第289話 イージス戦艦

 俺たち家族はイージス戦艦ヤマトのCICに居る。

 俺たち家族以外は、アリストテレスさんにホーゲン、ウォルフ、ポールの三獣士とマリン、ゴウそれに魔石研究者のキューリットが居る。

 ヤマトの艦長はフレッド大尉だ。前艦長だったジョニーは昇進し、艦隊を率いる大将となった。

「ヤマト機関始動」

 フレッド大尉が始動を命じる。

「はーい、機関始動よ。みなさん、がんばってぇー」

 ん、色っぽいこの声は、機関長のシャルローゼじゃないか。

「今の声はシャルローゼですか?」

「そうです。彼女は大尉になり、このヤマトの機関長をやって貰っています」

「シャルは私の親友なんです」

 なんと、キューリットの友人だったのか。

「シャルローゼさんは結婚願望が強かったみたいですが、どうなったんでしょう」

「結婚しましたよ。旦那さまは『シノン』て言う方で、ご領主さまに仕えていると言ってましたが…」

「シノンが結婚したとは聞いていたが、相手はシャルローゼだったのか」

 一体、みんなどこで知り合うんだ。

「しかし、みんなどこで知り合うんだろう。良く相手が見つかるな」

「砂漠の真ん中です」

「街の公園です」

「買い物に行った先のお店です」

 ミュ、エリス、ラピスが言う。

 間違ってはないよ。間違ってはないけど、この場に居る人たちの俺を見るジト目をどうにかしてくれ。


「キューリット、このヤマトはミズホとどこが違うんだ?」

「魔石リアクターにあの『電気ダコ』の魔石を使いましたが、その違いはやはり出力です。ジェネレーターを同時に、10機まで動かす事ができます。

 そのジェネレーターにより発電された電力は加速器重粒子砲により、圧倒的な破壊力を持ちます。

 ただし、加速器重粒子砲は莫大な電力を使用するため、連続の発射は無理ですし、艦内はCICを除き、一定の時間は停電となります。

 もちろん艦を動かす事もできません」

 加速器重粒子砲?なんだそりゃ。俺の居た世界にはなかったぞ。

 とにかく凄いという事は分かった。

「その『加速器重粒子砲』では、重粒子を加速するんですね。光の速度である300×10の6乗まで加速できるんでしょうか?」

 タケルよ、お前はまだ11歳だろう。何故、そんな事を知っている。

「いえ、さすがにそこまではできません。270×10の6乗くらいまでです」

 おい、話が通じているじゃないか。

 なんだ、この疎外感。

「すると、衝突エネルギーは単純に1/2×CV2乗の式で扱っても良いのでしょうか?」

「ええ、その公式が当てはまります」

 もう、いい。もういいから、次へ行こう。

「ご領主さま、さすがにタケルさまはご領主さまの子です。良くご理解されています」

 い、いや待て。11歳にして俺を超えている。同じにしないでくれ。

「ラピス、学院でのタケルの成績って、優秀なのか?」

「いえ、普通です。ほんとにいつも真ん中ぐらいです」

 なんで、キューリットの話についていけるヤツが、小学院の成績が普通なんだ。

 こいつ、もしかして、学校の試験は手を抜いているんじゃないか。


 このヤマトには艦橋がない。このCICが艦橋の役割も併せ持つ。

 ただ、CICが使えなくなった場合には外に船を操舵する部屋があるので、そこが艦橋といえば艦橋になる。

 CICに設置されたモニターで外の様子を見るが、ローレライを過ぎ、昔大戦のあった窪みの所に来た。

 ここはあれから『鎮魂の入り江』と呼ばれている。

 CICの中から、俺は手を合わせる。

 見ると横に同じように手を合わせるタケルと娘たちが居た。

 いや、それだけではない。CICの乗組員全員が手を合わせている。

 みんな、ここで何があったか知っているのだ。

 ヤマトとミズホは、更に上流を目指す。

「ミズホ、無人偵察機を発進させます」

「今度は、撃ち落とせられないように高高度から狙え」

「了解。無人偵察機『ニンジャ』発進します。発進よし!」

 無人偵察機って「ニンジャ」って名前にしたのか。聞かれたから「忍者かな~」と曖昧に答えたのに。

 CICのモニターに、ニンジャからの映像が映し出される。

 今回はさすがに高度らしく、雲が間近に見える。

 しばらく飛んでいると、下の方に大きな生き物が、川の中央を進んでいる映像が出た。

 竜の首が10本ある。間違いない、例の魔物だ。

「映像と偵察衛星から、魔物の位置を特定できました。SSP-3型ミサイル射程範囲内です」

「無人偵察ドローンを3機ほど飛ばして、映像を送らせましょう。失敗してもそれで対策が得られるでしょう」

 アリストテレスさんが提案する。

「無人偵察ドローン『クノイチ』3機発進します」

 ドローンは「クノイチ」って言うのかよ。

「これより、『クノイチ』による監視に切り替えます。『ニンジャ』は帰艦させます」

 クノイチ3機からの映像がモニター3台に映し出される。

「よし、SSP-3ミサイル発射」

 ジョニー大将が命令すると、艦首から1機のミサイルが飛び出した。

「SSP-3ミサイル着弾5秒前、3,…」

 そこまで、カウントダウンしたところで、竜の口から発射されたファヤーボールでミサイルが破壊される映像がモニターに映った。

「ミサイル、破壊されました」

「観測班、今の映像から竜のファイヤーボールの射程を導き出せ」

「操舵、射程が分かり次第、その射程の範囲に入るな」

「射程、分かりました。水平約10km、垂直5kmです」

 空から狙っても5000m以上の高度がないとだめと言う事か。

 しかし、それはあくまでも目安でしかない。

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