第11話 ギルド
「そろそろお昼みたいだから、何か食べて行動を起こそうか」
「はい、それでは、食事を作りますね」
「ちょっと待って、俺が作るからたまにはミュは待ってて」
「いえ、それではご主人さまに悪いです」
「いいから、いいから」
さっさと服を着ると洗面所で顔を洗ってキッチンに立った。
ミュも同じように顔を洗ってキッチンに来た。
「ご主人さま、なにかすることはございますか?」
「じゃ、お湯を沸かしてスープを作ってくれ」
ミュはケトルに水を入れ、魔石コンロでお湯を沸かし始めた。
オリーブオイルがあったので、俺はフライパンにオリーブオイルを垂らし、切ったパンの切り口を下にして焼き始めた。
パンがきつね色になってきたところで、フライパンから取り出し、チーズを乗せる。
チーズが若干溶けてきて、美味しそうだ。
「さ、ミュ、冷めないうちに召し上がれ」
ミュは目を白黒、いやミュの目は紅いので、白紅させていたが、パンを齧って
「美味しい、こんな料理方法は知りませんでした、初体験です」
「初体験」という言葉に若干興奮してしまった俺はやはり脳がピンクなんだろうか。
「そう言ってくれると嬉しいよ、ミュの作ったスープも美味しいよ」
「いえ、私のスープはインスタントですから……」
この瞬間、地雷を踏んだことを確信した。
「い、いや、ミュのスープには、愛情が入っているから美味しいんだよ」
「悪魔には愛という言葉はありません」
地雷を踏んで、舞い上がった身体にパトリオットミサイルが命中するのが見えた。
「愛という言葉は無くても、変わりの言葉はあるだろう」
「はい、忠誠です。ご主人さまに忠誠を尽くすのが、最上の喜びです」
「では、このスープにはミュの忠誠が詰まっているのが分かる」
「ええっ、ほんとですか?どこに入っています?」
「ほら、こことここに見えないか?」
「私には分かりませんが……」
「そっか、転生者である俺には、ミュの忠誠がたくさん詰まっているのが見えるぞ」
「ご主人さま」
そう言うと、ミュは咲き誇らんばかりの笑顔を向けてくれた。
もう、愛だろうが、忠誠だろうがどっちでもいい、君が笑ってくれるなら僕は悪魔にも魂を売り渡す。って今更言うか。
「それじゃ。食事が済んだらどうしよう」
「昨日の戦利品をギルドで換金します。そのあと、今日は占いの日なので、夜は占い館を開きます」
「占いはミュがやるのか」
「そうです、結構当たると有名なんですよ」
ギルドに行って、昨日の猪牛を換金して貰う。
二頭分だったので、銀貨100枚だ。とりあえずこれだけあれば半年は生活できるということだったので、次のクエストは受けずに占いの店の方に行ってみる。
そこは大通りから少し入ったところにあった。店の規模としては大きくない。
店の扉の鍵を開けるといくつもの個室がある。
「こんなに個室があるのはどうして?」
「占いに来る人は、他の人と顔を合わせたくありません。そのための待合室なんです」
おおっ、なるほどね。
店の奥に、ちょっと大きな部屋があり、入ると真ん中にソフトボール大の水晶が置いてあった。こういうところは占い館みたいだ。
「ここで、占いをするんだな」
「そうです、終わったら、裏口から帰れるようになっています」
占いは大体5分から長くても10分で銅貨1枚とのこと。
大体客が15人から20人ぐらい来てくれるそうで、1晩に銀貨2枚ぐらいになるそうだ。
また、当たるとご祝儀もくれる人がいるそうで、そちらも月に銀貨4~5枚ぐらいにはなるそうだ。
深刻な占いは深夜の方が多いらしい。
それも占いというより、呪いとか別れ話とかそっちの方が多いらしい。
後ろめたい話って、やっぱそうなるのかね。
こうやってみると、ミュはなかなか多彩だ。
しかも散財しているふうにも見えないので、資産家なのかもしれない。
「ミュって、もしかしたら、お金持ちなのかい?」
「いえ、そんなことはないと思いますよ」
「一応、どれくらい持っているか聞いてもいいか?」
「えっ、はい大体金貨1300枚ぐらいですか」
ちょ、ちょっと待て、銀貨1枚が1万円としたら、金貨1枚は100万円じゃないか、金貨1000枚で10億円だ、金貨1300枚って、13億円ということか。すげー。
ここの物価価格から言えば、転生前の世界より物価は安いだろうから、たぶん13億円以上の価値があるんじゃないだろうか。
「それはすごいな、ミュはやっぱお金持ちだ」
「そんなことはないですよ、200年間の間に魔物を刈ってばかりいましたし、食費とかもかからなかったので、お金を使う必要もありませんでしたから。でも、これも全部ご主人さまのものです」
いやいや、ミュさん、そんなお金は貰えませんって。
でも、どこに隠してあるんだ。
「ミュ、家の中にはそんなお金は、なかったみたいだが」
「はい、別のカイモノブクロに入れてあります」
そうだよね、そんなの置いとけないよね。
「言ってくだされば、ご主人さまにお渡ししますが」
「いや、いい、ミュが持っていてくれ、俺はあまり高額なお金を持ったことがないから不安なんだ」
「分かりました、欲しい時は言ってくださいね。でも、人族は高額なお金で目の色が変わると言われてますが、ご主人さまは変わりませんね」
「いや、俺は怖いよ」
本音だ。高額なお金は人を変える。
そんな大金が現れた瞬間、ミュを見る目が変わるのが俺自身一番怖い。
知らなかった方が、良かったかもしれない。
ミュが、開店の準備をしている。
俺もシーハの葉を水で濡らして、ぞうきんに使って掃除をする。
「あっ、ご主人さま、そんなお手伝いをなさらなくても結構ですから」
「いや、俺も身体を動かさないと。デブになるのは嫌だろう」
「その時は、いつもよりたくさん精を貰いますので」
ミュさんや、俺はやっぱエサなのか?
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