第31話 フェンリル

 夜は3人でベッドに寝たが、ミュが第一夫人からお相手して下さいと言うので、エリスから昇天させてやると昨日より凄いことになっていた。

 妻となったことが、大胆にさせているのだろうか。

 ミュはいつもの通り感じていて、ミュから「ご主人さま、私と一緒にお願いします」と言うので、ミュに精を与える。

 二人の翼が出てくると、ベッドがいきなり狭くなった。


 朝、日も昇らぬうちに起きて、出発の準備をし、子供たちのおにぎりの用意をする。

 いつものように、おにぎりを子供たちの所に持って行ったが、子供たちは当然のことながらまだ寝ていた。

 サリーだけを起こして、今日の分のおにぎりを渡す。

 その足で今度は、教会へ向かった。「結婚届」を提出するためだ。

 式は神父さまか、シスターが立ち合いで宣誓をしなければだめだそうで、今回の結婚は届け出だけの結婚となったが、ミュが教会に入れない以上、仕方がない。

「ちょっと、待ってて。着替えてくる」

 そう言って、エリスは教会の中に駆けていった。

 時計がないので正確には分からないが、たぶん30分ぐらい経っただろうか、エリスがパンツ姿で現れた。

「シスター冒険者バージョン、どう?」

 美人だから、何着ても似合うが、ここで褒めてはいけないことを知っている。

「エリスさま、良くお似合いですよ」

 ミュよ、それは余計な一言だぞ。

「そ、そうかしら、やっぱり、ミュは見る目があるわ、それに比べ、男の人ったらダメね。センスがまったくないわ」

 ミュの余計な一言で、舞い上がっている。

「ほら、行くぞ」

「はい、ご主人さま」

「ち、ちょっと待ってー」


 教会は街の高い所にあるので、東門に向かって歩き始めると、正面に朝日が昇ってくるのが見える。

 そして、教会の鐘が1つ鳴った。

 一応、こちらの世界でも太陽は東から昇る。

 東門を出て感覚的に1時間ほど歩き、途中から北方向へ曲がった。そのまま北上する。

 さらに2時間ほど歩いたところで、

「ちょっと上から確認してきます」

 そうミュが言うと、背中から翼を出し、上空に舞い上がっていった。

 ミュの服は翼が出せるように背中の所に特別に穴が開いている。

「じゃ、私も」

 エリスが翼を出そうとするが、翼が出ない。

 あんたの服は加工してないから、翼は出ないだろう。

 すると、エリスが服を脱ぎだした。

「おい、何してるんだ」

「私も上に、上がりたいなと思って」

「誰かに見られたら、どうするんだよ」

「大丈夫よ。誰もいないし」

 たしかに、見渡す限り誰もいない。

 そうこうしてうちに上の服を全部脱いだ。

「おおっ」って、ブラしてるじゃん。

 しかし、エリスのスイカップの胸にそのブラは小さすぎる。

 ほとんど先端しか隠れていない。

 このエロ女神め、お父さんは、お前をそんな子に育てた覚えはない。

「へっ、へー、期待したでしょ。残念でした」

 そうだよ、期待した男心をどう処理してくれるんだよ。

 それにいつ、ブラ買ったんだよ。

「じゃ、行ってくるねー」

 そう言うと、上空に飛び立ってしまった。

 俺は誰もいない平原に、一人ぽっち残されたが、特にやることもないので、その場に体育座りで二人の帰りを待つことにする。


 そんなに時間は経っていない。後ろに凄い殺気を感じる。

 見なくても分かる。そこにとてつもない魔物がいる。

 見たい、が、見れない。見た瞬間、飛び掛かってくるのが分かるから。

「ご主人さまー!!」

 上から声がした。

「ファイヤーボール!!」

 横から飛んで来た黒い物体が俺を攫って、上空に浮かび上がる。ミュだ。

 上空から下を見ると、狼のようだが、猪牛の倍以上はある魔物がミュのファイヤーボールを浴びても、何事もなかったかのように立っている。

 あれはフェンリルだ。

 ギルドでも危険度レッド、遭遇したら、交戦せずに直ちに逃げるべき対象となっている。


「ミュ、逃げよう」

「向うもこちらを認識しました。恐らく追ってきます。フェンリルの速さだと逃げきれません。それに向うも魔法が使えます」

 フェンリルが、口からファイヤーボールを放ってきた。

 ミュが俺を抱えたまま、どうにか避ける。

 それに気づいたのか、エリスがやってきた。

「な、なに?フェンリルが何で、ここにいるの」

 その答えを持っている人は、ここに居ないだろう。

「ミュよ、どうやったら、逃げ切れる?」

「恐らく無理でしょう。戦うしかありません」

「今は昼だ。ミュの力も本来の力は出ないのだろう?エリスは戦えるのか?」

「私は無理、攻撃魔法はないわ、生活魔法ならどうにか」

 ここで生活魔法で何するんだよ。

「一つだけ方法があります。エリスさまの強化魔法で、私の魔法力と身体力を強化してください。できる限りMAXでお願いします」

「分かったわ、プレミアントマジック!、プレミアントストレンジ!」


「ご主人さまをお願い」

 俺はミュからエリスに渡された。

 ミュはすごいスピードで飛んで行く。亜高速になったような感じだ。

 そのまま剣で切り掛かるが、フェンリルの身体は受付けない。

 飛び回るミュに対して、フェンリルが口から火を噴くが、ミュのスピードが速いため、こちらも当たらない。

「エリス、ミュの魔力強化と身体強化はどれくらい持つ?」

「そうね、10分ぐらいかな」

 エリスは現代の事も知っているので、現代の感覚で話が通じる。

「ミュ、時間がない。どうにかしないと」

「エリス、フェンリルの弱点はないのか」

「顎の下が弱いんだけど、それでも普通の剣じゃ貫けないわ。私が聖魔法で剣を聖剣にすることが出来ればどうにかなるかも」

「ミュ、聞こえたか」

「聞こえましたが、どうやって聖剣にするのです?」

「私が直接剣を持てばいいわ、でも私の力じゃ貫けない。ミュと二人かがりで貫ければどうにかなるかも」

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