第194話 初戦
「それでは、我々は遊撃部隊として後方待機します」
「ジルコール将軍とゴレット総大将がいれば大丈夫だと思いますが、もし、押されるような事があれば……」
「その時は例の作戦ですね」
「頼みましたよ、将軍」
「はっ、ご指示の通りに」
ザンクマン将軍が出ていった。
「よし、俺たちも行動しよう」
エリスの転移魔法でヤマトに転移する。
「ジョニー船長、ヤマトをシミルドの南側に移動してくれ」
「では、予定通りですね」
「いや、まだ分からないが、慎重を期すという事だ」
「ミュ、頼む」
俺はミュに抱えられて、センターポールの先端にある見張り台に飛び上がった。
俺の横には、エリスとラピスも来た。
4人も来れば見張り台は狭いが、北風が強いので、おしくら饅頭のようで暖かい。
「うふふ、こんなのもいいわね」
そう言うエリスの爆乳が、俺の右腕に当たるんだが、
「エリス、ちょっと、お前の乳がだな……」
「えー、だって狭いんだもん、仕方ないじゃない」
俺の左腕には爆乳ではないが、巨乳が当たる。
「えっと、ミュさんや、乳が当たるんだが……」
「なんなら、揉んで頂いても構いません」
「えっ、いや、そういうつもりではなく……、ラピスさんや、背中に乳を押し付けるのは、どうかと思うんだが……」
「だって、エリスさまやミュさまだけ、ズルいです」
「えっと、そういう事ではないかと」
見張り台から見ていると、遠くの方からエリス教派と思われる軍団が、引き上げてくる。
エリス教派が過ぎたところに、ジルコール将軍とゴレット総大将が率いる軍が出て行き、エリス教派を守るように壁を作った。
その後だ。後方から砂塵が上がる。恐らくならず者たちだろう。
軍隊ならば、隊列とかを整えて相手に対峙するのだが、ならず者たちは止まる事をせず、そのままジルコール軍とゴレット軍に突っ込んだ。
いきなり突っ込まれた軍は、対応出来ずに崩れ出す。
「エリス、音声拡大の魔法を頼む」
エリスが軍の中の話声を聞こえるようにしてくれた。
「引くなー、持ちこたえろ、相手はただの盗賊だ」
いきなり、ジルコール将軍の声が聞こえた。
たしかに盗賊だが、大商人の隊列を襲ったりしている。
そのような隊列は多くの冒険者が警護しており、ならず者たちは相手が多数の場合の攻撃を心得ている。実践経験を侮ってはならない。
「くそっ、だめか。引けー、引けー」
とうとう、ジルコール将軍が退却命令を出した。
ジルコール軍とゴレット軍が、シミルドの街の方へ引いて行く。
その先に現れたのは、無傷のキバヤシ軍だ。
キバヤシ軍の前には、板壁が設置されている。
これはあらかじめ作ってあった板壁をキチン車で運んで、壁を作ったものだ。
「あいつら、川を背にして、兵法を知らんのか。川を背にした時点で負けだな」
ならず者のリーダーにしては、戦いに慣れている。
たしかに、孫子の兵法では川を背にするなとある。
「しかも、あの壁は何だ、戦う意志があるのか」
ごもっともな意見だ。
「よし、押せ、このまま押すんだ」
「今だ、撃て」
ドオーン、ドオーン。
ヤマトから砲弾が放たれる。
ヤマトが改修していたのはこの大砲を設置するためだった。
鉄が生産できるようになったので、火薬と鉄を使って大砲を設置したのだ。
砲弾はならず者たちの真ん中に正確に落下し、周辺のならず者を吹き飛ばす。
ならず者たちは、いきなりの事に右往左往している。
「よし、ミサイル発射」
大砲の横に設置されたランチャー台よりミサイルが発射される。ミサイルだって最初に作ったもものより改良してある。威力も飛行距離も前のものとは違う。
ヒュー、ドオーン。
ミサイルが飛んで行き、爆発する音がする。
「戦車隊、出撃」
地上部隊のザンクマン将軍が叫ぶ。
「「「おおっー」」」
キチンの戦車隊が右往左往しているならず者たちに突っ込む。
その後から、キチン騎馬隊が突っ込んで行く。
馬ではなく、鳥なので騎鳥隊かもしれないが。
キチンに乗ったホーゲンが、長剣でならず者たちをなぎ倒していく。今度はホーゲンは手加減をしないみたいだ。
ポールは戦斧を振り回して、ならず者たちを寄せ付けない。
ポールの後ろから一人の男が襲い掛かると思われたその時、男の頭に矢が刺さった。
ウォルフの矢だ。
そして、その横には強弓を引く、セルゲイさんの姿もある。
キチン騎馬隊の指揮をするのはジェコビッチさんで、水を得た魚のように生き生きとしている。
相手の大将と思われる人物が剣を抜いて騎馬でホーゲンに襲い掛かるが、ホーゲンの剣はカシーさんたちが鍛えた鉄の剣だ。
対するならず者たちの剣は青銅製だ。
青銅製の剣と打ち合うホーゲンの剣は刃こぼれしない。
2,3度打ち合い、相手の大将を切り倒した。
それを見たならず者たちが、徐々に逃げていく。
逃げていくならず者たちの横から、引いていたジルコール軍とゴレット軍が襲い掛かった。
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