第32話 回復魔法
「作戦はこうだ、俺をフェンリルの前に置け、そうすると、フェンリルは俺に関心が向くハズだ。
その一瞬の隙を狙ってミュとエリスでフェンリルを突け」
「ご主人さまをそんな危険な目に合わせられません」
「そうよ、危険だわ」
「今のままじゃ他にやりようがない。俺は二人を信じるから」
「……」
「……」
「よし、いいな、じゃいくぞ、エリス、俺をフェンリルの前に置いて、直ぐにミュと合流するんだ」
ミュがフェンリルの気を引いている間にエリスが急降下し、俺をフェンリルの前に置いた。
フェンリルはいきなり現れた俺を見て「新しい敵」と思ったのか、一瞬の隙ができた。
斜め後ろからミュとエリスが、1本の剣を持って突っ込んでくる。
剣が白くなり、聖剣と化しているのが分かる。
フェンリルがミュとエリスに気が付いた。
まずい。
俺は、手元に転がっていた石を投げつける。
フェンリルの視線がこっちに流れたと思った瞬間、フェンリルの顎下から脳天にかけて白い聖剣が突き抜けた。
フェンリルに剣を突き刺したまま、ミュとエリスがこちらに飛んでくる。
フェンリルは口から火を噴こうと思ったのか、口の所に火が見えるが、その火は口から放たれる事なく、口の中で爆発した。
まるでスローモーションでも見るかのように、フェンリルが倒れていく。
恐る恐る近づいてみるが、動かない。どうやらやっつけたようだ。
フェンリルに触ってみると体毛は針金のようだ。
ん、針金?こっちに鉄はあるが、針金に加工する技術はない。
もしかしたら、使えるかもしれない。
「ミュ、これを持って帰りたいんだが、カイモノブクロに入るだろうか?」
「この大きさだと、ちょっと無理ですね」
「あっ、まかせて、大きいカモノブクロ持って来ているから」
そう言うと、エリスが、かなり大きなカイモノブクロを取り出し、あっさりとフェンリルをカイモノブクロに収納した。
「エリス、もう、エリスの事を駄女神って言うの止すよ」
「シンヤさまは私のこと、駄女神と思っていたのですか?酷いわ、エーン」
「ご主人さま、エリスさまは立派な女神さまです。駄女神なんかじゃありません」
「ミュ、ありがとう。私の事を分かってくれるのはミュだけだわ。ミュ、今夜はお預けにしてやりましょう。モンモンとした夜を過ごさせてやりましょう」
「いえ、それは可愛そうだと、思いま……、あっ」
身体強化と魔力強化の反動が来たみたいだ。ミュが崩れ落ちる。
「ミュ、大丈夫?」
「体力と魔力が枯渇して、力が出ません」
「待って、ヒール。どう?」
「だめです、生がないと」
「ミュ、俺の生を吸ってくれ」
「それはだめです。ご主人さま、私を抱いてください。ご主人さまの精をください」
何もない草原で青空の下、俺はミュを抱いた。アオカンというやつだ。
「ああ、気持ちいい」
それと同時に俺もミュに精を与えた。
「ヒール」
横で見ていたエリスが、回復魔法をかける。
エリスのヒールで俺も回復した。もしかして、〇〇アグラより凄いかもしれない。
ミュが落ち着いてきた。
「ミュ、大丈夫か?」
「はい、精を頂いたので良くなりました。エリスさまも回復魔法をありがとうございます」
すっくと立ちあがったミュは、何事もなかったように、
「さあ、行きましょう、場所は把握しました」
「あっ、ちょっと待って、服を着るから」
と、その瞬間、エリスのブラの紐がほどけて落ちた。
「キャー」
うん、青空の下でもピンクだった。
「どこ、見てんのよ!!」
今度、貝殻ブラでも送ろう。
3人で歩き始めると、後ろを歩いているミュとエリスから「ウフフ」「ホホホ」って笑い声が聞こえる。
「ミュとエリス、仲がいいな。何があったんだ」
「えっ、私たち元々仲はいいわよ、ねぇ、ミュ」
「ウフフ、そうですね、エリスさま」
ついこの間まで「退治」とか言ってなかったっけ。
まあ、仲良きことは良き事かな。
フェンリルと戦った場所からなだらかに登りが続き、最後にそれほど高くない小高い山の上に出た。
山と言うより、丘と言った方がいいかもしれない。
山の麓は草原なのにここだけ、大きな木が生えており、こんもりとした山林になっている。
木があるので、風除けにもなる。
林の中に建物を建てれば、おいそれとは見つかり難い。
「ご主人さま、ここなんですが、どうでしょうか?」
山から見下ろすと見渡す限り草原だ。
高いので見晴らしがいい。
「場所的にはいいと思うが、水とかあるだろうか」
水は生物が生きる上で欠かすことはできない、それをどうやって確保するかが問題だ。
「私が調べてみるわ、サーチ」
しばらく地面に手をかざしていたエリスだっだが、
「この地下に水脈があるわ。だからここだけ木が育っていたのよ」
しかし、井戸を掘るのは大変だ。
魔法でなんとかできるだろうか?
エリスに顔を向けると、
「井戸ねぇ、そうなると土魔法ね、私も簡単なものなら使えるけど、さすがに井戸までは無理だわ」
するとミュが、
「アロンカッチリアさんに頼んでみましょう。アロンカッチリアさんは土魔法の使い手なんです。建物もある程度造って貰えるかもしれません」
「となると善は急げ。早速、アロンカッチリアさんのところへ行こう」
俺たち3人は、アロンカッチリアさんのいる森に飛び立った。
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