけだ。
――ビッ?
端末が震え、僕のモノズ達からの言葉が躍る。
問い:何故、友はそこまでして戦う?
「頼られたからだ。助けてくれと言われたからだ」
問い:何故、友がそれをしなければいけない?
「仕方が無い。子供達は僕に向かって言ったんだ」
問い:その為に……その為に、命を懸けるのか?
「その程度で勝てるのなら安い」
警告:この世界は残酷である
追従:然り。この世界は友を裏切っている
追従:然り。子供達もただ、ただ、友に寄生しているだけである
「知っているよ」
世界は残酷だ。
記憶と共に家族も失った。大切な思い出とやらに縋ることも許されず、逆らえば殺されると言う『教育資料』を見せられた。問答無用で僕は戦うしかなくなった。
世界は裏切っている。
それも知っている。この世界は僕等スリーパーの味方ではない。今の時代の人の為だけに存在していて、僕等はソレを動かす為に生きている。
子供達が僕を頼ると言うのも、言い換えれば寄生だ。
自分より強くて、この世界では甘い奴がいたから、その保護下に入った。
そんなことは知っている。
そして、それを見捨ててはいけないことも、僕は知っている。
だって――
「仕方が無いだろ? 僕は彼らよりも年上なんだ」
「僕も昔は子供だった。僕を育てたのは僕よりも年上の誰かだ」
「だったら僕も“そう”しなければ駄目じゃないか」
「それに、悲しいじゃないか」
「子供達が眠っていたのは、誰かが生きて欲しいと思ったからだろう?」
「幸せに生きて欲しいと願ったからコールドスリープされていたんだろう?」
「だったら、それが叶わないのは、少し、悲しいじゃないか」
矛盾指摘:それは友も同じである
追従:然り。友も幸せを願われて眠りについたはずである
追従:然り。成らば友の死も“かなしい”ことである
追従:然り。我らにとって友の死はとても“かなしい”ことである
確認:我らが友よ。それでも君は――戦うのか?
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