三話 今日の下校中の議題はおっぱいになりました
朝からため息が止まらない。
世界は今日も無色で味気なく何もかもが詰まらない。
それが現実。何も起こらない。それでいい。
現実はそうであるべきだ。
そうでなきゃ楽しみが無くなる。楽しみが無くなった。
そう、現実で夢のような事が起こりやがったのだ。
昨日と同じはずの登校。しかし私の足取りはとても重い。
記憶の中で再生される映像。
黒い狼。
黒い熊。
鉄を操るクラスメイト。
純粋な心の持ち主ならわくわくしてくるだろうこれらの要素は、捻くれた私には毒にしかならない。
昨日受け入れる事には受け入れたが、それで気にならないかと言われたらそんなことはない。ずっとこれからも引きずっていくことだろう。
けどまぁ、
………………うん?
待った待った、待てよ私。実束の話を思い出そう。こういう時は箇条書きだ。
・ある日夢を見る代わりにあの世界に行くようになった。
・その世界には怪物が居て、そいつらを倒さないと目覚める事ができない。殺されてしまうと現実でも眠ったまま死んでしまう。
・目覚めると今現在実束以外はあの世界であった事を覚えていない。
ここだ、これだ。
私はあの世界での事をはっきりと覚えている。実束の言う法則から脱している。
……嫌な予感がしてきた。
実束の話にはまだ続きがあったはずだ……
昼休み。
授業なぞどうでもいいと言わんばかりに何も覚えてない。ただただ時間が過ぎるのを待っていた。授業なんか聞いている場合じゃなかった。
立ち上がる。用があるのはもちろん実束だ。
あの世界の事について話す必要がある。あとお礼も言いそびれたし。
……昼休みに、立って、誰かと話しに行く。そんなのいつ振りだろうか。
中々ハードルが高いけれど、私ならきっとできる。大丈夫大丈夫、話しかけるだけ……
「…………!!!」
……なんて、ことだ。
実束が……実束が、他のクラスメイトと話している!
その数は3。厚すぎる壁、越えられない壁だ!
そうだ…今は昼休み。通常の高校生はクラスメイトと雑談をしながらお弁当類を食べる時間帯……っ!
この状況は非常にまずい。私にとって分が悪すぎるってかそもそも人に話しかけるっていつ振りだったっけ!?仮に話しかけるのに10の体力を消費するとすれば壁が3枚で×10の3乗!あの要塞を突破するには10000の体力が必要だ!ちなみに私の体力は最大で5くらいです!
心の中で錯乱し始めた私はその場に立ち尽くすしかなかった。
高すぎる壁に絶望し、足は行き先を無くしてその場で木の棒に変化。目線はどこかへ犬掻きで遊泳開始。
これにて「突然立ち上がって歩き出したと思ったら急停止した謎の無表情な人形」の完成です。いつもみんなスルーありがとう。
どうしてこんなことになってしまったんだろう。私が何か悪いことをしたとでも言うのか。
やはり何もすべきじゃないのか。私はいつも通り一人で端っこで自分の世界に閉じこもって
「……
実束がこちらに気がついたってかこっち来てた!!!
やはり私は間違っていなかったんだ、作戦勝ちだ!これからこのコミュニケーション法を「カカシ・デコイ」とでも名付けよう。
「あ……その、えと……」
よし、後は話すだけ。用件を話すだけ。簡単…
「……えっと、………」
……あっ、なんて切り出そう。何も考えてなかった。
早く用件を話さなければ帰ってしまうかもしれない。しかし目には見えない時間制限が私の思考を驚きの白さに変えていく。
ああ、駄目だこれ。
「……もしかして……覚え、てる?」
「……!」
こっくんこっくん。
またもや作戦勝ちだ!!これからこの会話法を「タリキ・ホンガン」と名付けよう!!
…………そろそろ落ち着こうか、私。
「…………。ちょっと待ってね」
実束はクラスメイトと何かを話して、弁当を片付けてこちらに戻ってきた。
「ここじゃ落ち着いて話せないから、別の場所で」
「…うん」
こうして、私はどうにか実束を連れ出すのに成功したのだった。めっちゃ疲れた。
何もしてないけど。
空き教室。
鍵はどうするんだろうと思ったら、実束が鍵穴へ指を押し当て、少し経つと突如かちゃんと鍵が開いてしまった。
鍵穴から離した指を見てみると、指先から鍵っぽい形をした鉄が生えていた。
「……液状の鉄を噴射して、ある程度出したら固形化、あとは回す?」
「うぇっ!?何でわかるの!?」
「力を知ってればわかるって…」
二人で当然ながら誰もいない教室の中へ入り、一応鍵を閉めておく。
かちゃり。
その音が妙に響いた。
……誰もいない教室に、二人で忍び込んで、鍵を閉める。
なんかで見た事あるシチュエーション。多分これこの後滅茶苦
「それで、ほんとに覚えてるの?」
「……うん。はっきりと」
「そっか……」
うーん、と実束は椅子に座りつつ考え込む。私も隣に座った。
やはり前例が無い様だった……実束自身を除いて。
「……ねぇ汐里」
「やだ」
内容を聞く前に拒否した。
「あ…もうわかる?言いたい事」
「うん」
そりゃね。
「………………………わかった、言います。言いますよ。言いますとも。先に言っておくけど、こんなの私知らなかったんだからね?」
観念する時が来たようだ。
私は熊を潰した時の事を頭に浮かべる。
あんなサイズの物は出せないと言っていた。
熊を刺した時の鉄の量は、明らかに私を守った時より少なかった。
これらの情報と、今まで沢山主にスマホ上で見てきた「お約束」を重ね合わせて、とりあえず作る事ができる仮説。
「何故かは全くわからないけど……私は側にいる人の能力を増幅できるみたい。近ければ近いほどに」
「……やっぱり」
言い換えれば、私は「他人の能力を増幅させる能力」を持っているということだ。
……これで私も、能力を持っているという点なら実束と同じ状態。
だからあの世界の事を覚えていた。そして……
「……はぁぁ。で、私がそんな感じの能力を持っていると仮定して……」
「私みたいに何かの能力を持っていると、あの世界の事を忘れず……」
「……実束と同じように、またあの世界に行く事になるって?」
「もし同じならそうなっちゃうね……」
決定的な一言が発せられた。
まだ仮説だけど、どうせそうなるんだろう。あの世界は現実な癖して非現実的な要素に満ちている……
「……だよね。うん、だろうね、そうでしょうね、そんな気はしてましたあーちくしょー!!!!」
「!?」
……そして私は口調を乱しつつごつんごつんごつんごつんごつんと机に頭を打ちつける。
あの世界に行くって事は、命の危険に晒される上に夢が見れないって事だ。これ以上の不幸は中々ないだろう。
「あーあーあーあーあーあーあー」「その、汐」「黙って」「あっはい!」
何故こうなった、何故こうなったと何度も何度も自分に問うも返答が帰ってくるはずもなく。
つまりは駄々こねてるだけです。ごめんね、しばらくお待ちください。
「…………はい。」
そろそろ本格的におでこが痛くなってきたので停止する。
わかった、つまりはもう腹をくくらなきゃならないってことですね。
私の日常は昨日の時点で殺されてしまったんだ。
「…おっけー?」
「はい。おっけー。おっけーって事にする。はい。ごめんなさい。」
「…………なんか、汐里の取り扱い方がわかってきた気がする」
「それはきっと正しいよ……」
顔だけ起こす。
「……痛い…」
「うん、そりゃ痛いよね」
「生きてるのつらい……でも死んだら夢見れない……でも今も夢見れない……」
「……汐里は、その……夢が好きなの?」
「そりゃもう」
顔だけ隣に向ける。
「……いや、違う、好きなんてものじゃない。私が生きてる意味にも近い。ある意味命かも」
「そ、そうなんだ……」
「そうですよー。夢が無い世界は大嫌い。だから現実は大嫌い。だけど現実がなきゃ夢は無い。だから生きてるのです」
「うーん…現実にも楽しいことはあると思うけどなぁ」
「あーりーまーせーんー。第一現実が充実しちゃったら夢が楽しくなくなっちゃうじゃない。それはとても嫌、嫌だから現実は現実らしく何も起こらず味気なくアニメみたいな事が起こらずに…………あああああああもおおおおおなんでええええええ」
再び堪らなくなって机でうつ伏せになりつつおでこをぐりぐり。
やはり悔やんでも悔やんでもこれからの毎日を思うと辛すぎて嫌になる。ほんとに死んでみようかな。死後の世界がどんななのかは知らないけどこのまま生きるよりかは楽しくなる可能性があるかもしれない……
……そんな事を考え始めた私の頭に、何かがそっと乗せられた。
「……………」
「………………なにを、しておるのですか」
「いやー、ちょっとは落ち着くかなって……」
うつ伏せだから見えないけど、感触的に私は頭を撫でられていた。よしよしと言わんばかりな感じで。
いやいやいやいや、私曲がりなりにも高校生ですよ?そんなので落ち着くと思うてか。
「……ありがと」
落ち着くんですよ悔しいことに。
だってだって、そんなことされたことなかったもの。知らないもの。第一私にそんな風に優しくしてくれる人なんて今まで……
…………そこで、思い出した。
実束を呼んだ理由はひとつじゃなかった。
「……それと………その……」
「ん?」
「……昨日は、助けてくれてありがとう……」
「……!」
……うつ伏せで顔を見ていなかったからか、思ったよりもすんなり言えた。言った後がかなり恥ずかしいけれども。
そして実束の動きがぴくっ、とした後止まった。
無言。
「………………」
「………………」
私はうつ伏せのまま恥ずかしさで動けない。
実束はどんな顔をしているのかわからないけど、私の頭に手を乗せたまま動かない。
……何だか空気が気まずい。何かを間違えてしまったか。うう。
「汐里」
と思ったら実束が沈黙を破った。
「……なんです」
「ひとつね、お願いがあって」
「…?」
なんだろうか。思わず手が乗ったままの頭を上げ、実束の方を向く。
ぎょっ、とした。
「……え、あの、えっ」
「戦わなくても良い、から。あの世界で、一緒に、いてくれない…かな」
見れば実束の目には涙が溜まっていて、何かのきっかけがあれば泣き出してしまいそうな様子だった。
そうなった原因は考えるまでもなく私のさっきの発言だ。しかし理由はわからない。てかあのこれ泣きそうだし何故か敬語だしどうすれば…!
「う、うん、わかっ…た」
「ほんと…?」
泣いちゃう泣いちゃう泣いちゃう泣いちゃう!
「うん…ほんと」「ありがとぉっ!!!」「むぐぅっ!?」
悲鳴はぎりぎりで喉に押し込んだ……はず。
実束は返答を聞くなり私の頭を抱え込むように抱きついてきたのだ。
まず私の身体は硬直して、すべての感覚が一瞬無くなる。
そして徐々に戻ってくる感触。ふわふわした感じ。もふもふ?違う。この柔らかさは母性とかその辺の属性だ。そういえばよく見てなかったけどこれはつまり中々の物をお持ちでいらっしゃる感じですか。ええい、ブレザーが邪魔だ……いや待てこの香りは。この女の子の匂いはブレザーからか。ワイシャツの方が匂いが濃いのは当然だがこの微かに香る匂いと言うのもまた違った趣がありただただ匂いが強ければ良いというわけではないのがわかる。さて単純に甘いとかそういう分類はできないこの香り、味で例えるならばしょっぱいでも甘いでもない旨味という奴だ、それの香り版って所だろうか、そうかこれがフェロモンなのかそうなんだね。そして全ての行動意欲を無くす包容力と香りの次に伝わってくるのは人肌の体温だ。恐らく平常より少し高めだろう。泣きそうになっているからだ。なにより強く押し付けられている分より強く体温は伝わり視界が塞がれている分今どんな体勢なのか想像が広まり息できな
「あっ、ごめんなさい!」
「あっ」
ああ、母性が離れてしまった……
……って違う違う違う違う、何かが違う。……何が違うんだっけ?そもそも何を話していたんだっけ……ああそう、そうだ、一緒にいてくれないかって話……だったよね。
「…………」
「い、今のはその、思わず……ごめん、苦しかったよね」
「ばっちこい」
「えっ?」
「あいや何でもない平気」
危ない危ない、他人様の前でよろしくない事を口走る所だった。
……で、改めて実束の顔を見てみる。
やはりまだ涙は引いておらず、むしろ溢れてきている……が、さっきよりは落ち着いていそうな様子。
そんな風に観察していると、実束が。
「……えっと、いきなりごめんね、びっくりしたよね」
「……うん」
「その……今まで、“こっち”でお礼言われたことなかったから。ちょっと…ぶわってきちゃって…」
「………あ…」
そういえば……昨日、一ヶ月の間戦い続けてたって言ってたっけ。
でもその間、誰も実束の頑張りを覚えていなかったんだ。
だから、そっか…………嬉し涙、か。
「…………そっか。……実束、話の続き」
「……続き?」
「そう、続き。一緒にいるのは構わないから。だけど、条件があります」
少し息を吸い、吐いて、吸って。
ちゃんと発音する。
「……お願いするのはこっち。私は一人じゃ何にもできないから、図々しいけど側で守っていてほしい。それと、一緒にあの世界とか怪物を消す方法を探してほしい」
「…………どう、ですか」
「そんなの……もちろん!願ったりかなったりだよ…!」
手をぎゅっと両手で握られた。……いつの間に。
「これからは一緒にがんばろ、汐里!私が汐里を守るから!」
「う、うん…お願いします」
涙目のままで迫られてちょっと困る。正直なところ、どんな台詞を返せばいいのかわからない。何言っても漫画みたいな台詞になりそうだったからだ。
とりあえずまずは、
「……はい」
「あ……ありがと」
空いている手でハンカチを渡す。いい加減その涙を拭いてください。
私の手を離して涙を拭き取る実束。色々溜まってたんだろうな、と実束の苦労を何となく想像する。
「あ」
「…あ」
そうしていたら教室に予鈴が響いた。昼休みが終わった合図だ。
となると次の授業までの残り時間は10分……あまり時間は無い。
「戻らなきゃ……ハンカチ、明日ちゃんと洗って返すね」
「…あ、いいよ、あげる」
「え!?……いやいや駄目だって、ちゃんと返すって」
「……そう」
かちゃり。
鍵を開けて、空き教室から出る。
そして外から鍵をかける実束を見て、ふと思った。
「その力だけど……普段、どんな事に使ってたの?」
「これ?……うーん、ハサミを忘れた時とか、出すのがめんどくさい時とか……そうそう、ドライバーに使った事もあった。あ、人前じゃできないから一人の時だけね」
「ふぅん……」
鍵をかけ終わったら、さぁ駆け足だ。
二人並んで小走りで教室へ急ぐ。
「……じゃあ、あの剣とかは」
「こっそり練習してたんだよ。もちろん、ほんとに使う時が来ちゃうなんて思わなかったけどね」
「でも、そのおかげで初めてあそこに行った時にすんなり出せて助かったからなー……人生無駄なことは殆ど無いんだね」
「…………ふむ」
そういえば、実束の能力について知っている事は少ない気がする。
この際訊いてみようか。
「そういえば、見た感じいつも怪物に直接刺してたけど…投げる事ってできないのかな」
「それなんだけど、どうにも私の手を離れるとすぐ消えちゃうっぽいんだ。何回か試したけどてんで駄目だった」
「だから刃先を伸ばしてたんだね……」
「でも、これから昨日の熊みたいなのも出てくるかもしれないよね。このままじゃ駄目だよね……何か新しい使い方考えないと」
持ってないと使用不可、と。
今わかっている事は、出した鉄は自在に形を変えられること、出せる鉄の量には限りがあること、そして持っていないと消滅してしまう…いや、鎧状にも変化させてたから正確には身体に触れていないと消滅してしまう、だ。
身体に触れてさえいれば良いから……今の思考は完全にオリキャラの能力作る時のノリだけれど……うん、利便性は高そうだ。
教室到着。残りは3分ほど……余裕有り。
ひとまず話はここまでみたい。
「じゃ、また後でね」
「……うん」
軽く返事をしてまたあの端の方の席へ。私の定位置。
しかし、私にとっては中々色濃い昼休みだった。…………色濃い、ねぇ。
つい昨日まで現実は無色で味気ないって思ってたのにな。
なんだか本当に夢が消えてしまいそうな気がして怖い。
……でも、それって良いことなんじゃないか?
「……っ」
何を、考えてるんだ。
そんなの良いわけない。夢が消えてしまったら、そしたらみんなが………
…………“みんな”…?
授業の開始を告げる予鈴が鳴った。
学校終了。
実束はもっと話したいけど部活に行くから一緒に帰れない、と私に一言伝えてから何処かへ行ってしまった。……………………別に期待してたわけでもない、けど。
兎にも角にも、要するにいつも通り一人での帰り道というわけだ。
歩きながら考え事。
実束の能力についてだ。もっと効果的な、良い使い方がある気がする。
記憶を遡る……やはり印象深いのはあれだろう。
部活をやっているらしいけど何をやっているんだろうか。ぶっちゃけ私自身気にしてないしあまり興味なかったからよくはわからないけど、少なくともあれはぺったんではない。断じて違う。
今思えば頬を押し返してくるあの感触……そう、弾力。弾力も素晴らしかったと思う。柔らかいだけじゃ駄目だと私は思うのです。薄皮シュークリーム揉んだって嬉しかないでしょう。
揉む……そう、揉む。今回は挟む感じだったけど今度は揉んでみたいな。手のひらいっぱいに感じ取りたい。手は第二の脳というだろう、顔よりも感覚が敏感でより多くの情報を感じ取れるはずだ。
このあたりで私はすぱぁん、と自分の頬を引っ叩いた。
「……………」
うん、そうじゃないだろ私。実束の性能の話じゃなくて能力の話ね。
どうにも調子が狂う。……まぁ、私の日常はもう狂ってるから当然と言えば当然かもしれないけど。
全くもう。確かに普通のが嫌いなわけでもないけれど、私はどちらかと言うと貧乳派じゃなかったのか。これがいわゆるおっぱいの魔力か。
少し想像してみる。
後ろから抱きつく。うん。
肩に顎らへんを乗せつつ身体をすりすり撫でる。うん。
やがて胸に到達する。うん。
胸をかたどるように撫で回す。うん。
ゆっくり指に力を入れ始めて
ぐっ、とガッツポーズをすると同時にまた自分の頬を引っ叩いた。
「……………………」
……調子が狂うって思ってたけど、そういえばわりかしいつもこんな感じだった。
「ただいまー」
リビングのドアを開けると、いつも通り夕食が用意してあった。
今日は鳥の照り焼きその他。大好物です。
「おかえりー。……昨日と違って機嫌が良さそうね?」
「ん、そう?」
姉の
部活をしていない分働いてる、とか言ってるけど大変に決まってる。第一もう三年なんだから勉強しなきゃいけないだろうに……
……私が今できる恩返しは、ご飯を綺麗に食べることぐらいだ。
まずは準備しなきゃ。
「なんだか良いことがあったって顔してる」
「そうー?」
二階の自室へ駆け足で行き、素早く制服を脱ぎ部屋着に着替えて駆け足で階段を下りて、洗面台へ急行して
「昨日が雨雲なら今日は青空って感じ」
「えっそんな?」
「そんなそんな」
手早く手洗いを済ませ、スライディングもどきでリビングへ移動してテーブルへ!
そのまま正座へ移行!
「いただきまーす!」
「はいどうぞ。……それで、何があったの?」
「んー…………」
鶏肉を咀嚼しながら少し思案する。
友達ができた……じゃなんか違うかなぁ。ただの友達じゃないし……そうか、ただの友達じゃないって言えば良いんだ。
「……ん。…えっとね、今日…」
「特別な友達ができたの」
「!!」
……?お姉ちゃんが固まってしまった。
何はともあれ、今日もお姉ちゃんの料理は美味しい。
「お姉ちゃん、食べないの?」
「
お姉ちゃんは考える人みたいなポーズをとって何かを呟き続けている。
……まぁいいや、照り焼き照り焼き。
これを食べたら今日は早めに眠ろう。
遊びに行くわけじゃないし汐里だって不本意なんだろうけど……正直、あの世界で私以外に仲間が居るって考えるだけで楽しみで仕方ない。
いつもは気が進まないけど、今日はすんなり眠りにつけそうだ。
……………………。
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