第295話 掃討戦
「スパロー提督、こちらは先の戦いで疲れている。一気に片を付けるしかないだろう」
「はっ、ご指示の通りに」
タケルとアリストテレスさんを見るが、二人とも頷いた。
「提督、後は任せる」
「気化爆弾をSSP-2型ミサイルの弾頭にセットせよ」
「気化爆弾、弾頭セットしました」
「照準確認、爆発地点を入力」
「爆発地点を入力完了。いつでも撃てます」
「よし、1号、2号発射」
「SSP-2、1号、2号発射」
「シュー、シュー」
モニターに艦首発射管から発射されるミサイルが映し出される。
1号ミサイルは、鳥たちの真ん中に到達すると爆発し、火の幕が四方に広がる。
火に包まれた魔鳥と鼠人が空からサン・イルミド海峡に落ちていく。
だが、それで終わりではない。その後方からも来ている。そちらには2号ミサイルが飛んで行く。
さすがに、先程の状況を見ているので、急いで回避行動を取るが既に遅く、2号ミサイルの気化爆弾が爆発した。
爆発に伴って、火の幕が四方に広がり、火達磨となった魔鳥と鼠人たちは同じようにサン・イルミド海峡に落ちて行った。
CICで、モニターを見ていた人たちからは声も出ない。
空を覆いつくす魔鳥がいなくなったのだ。
だが、それもつかの間、今度はサン・イルミド海峡の潮に乗ってこちらにやってくる船団が見える。
「どうやら諦めてくれそうにないな」
「司令長官、それではこちらの方も対処します」
「クノイチ、敵旗艦に着艦し、情報を収集せよ」
クノイチがミズホから飛び立った。
クノイチが艦橋の上に着陸し、集音マイクを起動する。
「ウーリカ、申し訳ないが、また通訳を頼む」
「我が王よ、敵の船が見えましたが、たった2隻です。しかもマストがありません。あの船は手漕ぎなんでしょうか?」
「さあ、そこまでは知ったことではないが、投擲機でさっさとやっつけろ。少なくとも潮目の有利はこっちにあるからな」
「ミズホから魚雷を搭載した艦載機が待機とのことです」
「よし、先制は魚雷で行く。『ファルコン』発進せよ」
スパロー提督が艦載機「ファルコン」の発進を許可した。
「我が王よ。向うの船から魔鳥が飛び立ちましたが、人は乗っていません」
「何?人が乗らずにどうやって操っているんだ?」
「い、いや、それは分かりませんが…」
ドローン「クノイチ」から逐次映像が送られてくる。
フォルコンから魚雷が発射される。
次の瞬間、鼠人の乗る船に火柱が上がった。
「な、何が起こっている?」
「我が王よ、敵襲です。ですが、どのような武器を使ったのか分かりません」
「こっちも投擲機で反撃しろ」
「まだ、届く距離ではありません」
「届かなくてもいい。それで威嚇するんだ。それにこの船は鉄板で装甲してある。そう簡単にやられはせん」
「投擲開始、投擲開始」
相手の船から油樽が投擲されるが、かなり手前で海峡に落ちる。
海峡に落ちると油が表面に広がり火の海となる。
「次、『ヤモメ』発艦、敵さんの上からお土産を落としてやれ」
「爆撃機『ヤモメ』発進、狙いは相手船団」
爆撃機「ヤモメ」がミズホを発艦していく。
ヤモメが爆弾を落とすと、船に火がついて行く。
投擲機に油樽をセットした船に爆弾が当たり、油樽に火が点き、それが、海上に広がって、火の海となる。
これだと、小さな船は一たまりもない。
「ヤマト艦首ミサイル、3号から10号発射準備。相手の大型船8隻をロックオンせよ」
「ロックオンしました」
「よし、撃て」
「「「シュー、シュー、シュー」」」
艦首からミサイルが飛んで行き、相手の大型船に確実に命中する。
鉄装甲と言っていた旗艦も既に火の海だ。
「ヤマト全速力で敵船団の中央を突破する。その際に艦首1号砲塔は右舷を艦尾2号砲塔は左舷に固定、敵船団に突っ込みつつ砲弾を撃て」
「1号砲撃手、準備はいいか、2号砲撃手、準備はいいか」
「1号砲塔準備完了」
「2号砲塔準備完了」
「ヤマト、急速発進。最高速で相手船団に突っ込む」
「ヤマト発進します」
「操舵、大型の浮遊物に気を付けろ」
ヤマトの速度上がった。その瞬間、身体が後ろに持って行かれる。
「よし、敵船団中に突っ込むぞ。第一砲塔、第二砲塔の判断により斉射を許可する」
敵船団の間を物凄い速度で操船しながら、敵船団に向かって大砲を撃つ。
「ドン、ドン」
大砲の弾が発射される小刻みな音がCICに響く。
相手の船からは火矢が放たれるが、ヤマトの速度が速いため、掠りもしない。たとえ当たっても全身が鉄なので、火矢は海に落ちる。
ヤマトが中央突破し、相手後方に出ると既にこちらに歯向かう者はいなかった。
海に浮いている船も全ての船に火が見える。
既に辺りは暗いが、ここだけは昼間のように明るい。
俺たちは勝った。勝ったが、なんと後味の悪い勝ち方だろう。
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