第34話 子作り

 そんなことをモンモンと考えていたが、夕食が出来上がった。今日はハンバーグだ。

 こちらの世界に挽肉はないが、それ以外の玉ねぎなどの材料はある。

 ではどうやって挽肉を作ったかというと、ミュが肉を握り潰した。

 握力600kgではあっという間に肉も挽肉になる。

 ところどころ、完全に潰れていない肉もあるが、そこはご愛敬だ。


 市場で買ってきた食材とハンバーグをカイモノブクロに入れ、ミュが持った。

 俺はエリスに運んで貰う。

 ミュは飛んでいるときに光学迷彩を張るので、その姿は地上の人からは見えない。

 しかし、エリスは迷彩になることができないため、念のため黒い服を着て貰うが、それでも翼だけは見えてしまう。

 人目につかないようしないと、大騒ぎになってしまう。

 こちらの人は夜の楽しみもないし、明かりもないので寝る時間が早いことが救いだ。


 夜が更けた頃に3人で飛び立つ。

 ミュが暗視モードで確認しながら、先頭を行く。

「ご主人さま、エリスさま、あそこです」

 俺の目では、まだ分からない。

 エリスも見えていないようだ。

 しばらくすると見慣れた木々が見えてきた。

 しかし、アロンカッチリアさんが居る様子はない。

 建物の中に入っていくと、暖炉があり火が点いている。

 その前にアロンカッチリアさんが座っていた。

 暖炉の周りも壁で覆って、火の灯りが外に漏れないようにしていたらしい。

「おおっ、待ちくたびれたぜ。もう腹が減って死にそうだ」

 早速、カイモノブクロから今日作ったハンバーグを取り出す。

「なんだこりゃー、うめえ、これはお嬢が作ったのか、それとも女神さまが作ったのか?」

「二人で作りましたけど」

「そっか、あんた、駄女神じゃなかったんだな」

 アロンカッチリアさんの中でも駄女神認定されていたようだ。


「食料が入ったカイモノブクロは置いていきます。明日の朝ごはんのおにぎりも入っているので食べてください。

 それと近いうちに、子供たちを連れてきます。男の子もいるので何かあったら使ってください」

「おお、分かった。帰ってから子作りか、がんばれよ」

「ち、違います」

 エリス、からかっているんだから、いちいち反応するなよ。

「それでは、おじゃましました」

 3人で飛び立つ。今度はミュが俺を抱えてくれた。


 家に帰ると、風呂を沸かせて3人で入る。

 寄宿舎の方も大きな風呂があった方が、いいかもしれない。

 裸のコミュニケーションって大事だ。

 ミュが、風呂が沸いたのを知らせてきた。

 また、3人で風呂に入るが、やっぱり狭さを感じる。

「ミュ、3人で入ると狭いな。広く出来ないだろうか?」

「浴槽を大きな物に変えればいいだけなので、大丈夫だと思います」

「子供たちの件が片付いたら、浴槽を変えるようにしよう」


 俺とミュとの話を聞いていたエリスが、

「何人用の浴槽にするの?」

と聞いてきた。

「何人用って、3人用だろう」

「本当に3人用ね、ミュも聞いたわよね」

「ええ、私も聞きました」

「シンヤさま、これ以上、嫁は増やさないってことでよろしいですね」

 しまった、嵌められた。

 しかし、体力的にこの二人以上増えるのは、拷問になってくる。

「もちろんさ、俺はミュとエリスが居れば十分だ。それに体力も持たないぞ」

「体力のことは心配しなくてもいいわ、私が回復魔法で回復させるから」

 いや、それはほんとに拷問だ。


 風呂から出ると、体を拭いてベッドに直行だ。

「ねえ、シンヤさま、ミュとは昼間したから、今夜は私からでいいでしょう」

 昼間の情事を見ていたからか、エリスは我慢できないのだろう。もう、ベタベタと甘えてくる姿はとても可愛い。

「エリスは今夜は子作りしないって、アロンカッチリアさんに言ってなかったっけ?」

「えっと。これは子作りじゃないわ」

「じゃ、なんだよ」

「そうよ、消火活動よ、私の身体の消火活動」

 そう言うと、もう首に抱き着いてきている。

 チラッとミュを見ると、目で頷いている。

 俺はエリスに優しくキスをする。

 エリスとの行為が終わった後、今度はミュが大胆に乱れるだろう。


 翌朝、目が覚めたが、身体が動かない。

 苦しい。ハッと思って目を開けると、俺の両側からミュとエリスが抱きついてきている。

 二人とも既に起きていて、俺の顔を見ている。

 夕べ、そのまま寝てしまったので、3人とも裸だ。

 窓の隙間から漏れてくる日の光が、既に朝が来てから、かなり過っていることを伺わせる。

「子供たちに朝ごはんを持って行ってやらないと、お腹を空かせているぞ」

 その言葉を聞いたミュとエリスは、ハッとした顔でベッドから出ていった。

 今日は大きな土鍋2つでご飯を炊く。

 俺たちは、卵かけご飯でいいだろう。

 炊けたご飯でおりぎりを作り、竹の葉で包んで、カイモノブクロに入れていく。

 準備ができたら子供たちの所に出発だ。

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