本は書店のものじゃない?(後半) 

 意外と見落とされるポイントなのですが、書店さんから返本された本というのは、再利用されます。そうでなければ返本などというシステムを運用する意味もありませんから、当たり前の話ですけれども。



 全国さまざまなところに書店さんがあり、お客様の要望も多種多様。


「うちでは売れなかったー」


というような本でも、ほかの書店さんだと


「ウッソだろお前。喉から手が出るほど欲しいんだよこっちは!」


というケースも起こり得るでしょう。



 そうなった時、ほかの書店さんに回されるのは、もしかしたら私が返品した本であるかもしれないのです。


 「返本」といえどもなるべくキレイな状態で返さなければならない、ということになるのは想像に難くないでしょう。


 となれば、なるべくキレイなものをお届けするためにカバーやシュリンクをかける、といった判断にもつながっていくわけです。



 本を買う時失敗したくない!

 だから事前に立ち読みして内容を確認したい!



 ……といったお気持ちはわかります。本当に。私もそうですから。


 ですが、「中古書店やネカフェだとほかの人が読んでるからイヤ、せっかく新品で買うならなるべくキレイなものが欲しい!」というお客さまもいらっしゃいます。


 すべてのお客さまが丁寧に立ち読みしてくださるならいいのですが、残念ながら雑に読み捨てなさる方も少なくありません。

 立ち読みされたあと本が売れる状態ではなくなった、というような事例は何度もありました。



 たとえば付録つきの雑誌、ありますよね。

 立ち読みを可能にしている店舗もありますし、私も雑誌担当の頃そうしてましたが……あれって要は「一冊ぶんの売上を完全に捨てる」という苦渋の決断のもとおこなっているのです。

 見本誌を事前にくださるところもありますが、すべてがそうではないので……


 本を売る側の本音からいたしますと、できるなら完全に売り切ってしまいたいし、残ったとしてもなるべくキレイな状態でお返ししたい、というのが本音です。


 一部出版社さんの間でコミックを立ち読み可能にするといったような試みがございますことは存じておりますが……特に配本が少なめで1冊の在庫が相対的に貴重である中小の書店さんですとツラいのではないかな……と個人的には感じます。

 

 人は知っているものを買うのです――という、ある方からの受け売りが思い起こされます。


 確かにお客さまがまだ見ぬよい本を知るために間口を広げること自体はとても素晴らしいですし、どこの書店さんだって本当はそうしたいはずなんですけれどね。

 シュリンクやカバーをかける手間ってなかなかバカになりませんし。


 理想と現実のせめぎ合いと言いますか、本来は気にしないでもいいことを気をしなければならないというこの現状、ままなりませんよね……



 この手の問題は突き詰めていくと


「気軽にポンポン買えるだけのお金がないのが悪い」


というところに尽きますので、もっともっと景気がよくなってみなさんがコンテンツにかけられるお金が増えていくのがいちばんいいのでしょうね。

 

 5,000兆円欲しい!

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