COMIC SEED!を回顧する

 お久しぶりです。

 今回はいささか昔の話のうえに書店業界なのかよ、といったお話になってしまうかもしれません。まあ出版絡みのお話なのでたまにはこういうのもお許しくださればと……


 今でこそ電子書籍の普及が進んできておりWeb上で小説やマンガを読む、ということは当たり前になりつつあります。ですが、ほんの数年前まではまだ紙の雑誌・書籍が優位性を保っていました。

 

 かつて徳間さんの『コミックリュウ』がWebに移行する、というのがいささかセンセーショナルなニュースになりましたが、裏を返せばそれだけまだ紙の雑誌という連載形態が取られるのが理想だ、という価値観が根強かったということが言えると思います。

 

 わたしもかつては紙のマンガ誌を3種類定期購読しておりましたし、今でもなるべくなら紙で買うようにしています。

 

 なのでわたしも紙の本信仰は強いほう……だと最近までは思い込んでいたのですが、過去を思い返しているうち、案外Webや電子書籍で読んでたやんけ、なんて気づきがあったのですよね。


 なんとWebでマンガを読める、しかも完全無料で──そんな夢のようなコミック誌がゼロ年代の前半、2002年にはすでにあったのですよ。今回はそのコミック誌を振り返っていくお話です。



 『COMIC SEED!』というWebコミック誌だったのですけど、読んでたよ、という方はおられますでしょうか。

 

 おそらくあまりおられないのではないかな、と思います。

 なんせ運営会社だったぺんぎん書房さんは2005年に破産しているのですから(その後双葉社さんが運営を引き継ぎました)。そんな昔なのかよ、と軽く衝撃ですよ。



 特にぺんぎん書房さん時代の『~SEED!』をご存知の方はなかなかの通だと思います。当時の連載陣を今見直してみれば、今第一線でご活躍されておられる方もちらほらいらっしゃいます。

 オノ・ナツメさんとか、『Fate』シリーズや『まおゆう』のコミカライズを担当なさってる石田あきらさんとか。色々な作風が同居しているWeb誌だったと思います。


 特に好きだったのはきづきあきらさんの『ヨイコノミライ!』(のち『ヨイコノミライ』と改題)という、高校の漫画研究部を舞台にした、オタクたちの青春と暗部とを描いたマンガでした。


 初めてこれを読んだのはまだ私が10代の頃でしたかね?

 これを目的に『SEED!』を追いかけ続けました。

 とにかく更新されるのを心待ちにしてましたし、突然の版元破産によって連載が途中で止まってしまってしばらくやきもきする日々を送ったのを覚えています。

 

 のちに復刊し、大幅なエピソード追加で完結していただけたので本当にありがたかったです……。そのときは書店員として働きはじめたタイミングでしたかね?

 


 私はよく作者さんがTwitterにアップするショートストーリーマンガを見るのが好きでよくいいねリツイートしているのですが……

 Web上でマンガを見る、というスタイルを紙の書籍派であるはずの自分が特に違和感を覚えないのも、その頃からの下地があるからなのかもしれません。



 今や大手出版社さんですら「最新話無料! アプリで読める!」みたいなサービスを展開しているのがごくごく当たり前です。

 

 「今なら期間限定全話無料!」といったようなサービスにより『将太の寿司』などの昔の作品がネット上で大きなブームになったりすることもあります。

 そんな現在のコミックを取り巻く環境を見るにつけ『COMIC SEED!』は時代が早すぎたんだろうなあ……と思ってしまいますね。

 


 そんな当時のことを書いていくうちに、Webで連載を心待ちにするっていう純粋な気持ちを少し思い出しましたね。

 いや、今も追いかけている連載だってあるし毎週視聴しているアニメだってあるし動画や配信をチェックしているVTuberだっているんですけど……なんだかんだでWebやアプリを使っているとエンタメが「流れてくる」ので昔より受動的になってるなあと。

 もちろんベルトコンベアーのように自動で流れてくるのではなく、受動的だろうが情報が入ってくるようにクリエイター自身なりどなたかが能動的に更新をつぶやいてくださっているからなのですが……

 

 今後も連載を追いたくて仕方ないという作品に出会いたいし、また自分もそのようなものを出していけるようになりたいですね。

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