第33話 童貞 VS おっぱい星人
「よし!じゃぁ家族会議を始めるぞ。皆テーブルに座ってくれ」
俺の呼びかけに、キトとリナはテーブルに着いた。リミュはリナの胸にむしゃぶりついたまんまだ。
「それで、今日話し合うのは、キトがショウジキヤで働きたいと言い出した。そのことについて、皆で考えたいと思う。」
「まあいあいーともーう(わたしはいいとおもう)」
リナのおっぱいにむしゃぶりついたままのリミュはちゃんと喋れてない。俺はむーと唸り腕を組んで話し始めた。
「いや、判るんだよ。この国の考え方とかな。子が親の役に立ちたいと思う。というのは素晴らしい考え方だと思うんだよ。ただな。親は子の幸せを願う。これも本物の考え方だと思うんだよ。それでな。俺はキトの気持ちはとても嬉しいと思ったんだよ。でもな、それがキトの本当の幸せになるのか。俺はそれが心配なんだよ」
「ケンとうさんは、俺が間違えてるというの!?」
俺は父業を始めてまだ数ヶ月の新米だ。冷静に冷静に。
「キトはな、俺の本当の子供じゃないだろ?リミュだってそうだ。だけどな、そんなことは全くどうでも良いことだ。俺は前の世界で一つも幸せだと思ったことは無いんだ。でもな、今は幸せなんだよ。リミュとキトが居るからだ。だから俺は今の生活に本当に満足してるんだ。俺が心配しているのは、キトが本当の子供じゃないから、その気後れで俺の役に立とうと思ってるんじゃ無いか?って事だ。そう言う気持ちがあるんじゃないのか?」
「気後れってなぁに?」
言葉がわからず不安そうに聞き返すキト。リミュの面倒を健気にみているとはいえ、まだまだキトだって子供だ。こんな幼い子が、不安に駆られ俺にこんな申し出までしてきたことに、やり場のない憤りを感じた。キトのプライドを傷つけないよう、良いところに着地しないとならない。
「んー、自分が人に迷惑掛けてるとか、邪魔に思われてるとか心配することだな。キト、そういう気持ちはこれっぽっちもなかったか?正直に言ってみろ」
「え。えと、そ、そりゃぁさ、俺役に立ってないなぁって思うことが一杯あったからさ。心配だったよ」
「おまえなー。良ーく考えてみろ。お前が役に立ってないだって?俺がお前と最初に会った時、俺はなんて言った?」
「お前うちの子になるか?アニキとしてリミュの面倒をちゃんと見れるか?って言った」
「そうだろ?それがお前の一番大事な仕事だ。お前さ。考えてみろよ。リミュは良い子だけど、まだまだ小さい子だ。なのに物凄い強烈な魔法力がある。しかもリミュの性格考えろよ。誰かが見ていてやらないで大丈夫と思うか?」
キトは物凄い勢いで首を左右に振った。
「だろ?俺は今だって、ゴードと打ち合わせで町まで行ってきた。リミュを一人おいて行けたか?キトが居たから出掛けられたんだぞ?それ判るよな?」
「うん。リミュを1人にしたことを想像すると、とても恐ろしいことが起きそう」
「な?それと、それだけじゃないんだ。例えばさ、俺が食事を作ってるとさ、キトはいつの間にかテーブルに食器を並べたりするようになったよな?そしたら、リミュもポットに水を用意したりするようになった。だろ?」
うなずくキトに俺は続けた。
「キトは俺の調理を見て、食器を出す事をおぼえた。リミュはキトが手伝ってるのを見て水を用意しようと思った。ムア先生の授業みたいに、色々教えて貰って学ぶこともあるけれど、人は人の事をみて学んでいくことも沢山あるんだよ。だから、キトはいつの間にか、リミュに色々教えてることになるんだ。それが凄い大切なことなのは判るか?」
「うん。判る。あと、リミュを見ていると、凄い大事だと思ったから危ないことはしないようにリミュに説明したりして教えてるよ」
「そうだ!そういう所を俺も沢山見てるよ。だから、俺はリミュをキトに任せて、外に出掛けたりも出来るんだよ。お前は何もしてないように思ったかも知れないけれど、物凄く俺を助けてくれてるんだ.もうしばらくの間、リミュの面倒を見ていてくれると俺も凄い助かるんだよキト」
「判った。たしかに今俺がショウジキヤの手伝いを始めたら、1人になったリミュが何をするかわからない。考えるととても怖い。しばらくは今のままリミュの面倒をしっかり見るよ」
良いところに着地できたっぽい。俺はホッと息をついて、続けた。
「それと、今のうちにはな、シオコショーの売り上げが月に六千ギル入ってくる。だからお金の心配も全然必要ないんだよ。俺はお前の父親だ。だから、俺のわがままな気持ちを言うと、お前に危ないことはして欲しくない。お前が辛いような仕事はして欲しくない。そういうのを差し引いてもな、お前が本当に楽しく続けられる仕事を見つけて欲しいと思ってるよ。例えば、お前が医者になるとするだろ?で、誰かの命を救ったとする。そしたら、その人にもその人の家族にもとても喜ばれるよな?その時、キトは医者をやっていて良かったなぁ。とやりがいを感じるかも知れない。お前が頭領に弟子入りして、味噌や醤油の職人になるとするだろ?毎日それを食べた人から美味しかったよーって道で声を掛けられるかもしれない。そしたら、職人になってよかったなぁって思うだろ?俺はこの世界に来て始めて知ったんだけどさ。人に喜ばれるってのは、凄い嬉しく感じる事なんだよ。だから、俺はキトに人に喜ばれる仕事を探して貰いたいなあって思う。お前がさ、良く考えてショウジキヤの仕事がそれだって思ったら俺はキトがショウジキヤで働くことを反対はしないよ。リミュの面倒をしばらく見ながらゆっくり考えろ」
俺の話に判ったと応えたキト。俺は立ち上がるとキトの脇に手を入れてガッと抱き上げ抱きしめてやった。
「なぁキト。俺はあの時お前と会えて本当に良かったと思ってんだ。これからも色々と助けてくれよな。頼んだぞ」
と、言いながら頬ずりする俺に
「ケンとうちゃん!髭が!ちくちくする!ちくちくするよぉ!」
と、照れくさそうに笑うキトが可愛くて仕方がない俺だった。
なんか俺割りと父親してんじゃーん。と満更でもなかった俺の股間をいきなり鈍い衝撃が襲った。キトの首越しに下を見ると、リミュ渾身の右ストレートが、俺の○○○○を良い感じで振り抜いていた。
「お。ぐぉ。は」
言葉にならない声を上げながら、そっとキトを床に降ろすと、俺は床に突っ伏した。本日2度目です。
「リミュはな!そういうエコヒイキは良くないと思うのな!キトだけ可愛がるのはずるいのなー!」
股間の激痛がこめかみにまで響く。なぜか鼻水が出てきた。鼻声で
「だい。どぅびばでん」
と俺はリミュに謝罪し四つん這いのままリミュに頬ずりをしようとしたら、
「やだのな!きたないのな!鼻水はリミュ嫌いなのなー!」
理不尽に俺を押しのけるリミュだった。
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