第97話 新しい街
トウキョーがほぼ完成した。
細かい所はまだ建築中のところはあるが、それでも住居は問題ない。
街の中心に教会を建てたため、司教さんに来て貰わなければならない。
ここはエリスの出番だろう。
「と、言う訳で、教会の代表を務めて頂ける司教さまか司祭さまを派遣して頂けないでしょうか?」
「分かりました。少々、お待ちを」
しばらくすると30歳ぐらいと思われるシスターが入ってきた。
「ご紹介します。アーデルヘイトです。彼女にお願いしようと思っています」
シスターを見ると目の焦点が合っていない。
「司教さま、シスターは……」
司教に代わってシスターが答えた。
「私はご覧のように目が見えません。しかし、見えない事で感じる事もできます。現に今ここに神がおられる事が分かります。私では不足でしょうか」
「なら、私が見えるようにしてあげるわ」
「エリス、待て。まずは本人の意思を確かめないと」
「私は、このままでも不自由と感じた事はありません。エリスさまのご厚意、感謝致しますが、治療して頂く必要はありません」
「なかなか、意思の強い方とお見受けしました。分かりました、お願いしましょう」
アーデルヘイトシスターは司教として、トウキョーに来てくれる事になった。
他に若いシスターが5人と司祭さまが二人、付き添って来て貰う。
そんな中、街造りに従事していた獣人たちから意見が上がってきた。
街造りが終わると、仕事が無くなるのじゃないかと言う心配だ。仕事がなくなって、元の貧民になってしまうのではないかとの不安があるようだ。
集会所に行って、みんなの意見を聞いてみる。
「最初に言ったように街造りが終わったら、工場で働いて貰う予定だ」
「みんなの希望を言わせて頂ければ、工場に勤務したい人が半分、このまま建築関係に携わりたい人が半分います。
工場での勤務に自信がないのと、街を造る事で造る楽しさを知った者たちです」
代表者が発言する。
こいつは、スラム街で最初に、反対していた獣人の若い男じゃないか?
監督をしてくれていた、アロンカッチリさんの弟子たちにも聞いてみる。
「君たちの意見は?」
「正直、師匠の弟子に戻りたいと言う者と、このまま監督を続けたいと言う者がいます」
半分の人は、このまま建設作業に従事したいと言うことか。しかし、街が完成した今、仕事は無い。
俺が悩んでいると、先程の獣人が再度発言してきた。
「仕事が無いと悩んでいるのであれば、心配いりません」
「どういうことだ?」
「まず、街の補修に人手が必要になります。しかし、補修だけでは人手も限られます。そこで、道造りをしたいと思います」
なるほど、道造りか。
「なるほど、そういう事か。分かった。では、希望者については、このまま建築業務に従事して貰う事にしよう」
そうすると企業として、やって行こうと思う。
別部屋へアロンカッチリアさんとアーネストさんを呼んで、話をする。
「先程の意見を聞いて、建設会社を立ち上げようと思う。
社長には、アロンカッチリアさんに就いて貰いたいがどうだろう?」
「俺は寄宿舎の塾長に戻りてぇし、柄じゃねぇからな。社長には、アーネストさんを推薦するぜ」
これはほぼ予想された事だ。
「アーネストさんの意見は?」
「私はアロンカッチリアさんの方が最適と思いますが、辞退されるとなると誰かが務めなければなりません。不肖者ですが、私が務めさせて頂きます」
「では、早速、副社長、部長、監督を選出して下さい。後、設計者も適任者がいたら選んでおいて下さい」
道路の工事費については、俺の領地で栽培される農作物と税の代金から捻出する。
今までは税金は領主が使っていたのに、道路造りや橋造りに使うのは始めてだそうで、エルバンテ公からも呆れられた。
俺の世界では当たり前の事だったけどね。
もちろん、会社の従業員となった獣人たちにも給料を出す。
始めて給料を貰った獣人たちは、手にしたお金を見てびっくりしていた。
まず、最初の道路は、首都エルバンテ公都とトウキョーを結ぶ道路だ。
公道1号線と命名された。
公道2号線は砂漠へ続く道だ。砂漠は鉱物資源の宝庫である事が分かっている。しかも砂漠の広さは未だに分からない。
資源も無尽蔵にあるかもしれない。
ここから資源を運ぶのは生活していくために重要な道路となるだろう。
もう一つ、やる事業がある。
それは北にある、サン・イルミド川の支流からの運河を造ることだ。
例の温泉池はあるが、街が大きくなるとどうしても水が不足する。地下水を汲み上げるにしても限界もある。
幸い、サン・イルミド川は大河であり、その支流もかなりの大河のため、運河ができると水不足は解消される。
こちらの建設も最重要課題だ。
トウキョーを中心として、槌音が高らかに鳴り響く事になった。
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