日笹賀日向編 その2
002
「神空君、今日は何か予定ある?」
と、突然昼休みに僕に話しかけてきたのは、水無月だった。
水無月はあの一件以来、よく一緒に話をするようになった。
今は以前のような人を遠ざける雰囲気もかなり無くなったが、
第一印象もあってか、あまり近寄ってくる人間はあまりいない。
気軽に話せる人間というのは今はまだ僕ぐらいらしい。
「特に無いけど、どうかしたのか?」
「別に大した事はないんだけれど……、ただもうすぐ夏休みだし……」
新しい水着でも買いに行きたいなと思って──と、水無月は言う。
そう、今はもう七月の半ば過ぎで、後、一週間もすれば夏休みなのだ。
夏休みといっても特に予定のない僕は、
クーラーの効いた部屋でアイスを食べながらゴロゴロするというのが強いて言えば予定だ。
海水浴や夏祭りなんて、友達がいない僕にとっては縁もゆかりもないのである。
しかし彼女は違った。夏休みを、夏らしく楽しみたいようだった。
僕がこんな事を言うのは非常に
彼女本人からも、誰か、友達の話を聞いた事は一度もない。
いや、僕が勝手に決めつけているだけで、
もしかしたら実はプールで一人、泳ぎの練習をするのかもしれない。もしかしたら水泳も昔から得意で、水泳部に入ってトップを狙うのかもしれない。
「あのさ、水泳部にでも入部するの?」
「違うわよ! 全然違う! 海に行きたいの!海水浴に!」
ここ数年、水着なんて着ていける状態じゃなかったから──と、水無月。
そうだった。
確かに水無月は今までとても水着なんて着れる訳がなかったのだ。
二ヶ月程前まで彼女には狐の尻尾が生えていた、という事を忘れていた訳ではなかったが、考えていなかった。
僕の部屋で今現在、共に暮らしている女悪魔シェリーの助けもあって、元の状態に戻ったのだった。
「ああ、そうか。なら、どこに買いに行くんだ?」
「駅前のショッピングモールなら色々売ってると思うから、一度家に帰ってから四時に待ち合わせでどう?」
「了解」
もし良かったら一緒に似合いそうなの探してね、と水無月は言い残して自分の席に戻った。
彼女の言葉に思わず僕は水無月の水着姿を想像してしまった。
服の上からでも分かるほどのスタイルがいい彼女。想像するだけでも、それはもうたまら……いや、なんでもない。
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