第98話 新築一戸建て
トウキョーの中には新しい学院も造った。
こちらは、共学で男子と女子が入るが、人間族と獣族は区別していない。
学院の下には保育院もある。
子供が生まれても、子供を預けて両親は働きに行ける。
エルバンテ公都の学院は12歳からとしたが、トウキョーは小学部、高学部に分け、小学部が、5歳から11歳まで、高学部が12歳から18歳とした。
小学部は自宅からの通学と寮生活としたが、高学部は全員が寮生活とする。
高学部の最初の3年間は読み書きそろばんの延長だが、その後3年間は専門部門の選択になる。
建築関係に進みたい者、輸送部門に進みたい者、服飾関係に進みたい者、憲兵や軍隊志望コースなんてのもある。
そして一番のエリートコースは枢密コースだ。
これは公国の幹部を育成するコースになる。
もちろん、成績優秀者でないと編入する事はできない。
そんな、新しい街造りをしていたが、やっと俺たちの家が完成した。
新築一戸建てになる。
小さくてもいいと言ったのだが、来てみると御殿だった。
その横には、メイドたちの住居だろうか、普通の家も建っている。
最初、そっちの家に入ろうとしたが、執事のアリストテレスさんから慌てて引き留められた。
「お館さま、住居はこちらでございます」
「いや、俺はそんな大きな家だと落ち着かない。アリストテレスさん使ってよ」
「そんな無茶、言わないでください。あなたは、キバヤシコーポレーションの会長にして、この領土の次期後継者なんですから」
怒られてしまった。
「はい、すいません」
身体を小さくしていると、
「これぐらい、小さいぐらいが丁度いいわ」
ラピス、公爵邸と比べるな。
入ってみると、ホールがあって、リゾートホテルみたいだ。
「アリストテレスさん、これは、本当に家か?ホテルみたいだが」
「これはまぎれもなく、お館さまの家でございます」
右手の方には10人程のメイドが並んでいる。
その一番先頭に居るのはエミリーだ。
「エミリー、何でそこに居る?」
「ラピスさまの侍女として、お勤めさせて頂く事になりました」
「エミリー、また一緒ね。よろしくね」
聞くと、公爵邸で侍女をしていた人たちだそうだ。
アリストテレスさんには、家宰も兼ねて貰うことになった。
折角、社宅を用意したが、こちらの家の方に住んで貰う。
だが、身の回りの世話をする人は既に雇っていたので、こちらで一緒に働いて貰う事になった。
見ると30歳ぐらいの女性だった。
アリストテレスさんの彼女かなと思っているが、無粋な事は聞くまい。
特段、綺麗という訳ではないが、大人の女性の色っぽさがある。
居るだけで花がある感じだ。
「紹介します。アンジェリカさんと言います」
「アンジェリカさんって、あの……」
「彼女はただのアンジェリカです。姓はありません」
「……、アリストテレスさん、ありがとう」
シミラー元将軍の娘だったアンジェリカさんは、嫁ぎ先を絶縁されていたのをアリストテレスさんが、引き取ったのだという話らしい。
使用人の家の方は小さいように見えたが、それでも普通の家よりは大きい。
二人1部屋の仕様となっている部屋が、10部屋ほどあったので、とりあえずは一人一部屋で住んで貰う。
アンジェリカさんはアリストテレスさんの隣の部屋を使って貰う事にした。
メイド長はエミリーが務めるということだ。
もう一人この家で働くために雇った人が居る。御者だ。
エリスの転移魔法があるから、いらないと言ったが、あっちこっちに転移で出て来ると、みんなが慌てるのでやめて欲しいと言われ、結局、緊急時以外は転移しないようにと、アリストテレスさんに釘を刺された。
そのため、馬車を購入することにしたが、今の時代は馬車よりキチン車だ。
キチン車を操る事ができる人を探したが、ホーゲンほどうまい人はいなかったので、軍隊を辞めた人で、元セルゲイさんの部下だった、ジェコビッチさんという人を雇い、ホーゲンに鍛えて貰った。
キチンに引かれた黒塗りの車が近づいて来る。
御者台には、これも黒い服をビシッと着こなし、口髭のある御者が座っていた。
「ラピス、今日は公爵家の車も来る予定だったのか?」
「旦那さま、つまらないボケは止めて下さい」
「お館さま、これがキバヤシ家の車でございます。ジェコビッチ、降りてご挨拶をせよ」
ジェコビッチと言われた御者は車から降りて跪いた。
「御者のジェコビッチでごさいます。ところでお館さま、この車にはまだ家紋がございませんが、どのような家紋に致しましょうか?」
家紋か?そういえば、全然考えてなかった。
「俺は貴族ではありません。なので家紋は不要です」
「既にエルバンテ領の1/5の領土をお館さまはお持ちです。
お館さまが、貴族でないとおっしゃっても、世間の人々はそう見ません。
ここは、家紋を入れるべきと思います」
「俺はいろいろ片付いたら、引退して、冒険者にでもなろうと思っている。だから、貴族なんてなっても仕方ないのさ。なら最初から要らないと思わないかい?
そんなの欲しいやつに呉れてやるさ」
「お館さまは変わった人でございます」
「俺自身はそう思っていないが、他の人から見るとそうらしい」
結局、家紋は入れずにそのまま黒い車とした。
現代だと、霊柩車と言われそうだ。
その夜の夕食は、嫁3人とエミリーが調理した。
なぜ、メイドが調理しなかったかというと、ミュが
「ご主人さまの食事は全て私が作ります」
と言ったからだ。
他の嫁もミュに任せておけないと結局、全員で作る事になった。
おかけで、メイドの仕事が1つ減った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます