十二話 割と日常的になってしまっている
朝からため息……は出ない。
世界は今日も世界だ。そのまま。
だからもう開幕ダッシュについては慣れてしまった。悲しいことにね。それに、実束が私を見つけるスピードも随分と早くなった。何かコツを掴んだらしいけど、それって多分私と似たような気配がわかるようになったんじゃないかと思ってる。
……二週間、14回。それを経ても、あれからわかったことは多くない。
実房さんが不明晰夢に来ない事が結構あった。念のため記録しておいたところ、14回のうち7回。ちょうど半分だ。
眠り方についても特におかしな事はなかったらしいので、これは個人差ってやつなんだと思う。実束も私と会う前は毎日じゃなかったって言ってたし。
実房さんから感じる気配……違和感が実束より小さいのも少し気になる。不明晰夢に来る頻度となにか関係しているのだろうか。
不明晰夢について。
詳細についてはやっぱり一切わからない。
変化があったとすれば、最近化け物の数が増えなくなった、ということ。
本当にそのくらいだ。ありがたいけど、理由がわからないと少し気持ち悪い。
あとは化け物たちが明らかに作戦を立てて襲ってきてるってことぐらいか。もし、私が化け物の位置を感じ取れなかったら危なかった場面が何度もあった。
それと、実束によれば前は他にも迷い込む人がいたはずだけど、私が来てからはすっかり居なくなってるとのこと。
そのおかげか、眠り病の件数が急に減っているという話をよく見るようになった。
私たちのおかげなんだろうか?
それなら、まぁ……悪い気はしないよ、そりゃ。
ヒーローみたいなことをしたいとは思わないけど、死ぬ人が減ったのならそれは純粋に嬉しい。
ええ、死ぬ死なないなら死なない方が良いに決まってるもの。
そんなこんなで、私の精神状態は割と良い方ではある。夢は見れないけれど。
不明晰夢も日常に含まれてしまっている以上、平和と言えば平和。特に大きな悩みもない。
いいことです。
平和なのでいつも通り窓際の自席で外を眺める。
やっぱりなにがあるわけでもない。視界の置き場がないから適当に外に向けているだけだ。外の風景に興味はない。
そうすれば意識は自ずと興味があるもの……自分の内側に向く。
今日の議題はどうしよう。今日も今日とて何も考えていない。
不明晰夢について考えようったって今の材料じゃとっかかりが無さすぎる。元々この脳内会議が有益なものを生み出した試しがないけど。
所詮は暇つぶし。時間稼ぎ。基本楽しい以外に得るものは無い。
「……」
……今日はノリが悪いみたい。何の議題も浮かばない。
寝る選択肢も存在はするけど、寝たら不明晰夢を見ちゃうかもしれないし。寝ないのに伏せるとか虚しすぎる。
そして運良く夢を見れたとしてもできて数十分。
悲しい。そんなの受け取ったら本格的に夢を見たくなってしまう。
我慢できずに思いっきり寝て不明晰夢でひとりぼっちとか……あり得そうで怖い。
そんなわけで寝る選択肢は存在だけはする即死地雷である。無いと思った方がいい。
なので……どうしよう。
教室の雑音にでも耳を傾けてみる?
教室には人間が数十人。あと実束。朝から何人かのグループを複数作って何かしらを喋っている。
騒がしいったらありゃしない。それが普通だから仕方ない。
……では多少は耳を傾けてみよう。好奇心が働くなにかがあればいいけど。
昨日の番組?あぁ、やかましいやつかな。興味なし。そも見てない。
アイドル的なやつ。あー、駄目。気力がどんどん削がれる。主にファンの影響であんまり良い印象持ってないの。男女どっちのアイドルもね。
勉強の話かなこれ。それもどうでもいい。
幽霊の噂。現実的な話をしなさい。
先生のセクハラ?欲望に忠実なんだね。こっち寄るな。
ソシャゲの話。話し方がキッズだから認識しないようにしよう。毒だ。
…………駄目だこりゃ。
だろうとは思ってたけど全然興味が惹かれる話題がない。そんなもんだよね……はぁ。
暇だ。教室に誰もいなかったら実束と話すのに。全く邪魔くさい。ええと、次は空き教室の話?誰も使ってない教室でしょ。私には関係
あるわ。
もしかしなくてもそこ実束と話すときに使ってる教室じゃないか。
なに?誰か入り浸ってるの?
だとしたら話し場所を変えなきゃならなくなる。
意識を向ける。
…………。
聞こえてくる声を聞いた所、空き教室の話はさっきの幽霊の話の続きであることがわかった。
要は、あの空き教室に幽霊が出ると。
目撃情報が元の噂で、出どころは最早不明だけど一人の人影が空き教室に居た、とのこと。
時間帯は夜……か昼かよくわからないらしい。夜に学校にいる理由がわからないし多分昼だろう。
「…………はぁ」
朝からため息が出た。
真実であれ嘘であれ、噂が広まっている以上あの教室の知名度は上がる。
それは誰かが来る可能性があると言う意味である。
とりあえず、知っているかもだけど実束には連絡しておこう。あそこは使えない。
メールで連絡……と思ったら実束からメールが来ていた。
“空き教室の噂知ってる?”
既に知ってたみたい。なら話が早い。
“今知った。次から話す場所変えた方がいい”、と。
メールでの会話もすっかり慣れたもの。
対個人の会話用のアプリとかあるはずだけど、実束はメールを使う。アプリを入れていないわけではないっぽいし、何故だろう。大した問題ではないけど。
返事きた。
“放課後らへんで行ってみようよ!噂の教室!”
ヘイ実束、会話って知ってる?
………………………………。
放課後。
授業の終わりから少し経った部活時間。
誰もいない事を祈りつつ、あと誰もいないか確認しつつ、慎重に空き教室へ向かう。実束にはそれぞれ別ルートで行く事を提案した。
そもそも行く必要性があまり湧かないのだけど。
じゃあ何故私は教室に向かっているのか……とか、その辺りは気にしないことにした。だから最早考える意味が無い。自己が無いという訳じゃない。色んな要素を並べた上の結果だ。行く行かないで私にどんな損得が生じるかの問題。空き教室に行くこと自体は損だけど行かないって言った時の実束の反応を考えるとこっちの方がね。
だから考える意味が無いんだってば私。考えるな。
……そんなこんなで、到着。
最初、私が初めて不明晰夢に行ってから帰ってきて、話し合いの場として使ってからちょくちょく実束と学校で会議するときに使っている空き教室。
長い。要は無断使用の二人の会議室だ。
誰もいない。授業終わり直後にしなかったのは正解だったか、そもそも誰も来ていないか。とりあえず今はいないのでよろしい。
足音に注意しながら待機。
誰か連れてくるとかそういうことはしないだろうけど、実束のステルス技術が心配。私よりも明らかに存在感はあるだろうし……
足音はまだしない。実束の気配も無し。
早い事用を済ませて帰宅したい。どこかの部活がここを通り過ぎないとも限らないし。
「
足音はまだしない。実束の気配も……いや待て、もじゃない。
実束の声。そして気配。何故。足音だけが何も……
「…………」
声のした方を向いた私だけど、とりあえず硬直することになった。
実束がスライド移動で角を曲がって現れた。
スライド移動。文字通りスライド移動だ。
直立の状態のまま、実束は地面を滑るように移動していた。なるほどそれなら足音は無い。
うん。
待とうかあなた。
「……なんぞそれ」
「ちょっと思いついたんだ。ほら、足元よく見て」
と言われたので見てみると……僅かに液状の鉄が見えた。
なるほど、本当に滑ってるんだね。もはやどうやってるんだかわからないけど、液状の鉄を上手いこと操作して滑っているみたいだ。キャタピラみたいな仕組みでも使ってるんだろうか?
薄々思っていたけれども、利便性が高すぎて鉄である必要が無くなってきているような気がする……足裏に出している以上、潰れない程度の弾力性的なのは備わってるだろうし。
そのくらい柔らかくできているのなら、反対に硬くもできる。それなら水でもいい。
耐久力の問題だって、この様子だとおそらく鉄の範疇に囚われない。ダイアモンド並みに硬くすることだってやろうと思えばきっと……
……あぁ、そうだ。そもそも
その辺り分かってるんだろうか、この自信作の泥団子自慢する幼稚園生みたいな顔してる高校生は。
又は獲物取ってきて飼い主に見せる猫みたいな。
「すごいでしょー。これなら無音で移動が可能……夢のステルス移動だよ汐里!」
押してみた。
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
実束は直立したまま滑っていった。自分がステルスしなくてどうする。
そして足音もなくスライドで戻ってきた。
「なんてひどいことをするのです」
「…………」
もはや言うべきことは無い。
イベント中でもあるまいし、こうしている間にも時間は勝手に動いている。
事を先に進めよう。
「……見るんじゃないの?教室」
「そうでしたそうでした」
えらく気に入ったのか、スライド移動のままドアの前に滑っていき、いつものように鍵穴に指を押し当て鍵を開ける。
不法侵入。誰も見てなければ問題ない。誰にも気がつかれなければ問題ない。
……しかし、一応いつも見られないようには気を使っていたんだけどな。
火のないところに煙は立たぬって言うけど……あ、その場合明らかに火に該当するのは私たちだ。
私たち以外の誰かがこの教室に入る意味も無ければ、方法も無いもの。
ここは常に鍵がかかっていて、まぁ多分鍵は職員室。
そりゃ職員室から鍵を盗んでってすれば侵入は可能だけど、そこまでする理由がさっぱりわからない。現実的じゃない、って話だ。
となると現実的なのは?
私たち。
来るまでもなく確かめるまでもなく、ヘマをしたのは私。実束がそういうのを気にしないってわかってるなら実束の分まで警戒すべきだったんだ。
思い返せばそこまでの意識はしてなかった。失敗。
……と、反省をしていたところ、ドアが音を立ててスライド。
「はいどーぞ、ごあんなーい」
「…………」
突っ込まない。
突っ込むべきは他のこと。
すっかり慣れた空間の空き教室の中へ入る。実束はいつものようにドアに鍵をする。
歩いて、定位置の席に座って、突っ込むべきことを突っ込む。
「…………それで、実束」
「はいな」
実束は定位置その二、正面の席に。
さも当然のように私の目の前にいるし、実際いつも通りの当然だ。
「一体ここに何をしにきたの?」
「それは、もちろん噂を確かめに」
「幽霊の?」
「そうそうその噂」
「どうやって」
「もちろん汐里が感じ取るんだよ?」
「はい?」
人に勝手に霊感属性を付与しないでください。
…………と、一瞬思ったが私の場合は悲しいことにそうじゃない。違う、考え直す。
「……いや、待って。わかった。そういう話ね」
「そうそう、そういうこと。ね?」
「ね、って……まぁ、わかった。探ってみる」
そう伝えつつ、私は机に伏せる。目を閉じて、少しだけ意識を外に向ける。
目の前に実束を強く感じる、実束の気配はよく知ってるし目の前にいるしまぁ当然ながら。
それは置いといて、本題の方が居ないか周囲を探る。
おさらい。
何故だかはわからないけど、私は現実的じゃないもの……現実にそぐわないものを違和感として感じ取れる。違和感なので気持ち悪さを付随して。
実束の能力も同じく違和感として感知しているけど、こっちは受け入れたから平気……と、それは今関係なし。
私が探しているのは他の違和感。
幽霊なんて現実にそぐわない要素そのものみたいな存在が居るなら、私はそれを感じ取れる……実束はそう思ったんだろう。
でも結果的に言うと、何にも居ない。実束しかいない。スカってやつだ。
むしろ、違和感どころかひたすら落ち着くくらい。なんだかここに住んでもいいくらい。
「…………………」
「………どう?」
やっぱり教室にも愛着は湧くのだろうか。
考えてみれば、自分の教室と違ってこの場所を嫌いになる要素は無い。良いことしか起きていないもの。
私にとっては特別な部屋だ。私と実束がここに来ることで、隔離された一つの空間ができる…そんな感覚さえある。
もちろん錯覚だ。だけど、それは中々悪くない。
「…………………」
「汐里ー?」
ああ、ちょっと待ってね大丈夫聞こえてる。今はそれよりもここについて考えを深めたい。記憶と経験の反芻だ。
反芻って言ってもいつも繰り返してるようなもの。ここに来て、なんか話して、時間が来たら出て行く。会話の内容は不明晰夢についてのことが殆どだけどそれ以外もたまに。
学校の中では唯一心が落ち着ける時間、そして場所だ。気を緩めすぎると誰か来た時に気づけないから危ない……でも、思い返せば結構夢中で会話してたかもしれない。
……わかりきってたけど噂の出所は私たちだ。
せっかく居心地よくなったのに、この空間を邪魔しにくるとか空気が全く読めないし無粋過ぎる。
「…………………」
「おーい?」
これからここでおちおちゆったりもできなくなるのか…そう思うととても口惜しい。
この安心感はもうこれからそうそうあるもんじゃない、なんならお昼寝さえできそうなほどの精神的暖かさがある。
お昼寝。ずっとしていない。
起きた時夜だと少し虚無を感じるけどあれはいいものだ。自由って感じ。
そこに禁忌は存在しないって感覚。不安になる必要はない、誰も怒らない。私は眠っていていい。その実感。
意識がふわりと浮かんで、時間の概念がどうでもよくなって、ふわふわとゆらゆらと落ちていく。身体の感覚を忘れて、自分は溶けて輪郭が曖昧になって、
「そぉい!!」
ごん。
「お゛っ……くぉ…おぉぉぉ……」
「あ……やりすぎた…?だいじょぶ……?」
頭頂部に重い衝撃。そして浸透する鈍い痛み。
結構な硬度のなにかが私の頭部に落とされたとしか思えない。割と勢いよく。
そして状況的にこれはアイアンチョップだ。
さて、続いて大丈夫かとの問いが私に落とされている。
私の反応はこう。
「……いたい……」
「あああごめんなさい…」
「なでて……」
「撫でる…」
実束による応急処置が始まりとりあえず良しとする。
というか助かった。実束の鉄槌(文字通り)が無かったら私は眠っていた。最悪一人で不明晰夢行き。死ぬ。
危ないところだった……それで今の状況ができてるならまぁいいか、とか思ってきてるのは多分よくないやつだ。
実束の手が、私の頭を右に左にゆっくり動く。
頭を通して伝わってくる振動とか感触とか温度とかがとても安心する。
眠らないよ。
ああ、こういう時間もそのうちなくなっていくかもしれないのか。やっぱり現実は大っ嫌いだ。やっぱり学校も嫌いだ。
たまに実束の家遊びに行こうかな……
「……もういい」
「ん」
……二度同じ失敗はしない、という事で眠くなってくる前に起き上がる。
遊びに行くかどうかは後でゆっくり考えよう。一時の感情でどうたらこうたらの可能性も否めないし。
「……しかし、いなかったかー」
「まだいたかどうか言ってないよ」
「え、いたの?」
「いなかった」
「だよねぇ」
当初の目的は空振り。
幽霊なんてものを感じ取れたら私が眠りかけるとかありえない……って事を実束はわかってくれてる。
ほんと、なんでそんなにわかってくれるんだろう。嬉しい、けど不思議なものだ。
私は実束の事をどれくらいわかってるんだろうか。
……考える必要は無いね。私はそういうの考えるの苦手だ。
「……用は済んだ?」
「うん、出よっか」
二人で席から立って教室を出ていく。
変わらず誰もいない。窓の外から微かに小うるさい声が聞こえてくる。
今の時間は完全に部活の時間だ。私には全く縁がなく、また私がこの時間校舎にいる事を誰かに見られたら非常によろしくない。怪しまれる。
そんなわけで私は即刻姿を隠しつつ帰るのが望ましい。
廊下を歩く。目指すは昇降口。
「あー……噂って割と嘘ばっかなのかなぁ」
「嘘ばっかりでしょう。……ねぇ、幽霊がほんとにいたらどうするつもりだったの」
「まずは対話を試みます」
「……はぁ」
「そして敵対するようなら殴ります」
「殴るんだ」
「それでも駄目ならお姉ちゃん呼んで浄化してもらう」
「光だから」
「いえす、光だから。きっとお姉ちゃんならやってくれる」
「……やりそうだね、確かに」
あの人なら割とやりかねない雰囲気がある。
その場合どこからか引っ張ってきた台詞と突発的に考え…てないポーズを取りつつの発光になりそうだけど……あ、想像しただけで駄目だそういうの見てられない。
……そういえば学校で実房さんと話した事ないな……学校でのあの人はどんな人なんだろう。流石にあのテンションのままって訳じゃないだろうし……
今度あの教室に呼んでみようかな……いや、ばか私。
あそこはもう行かない方がいいんだった。
「実束」
「なに?」
「あの教室は、もう使わないようにしよう」
「……ん。わかった」
そう返事した実束の声から、少しだけ寂しさを感じた…ような気がした。
実束はあそこで私と話すのを楽しみにしてくれてたりしたのかな。
誰かに期待はしない。誰かに望みもしない。基本的にそう考えているけど……実束には、少しだけ期待してもいいような……そんな気がする。
妙なものだ。知ってる人なら期待が外れた時のダメージがより大きいのに。
「……他の空き教室、探しとくから」
とか考えてたら、口が勝手に動いてた。
「……ん、任せた!」
そう言って実束は駆け足で先を行く。今度の声は確実にいつもの明るい時の実束だ。
というか走らないでよ。追いつけない。
「それじゃ、部活行ってくるから」
「あ、うん」
なんだ部活か。
なんで部活と?
「いや実束待って実束」
「はいはい?」
止まってくれた。
「あの、今日部活無いんじゃ」
「あるよ?」
「なら何故今ここにいるの」
「汐里と話したかったから?」
「……っ…」
息が詰まる…が、流石に対応する。
「……はい、わかった、もうそれはいい。遅れたことに関してはどう言い訳するの」
「ふっ、そんなもの……突然の腹痛があったと伝えるまで!というわけでばいばい汐里」
実束は走り去っていってしまった。
「……はぁぁ」
息を吐いて、気持ちをリセット、させた気になる。
時折ああいう発言されるけど、やっぱり中々慣れるようにはならない。なんとか反応はできるようにはなってきたけど……
素なのか。意識してるのか。どちらにせよ私は、こう…困る……じゃないけど……言語化しにくい。擬音で表すならぐぉって来るんですよ。悪いものでは多分ないけどさ。
はぁ。
とりあえず、帰ろう。
誰にも会わないように。
………………………………。
「…………」
今日も今日とて、沈黙から私は始まる。
こっちもこっちで慣れちゃいるけど、心地よさはあの空き教室とは雲泥の差……いいや、比べる事すら愚かしい。
憂鬱ポイント+10。デイリーボーナス。廃止しろ。
そんなわけで不明晰夢だ。見える景色はいつもの通学路周辺。
意識的に周囲を感じようとしてまず実束発見。こっちに向かってるね。よし。
次に実房さん……こちらは実束より気配がちっちゃいから探しにくい……いない。今日は謎の休みの日のようだ。いいなぁ。
最後に化け物たちの気配……あー、うじゃうじゃいる。どんな形をしているかまではわからないけど、今日も危なげなく乗り越えたいものだ。
よろしい。
実束と合流するために歩き出す。この位置関係なら化け物に遭遇する前に会えそうだ。
走りは状況を見て適切に。基本的には歩き。
へなちょこ走りでも歩きよりかはマシなんだ。長く走れないし回復は遅いしでいたずらに走るともしもの時に動けない。
「……はぁ」
思わずため息が出る。
「どうしたの?」
「自分の貧弱な運動性能にいつも通り嫌気がさしたの」
「ひんじゃく?うんどうせいのう?」
「あー、別に理解しなく」
「うぉうっ」
「わおっ?」
なんか隣に幼女がいた。
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