第168話 業務効率化

 農作業用の道具を作ることになり、俺たちは工場にやって来た。

 工場では、キチン用の鳥車や砂漠で使うソリ付馬車、いやトカゲ車の製作を行っている。

 キチン用鳥車は板バネを使用しており、乗り心地も良いため、今では馬車用も製作していて、貴族や商人にも販売している。

「サージュさん、頼みがあって来ました」

 サージュさんは、うさぎ人の女性だが、キバヤシ車輛の社長に就任して貰った。

 サージュさん以外にも、今年の1月にキバヤシ不動産にミルディさん、キバヤシ旅行にコリーさんを社長とした会社を立ち上げた。

「おや、会長さん、珍しいね。あんたが来ると言う事は、また何か無理難題なんだろうね」

 車輛製作の職場なんて男臭い職場であるにも関わらず、サージュさんはうさぎ耳がぴょこぴょこしており、パッと見は可愛い。

 しかし、男ばかりの職場だからだろうか、口はそれほど丁寧ではない。

 ちなみに子供が2人おり、保育院に預けて働いている。

 本人に聞いた訳ではないが、子供の旦那さんはそれぞれ別の人だと言う事だ。

 多夫多妻制だから、そんな事もあるのか。

「そんな無理ばっかり言ってますか?では、ついでに、これの製作もできますか?」

 アリストテレスさんが書いた農作業用のスケッチを見せる。

「これは何に使うんだい?」

 農作業で人手が不足している事、そのために効率化を図りたい事、効率化を図るための道具が必要な事を説明する。

「なるほどね、話は分かった。食い物が無くなると困るからね、どうにかしよう」

「ありがとうございます」

「しかし、アーネスト社長といい、会長といい、変な車作りばっかり言ってくるねぇ」

 道路工事用に作った車輛は、サージュさんたちが作ったのか。

 アーネストさんが言うには、作業が捗って助かっているとの事だった。


「お頭、キチン車が出来上がったんで、最終確認をして貰えませんか?」

「お頭と言うなって、いつも言ってるだろう。男が聞いたら女子力低いみたいじゃないか。

 ちゃんと、『サージュちゃん』と呼べと言ってるだろう」

 コケた。全員、コケた。

「へい、すんません。サージュちゃん」

「それでええわ。今度から気をつけるように」

 サージュちゃんを呼びに来た部下は、キチン車の方へ行ってしまった。

「そ、それじゃ、サ、サージュちゃん、よ、よろしくお願いします」

「会長もサージュちゃんと呼んでくれるのかい。そりゃ、頑張らないと」

 嫁たちが、ジト目で睨む。

 居た堪れなくなった俺は、

「ミュちゃん、エリスちゃん、ラピスちゃん」

 と、呼んでみる。

「シンヤさま、取って付けたような呼び方ね」

「そうです。いつもは呼び捨てなのに」

「私は何と呼ばれようとかまいません。でも、ミュちゃんと呼ばれると嬉しいです」

「今晩はみんなで仲良くしような」

「まあ、仕方ないわね」

「そうですわ、仕方ないですわ」

「仕方ないですね」

 何が仕方ないんだよ。


 労働人口の偏りは、そのうち大きな問題となると考えられることから、関係すると思える全員を集めて会議を行う。

 参加者は、

 シンヤ・キバヤシ         キバヤシコーポレーション会長

 ジェームズ・エルバンテ      エルバンテ領主

 フォルテ・カマラジ        エルバンテ領宰相

 シュバンカ・アーレイ・ネルシュ  キバヤシ領代官

 ボルミ・ハミルト         キバヤシ領副代官

 ヤーブフォン・シルバ       キバヤシ領宰相

 キロルド・ファイスマン      ショウナン地区管理人

 ウラジミール・ヤッコ       ヨコハマ地区管理人

 アリストテレス・ネメルド     キバヤシコーポレーション社長兼家宰

 ガルンハルト・ゲルツ       キバヤシコーポレーション副社長

 アール・ボストロム        キバヤシコーポレーション副社長

 フェイユ・ボストロム       キバヤシ販売社長

 セルゲイ・ネルシュ        キバヤシロジテック社長

 アーネスト・ロイスリッチ     キバヤシ建設社長

 シードラ・ノット         キバヤシ商事社長

 アロンカッチリア・エ       キバヤシ学院長

 エルザ・サベスト         キバヤシ学院副学院長

 サロイデリア・アスト       キバヤシ研究所(魔物加工)主任研究員

 ルネサス・ルメジ         キバヤシ研究所(服飾)主任研究員

 カシー・バランス         キバヤシ研究所(鍛冶)主任研究員

 ザンジバル・フッソ        キバヤシ研究所(鉄鋼)主任研究員

 サージュ・アマンド        キバヤシ車輛社長

 ミルディ・キステロイ       キバヤシ不動産社長

 コリー・イザベル         キバヤシ旅行社長

 錚々たるメンバーとなった。


 これにオブザーバーとして、

 エミリー・ガゼット        キバヤシ家およびラピスの筆頭侍女

 エミール・スカトロフ       エルバンテ事務長官

 エイ・ミル            キバヤシ服飾工場長

 カルフ・ショーリリ        ミュ・キバヤシ1号店長

 アーデルヘイト・ミットマン    トウキョーの司教

 エルハンドラ・ローランド     ローランド領主の息子

 エンヤ・ガンビ          エルバンテギルドマスター

 ソウ・キバヤシ          うさぎ人

 マリン・キバヤシ         人魚

 ホーゲン・キバヤシ        獅子人


 ホーゲンたち寄宿舎育ちの獣人は姓がなかったが、俺が養子としたことで、キバヤシの姓を名乗る事になった。

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