第1章 選ばれし三人の伝導者
第1話 ようこそ僕の楽園へ
放課後。一つの机を三つの椅子で囲み、三人の高校生が互いを見つめあう。
「――よし、せーので行くぞ。
せーーのっ……!」
――バサッ。
机の上に三枚の後期試験成績表が広げられた。
「……おんおんおんおん?」
――360人中347位。いつも通り。毎日楽しく生きてます。
――いや、俺の順位は別にどうだっていい。
「……瑛太さん?まさかですが、アーユーナンバーワン?」
「そうですそうです、今回ついに、学年一位いただきましたー。ちょっと本気出しすぎたわ」
成績優秀・
「うわぁー、ほんっと瑛太って頭いいよねー。おめでとっ」
肩甲骨まで伸びたきれいな亜麻色の髪、整ったスタイル、そして何より子猫みたいにくりくりした瞳が特徴的な、超可愛いフェイス。
学年一番人気の女の子・
――称賛?いや待て。
「……ちょっと待て鈴菜、お前のにも8位って書いてあるぞ、ここ」
「えへへ、すごいっしょー。ブイッ!」
鈴菜は勢いよくピースサインを春馬の顔の前につきだした。
「……いや、ブイッだとなんか2位っぽいぞ」
鈴菜と春馬のやり取りの横で、瑛太はじっくりみんなの成績表を見比べていた。
「春馬、もうちょい勉強したら?」
――うわぁ、どストレートいただきましたぁ。
「そうだよそうだよっ、春馬ももうちょっとでいいから頑張ろうよっ」
――鈴菜ちゃん、そんな可愛い顔で俺を見ないでくれ……。なんか情けなくなってくるんだ……。
「いいんだよ別に。俺は努力とか忍耐とかそういう面倒なのはお断りしてんだ」
「うわっ、お前それ独身ニートがいうセリフやぞそれ」
――えぇ、まだバリバリの現役男子高生なんすけど……。
「そうだっ!じゃぁ、次の試験前は三人で一緒に勉強しようよ!いい?」
鈴菜の屈託のない明るさにはいつも感服する。
「お、ええな。バカがうつりそうやけど俺も協力してやるぞ」
――お、おぅ、さんきゅーな。
「……へいへい。じゃ暗くなってきたしそろそろ帰ろうぜ」
いたたまれなくなった春馬は自分の成績表をカバンに入れて席を立った。
「ちょ待って待って」
頭いいコンビが慌てて帰り支度を始める。
春馬、瑛太、鈴菜の三人は小学生のころから仲が良かった。家が近いため親同士も仲が良く、家族ぐるみで旅行に行ったこともある。高校二年目のクラスで念願の三人一緒のクラスになり、休み時間や放課後はいつもだらだら三人で過ごしていた。特に最近は、そのへんの幼馴染や親友といった間柄とはまた違った、まるで兄弟のような仲になっていた。
三人は座っていた椅子をもとの位置に戻し、教室の後ろのドアへ向かう。
「帰りにコンビニ寄っていい?」
「どうせ鈴菜がほしいの飲み物っしょ。自販機でいいやん」
春馬は後ろの二人の会話をよそに、ドアを開けようと手を伸ばす。
――ガチャガチャ。
――ん?なんだこれ?壊れた?
「なぁこのドア壊れてるわ、動かないんだけど」
春馬の呼びかけに瑛太が応じる。
「はいはい、ドアの開け方も春馬にとっては難しいもんな―」
「いいから早く」
――ガチャガチャ。
「あっれ、なんだマジで開かねぇじゃんこれ」
「ほらな、前のドアから出ようぜ」
春馬と瑛太が教室の前方のドアのほうに目をやると、鈴菜が青ざめていた。
「……ね、ねぇ、こっちのドアもあかないよ?というか、窓の外が――」
二人は急いでドア窓の外に視線を移す。
「…………は?」
――教室の窓の外には、一面にピンクや白の花畑が広がっていた。空は雲一つない快晴。
「な、何がどうなってんの……?」
鈴菜はドアの前にへたりと座り込んでしまった。
学年一位の天才少年も突然の景色に絶句している。
「これ、誰かの庭だったら相当すごいぞ」
おバカ春馬だけは全く危機感も何も感じてなかったが。
「――やぁみんな。こんにちは」
突然聞き覚えのない声がして教室の後ろへ目をやると、同い年くらいの白衣をまとった銀髪の少年が机の上に座って微笑んでいた。
「あ、初めましてのほうがよかったかな」
――この瞬間、春馬たちの異世界での物語が幕を開けた。
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