第287話 地球の謎

 俺はエルバンテにある、軍の中央指令所に来ている。

「ホーゲン、悪いな、手間を取らせて」

「いえ、シンヤ兄さまは指令長官ですから、全然問題ではありません」

 ホーゲンと一緒に来たのは情報管理室だ。

「それで、砂漠より先に何があるか知りたい。乾いた土地があるのは分かっているのだが、その先を知りたいんだ」

 ホーゲンが指示すると、衛星写真が出た。

「大尉、出ました。拡大します」

 荒野のような所は、そこから1000kmは続いているようだが、その先には緑の大地があった。

 その緑の大地の中に街も見える。白い色の家だ。屋根は赤い。写真で見たエーゲ海の島にある景色を思い出してしまう。

 人が映っている画像があったので更に拡大して貰うと、白いローブのような服を着た人物が映った。

 まさに古代ギリシャといった感じだ。

 中には軍の兵士のような人物も見える。

 こちらは馬に乗り、槍を持っている。皮鎧を来ているのも確認できた。

「この街を監視できるか?それと出来れば、言葉が解ればいいが、無理か?」

「ICBMで、通信機器をぶち込めば、どうにかなると思いますが…」

「……そうか、監視だけでいい。それと地球地図の完成を急いでくれ」

 ICBMをぶち込むなんて、無茶もいいとこだ。

 そんな事があって数日後、ホーゲン、ウォルフ、ポールが俺の部屋に来た。

「地球地図が完成しました」

 見ると、大きな大陸が2つある。上にあるのが、ローラシア大陸で、下にあるのがゴンドワナ大陸だ。

 ゴンドワナ大陸とローラシア大陸は今正に2つに別れようとしている。

 さらにゴンドワナ大陸は東と西に別れようとしている。

 見て東側がアフリカ大陸、西側が南米大陸になる訳だ。

 その中央辺りが、エルバンテということになる。

 そのエルバンテの北の方に大陸を東西に走るのが、サン・シュミット山脈になる。

 その山脈の北に北の国と言われる国があるが、さらに北にも不明な大陸がある。

 そこにも人が居るのだろうか。

「この大陸にも人が居るのだろうか?」

「衛星写真で確認しています。こちらです」

 見ると南側の海に面しているところには、街が見える。

 昔のエルバンテと、そう変わりはしない造りだ。

 だが、その北にはサン・シュミット山脈より高い山並みが見え、その北には街らしきものがない。

 撮影した時期も冬だからだろうか、大地が白い。

 しかし、所々に湖が見えるが、この写真で見える湖は実際は、とても大きいのだろう。

「これは冬に撮影したのか?」

「いえ、初夏の頃に撮影したものです」

「だとすると、この山脈の北側は、かなり寒い地域という事になる」

「ええ、山脈の北側は、それでもまだ植物が生育していますが、更に北に行くと植物の生育も見られません。完全に白の世界です」

 神の知識を持っているエリスに確認する必要があるだろう。

「エリス、すまない。ちょっと聞きたい事があって来て貰った」

 エリスだけではない。嫁たちと娘たち、息子にアリストテレスさんやホーゲンたちも居る。

「軍で地球地図を作った。その地図を見て、エルバンテが赤道のやや上あたりに位置するのも分かった。

 だが、疑問がある。赤道に近いのに何故、四季がある。どうして、ここは過ごし易いんだ」

「旦那さま、過ごし易ければいいじゃありませんか?」

「「「そうよ、お父さま」」」

「しかし、お父さまは、そこに違和感を感じられたという事ですね」

 タケルが言う。

「タケル、何故そう思った?」

「地球は太陽を回っている衛星であると、お父さまから教わりました」

 娘たちも頷いている。

「だとしたら、太陽に一番近い赤道付近は暑いはずです。少なくとも、お父さまが居た世界は暑かった。しかし、この世界では暑くない。

 そこには何か理由があって暑くないということでは、ないでしょうか?」

「その通りだ、タケル。良く気が付いた」

 褒めてやるとタケルは、ちょっと微笑んでいる。

「それでだエリス、その理由が聞きたい」

「シンヤさまはこの地球には、暖かい時代と寒い時代が交互に来ている事は知っているわね。

 今、地球は寒冷化に向かっているわ。その後、再び温暖化になり、本格的な恐竜の時代がやって来るわ」

「では何故サザンランドは暖かい。寒冷化が来ているならば、サザンランドはここより寒いはずだ」

「この寒冷化は、北から降りてきているの。それが、何故かまでは分からないわ。

 シンヤさまが居た時代には、南極に活火山はエレバス山だけだったけど、今の時代は南の方が火山は多いの。そして海底火山もあるわ。

 それは、海の水を暖めるぐらいの海底火山があっても不思議ではないくらいに」

「つまり、暖められた海流が作り出す温暖な気候が南の地域を温かくしているという事か?」

「そういう事になるわ」

 科学が発達すると今まで、分からなかった事が分かるが、それでもまだ分からない事も残る。

 一つの疑問が解ければ、2つの疑問が沸くと言ったのは誰の言葉だったろう。

「それで、北の国の調査結果は出たか?」

 偵察衛星で北の国を調査していた結果が、そろそろ出る頃だ。

「ええ、かなり巨大な建造物が確認できています。それに、それを造っているところもありますが、かなりの数の労働者が従事しているのが分かります」

 差し出された写真を見ると、ピラミッドのような三角錐の建物が並んでいる。

 その横には、建設中のピラミッドが見え、それに続く蟻のような黒い線も見えるが、これがその労働者なのだろう。

「これは『ピラミッド』だな」

「この建物は『ピラミッド』という物ですか?」

「たくさんの労働者と金と時間を使って造られる。俺が居た時代でもそれは王の墓だと言う人もいれば、天文上の観測施設だと言う人、宇宙人と関係あると言う人様々で、実際は何に使われたのか分からない建造物だ」

「彼らは何の為に、このピラミッドを造っているのでしょうか?」

「さあ?聞いてみるしかないだろう」

「港の方も映せるか?」

「こちらです」

「帆船が多いな。だが、これは戦の準備じゃないか?まさか、こっちに攻めて来るなんて事はないだろうな」

「現状、何も言えません。これからの季節、北風になるので、追い風に乗って攻めて来る可能性は十分あります」

「一応、戦力分析はしておいてくれ。偵察衛星で分かる範囲で構わないから」

「分かりました。戦力分析と、出撃について確認しておきます」

「サザンランドの方は、問題はないか?」

「タイフーンが2個発生していますが、進路予想上サザンランドに影響を与えるものではありません」

「タイフーンの進路を船に連絡し、注意するように連絡を頼む」

「はっ、気象画像は通信衛星を使って、データを既に送信してあります」

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