1年とちょっと前の話。
「……なんだこれ?なんだこの状況?どーしてこーなった?」
「何って……ゆうきくんがもう外に出なくてもいいように色々揃えたの‼︎これからは私と二人でここでずっと暮らすのよ‼︎」
「いやいや、流石にやりすぎだろ?ってかおかしいだろ?外に出なくてもいいようにって監禁かよ、ってかそもそもあんた誰だよ‼︎なんで僕の名前知ってるんだよ‼︎」
「そうよね、覚えてないよね、私の名前は今井さやか、ゆうきくんが3年の時にゆうきくんの高校に教育実習生として行ってたんだけど」
「……ああそういえばそんなのいた……ような……気もする」
「嬉しい‼︎思い出してくれたんだ‼︎」
「……いや別に思い出してない。ってか思い出すほどあんたと接点あった覚えがそもそも無い。」
「そうなのよ‼︎やっぱり思い出してくれたんだ‼︎あの時は本当に残念だったわ‼︎担当クラスも違ったし全く接点なかったのよ‼︎社会じゃなくて国語にしときゃ良かったとどれだけ後悔したことか……」
「しらねーよ」
「あなたに一目惚れして、あなたに少しでも近づこうとしたのに一言も話すことなく実習終わっちゃったし……あの後どれだけ悔やんだことか……」
「……しらねーよ」
「でもね?私その日から何かのスイッチが入って、いつかあなたをゲットできる日を夢見て、ひたすら努力したの‼︎それでその後のことも妄想してたら貯金はたまるし色んな知識が付くし、すごいことになっちゃった‼︎今の私のステ見たらビックリするよ?もうスキルずらずら……」
「……みたいだな」
「この部屋もゆうきくんと二人で暮らすために買ったし、このソファーもベッドもテーブルもイスも、テレビも本棚も、カーテンも壁紙も、食器や歯ブラシも何もかも、ゆうきくんが気に入ってくれたらいいな、ゆうきくんが使ってくれたら、ゆうきくんの長い人生の内の、わずかな時間でも役に立ってくれたら幸せだなって思って全部買ったの‼︎この部屋は私がゆうきくんと二人で暮らすために用意した愛の城なの‼︎だからゆうきくんは何も気にせず、ここにいてくれたらいいんだよ⁇」
「……怖いわ」
「ゆうきくんのいない毎日辛かったよ‼︎ゆうきくんが視界にいないだけで仕事が数倍苦しかったよ‼︎」
「……しらねーよ」
「でもね?ここまで頑張れたのは全て今この時のためだったと思うと私今すごい幸せ‼︎ゆうきくん救世主ぅ〜」
「……テンション高いわ」
「そーだ‼︎私あれから先生になったんだよ?今はあの学校で働いてるの‼︎凄いでしょ?」
「……へぇ〜」
「憧れの職業になれて、憧れの人との思い出の場所で働けるなんて……しかも今こうしてあなたといられる。幸せ」
「……そっか、よかった。じゃあ、帰るわ」
「ええ⁉︎なんでそうなるのよ⁉︎今までの話聞いてなかったの⁉︎あなたはこれからずっとここで暮らしていいんだよ?それで仕事から帰ってきた私にお帰りって言ってくれたらそれだけで私は幸せ‼︎次の日も頑張れるんだよ?」
「遠慮します。ほぼ何も知らない人に監禁されて、毎日そんな人の幸せのために僕の時間を消費する意味が見出せません。ので、これから用事もあるから失礼します、お元気で‼︎」
「ダメ‼︎用事って、同じゼミのあの子のとこ行く気でしょう?そんなのダメよ‼︎」
「違うわ‼︎今目の前にいる、思考回路がイカれたサイコ野郎から逃げたいだけだ‼︎」
「……わかった」
「……そうか、わかってくれたか、じゃ」
「そうよね?不安なんだよね?でも理解して欲しいの‼︎外には怖いことがいっぱいあるから、お姉さん心配なの‼︎」
「いやいやいや、今一番怖いのはあんただから‼︎」
「他にも欲しい物とかあったらなんでも言ってくれたらすぐによういするから‼︎怖いことがあったら守ってあげるよ‼︎だから出て行くなんて言わないで?ね?」
「今一番欲しいものは自由だ‼︎」
「この部屋の中なら自由にしていいから‼︎なんでも自由に使っていいし、もちろん私のことも……」
「そこで照れるな‼︎なんも嬉しく無いわ‼︎ってか離せ‼︎歩きにくい‼︎ってか歩けんわ‼︎」
「ごめんなさいごめんなさい‼︎こんな手で触っちゃって、でも嫌‼︎ここから出て行かないで‼︎今ゆうきくんを失ったら私……私ぃ‼︎」
「…………っ‼︎」(そこである思い出がゆうきの頭をよぎった‼︎)
「あああん‼︎ああああああん‼︎」
「泣くな泣くな‼︎……ったく、しゃあないな、わかったよ、少しだけ、いてやる」
「本当に⁉︎嬉しい‼︎ありがとう‼︎」
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