第2話

話し合いの結果、書類は放課後にやることになったため、一樹と紫苑は学校に行くことにした

学生なので当然ではあるのだが



「はぁ……紫苑、あんたホントにヘタレだな。悪い意味で見直したぜ」

「わ、悪い?というか、好きだってアピールするのもどうなのよ」

「玲於がどんな奴かはあんま見てないからわからんがな、男子は迫られる方が好きなのさ」

「体験談かしら?」

「馬鹿言え。俺は強引なのは嫌いだって知ってるだろうが」



登校しながら会話を続ける二人は、大通りに出たところで話題の人こと闇桜玲於を見つけた



「いるじゃねぇか。おーい、闇桜ぁ!」

「ちょ、一樹!」

「……ん?ああ、夜桜一樹か。僕に用か?」

「一人で寂しそうだったからよ、三人で学校行かねぇか?」

「なっ……だ、誰が生涯ボッチか!」

「そこまで言ってねぇよ!」



初対面とは思えないほどに言い合う二人は、放置されている紫苑をちら見した。そして、即目を逸らすことになる



「一樹、五月蝿いわよ?」

「なんかすまん」

「隣のクラスの……五葉紫苑か。なんで覚えてるんだ、僕は」



玲於が自分に呆れたかのように頭に手を当てる。一樹には何故玲於が紫苑を知っているのかがわかっているため、含み笑いしか出ない



「闇桜、自分に正直になれよ。お前実を言うと紫苑のことが──」

「うぉぉぉい!?なんで知ってるんだよ!?」

「何の話よ」



一樹が言う前に紫苑の耳を塞いだために、紫苑の目には一樹が何か言ったら玲於が慌てて顔が薄ら赤くなっただけにしか見えない



「まさか、玲於って好きな人いるの?」

「い、いるにはいるが…そういう五葉はいないのか?」

「い、いるわよ…?」



笑顔のままこの二人を見つめる一樹の目は、全く笑っていなかった

一樹の心中曰く、さっさとくっつけばいいのにこの馬鹿共



「あー、俺委員会があるから先に行くぜー(棒)」

「え?ちょ、一樹あなた今日風紀の仕事無いって──!」

「おい夜桜!待て、待つんだ夜桜ぁ!」



一樹はそんな叫びを無視して学校に向かってダッシュしていった

取り残された(?)紫苑と玲於は、しばらく立ち尽くしていたが、気を取り戻したかのように互いに顔を赤らめながら歩き始めた



「後で一樹は殺すわ…どんな手を使ってでも…!」

「奇遇だな…僕もそうしたいと思っていたところだ……!」



紫苑はふと玲於の顔に目線を向けた。同時に玲於も紫苑に目を向けたらしく、目が合ってしまう



「──っ!」

「──っ!」



そして二人は同時に目線を逸らす。こんなことを繰り返しながら学校に向けて歩いていた二人は、いつもより時間をかけて登校することが出来た







「……こいつは、さすがにキツいかな…っと!」



八城が持つ黒刀と、戦っている相手が持つサバイバルナイフがぶつかり合い、火花を散らす



「この怪異、受けたのは間違いか……。まぁ、一樹たちが無事ならいいかな…。遅い!」



相手に出来た隙を逃さず、八城が懐に入り込んで刀を振り上げる

が、突き出された指2本に挟まれて黒刀の動きが止まる



「なっ……!?」

「……君、本当に所長かい?実は末端所員とかじゃないのかね?」

「残念ながら、俺が所長だ……!」



黒髪蒼目の敵を見ながら八城は言い返すが、既に体力が切れかけている

しかし、敵は余裕を見せられるレベルには疲れていないらしい



「死神探偵社なんてこの程度かい?全く、とんだ無駄骨だよ」

聖絶ナクロス……!」

「……へぇ?」



敵に向けて突き出した八城の手の前に、半透明の結界が生じた

その結界は、敵のトドメの斬撃を弾き返すことに成功した



「これが有名な拒絶の力かな?別に俺には意味は無いがね」

「ほざけ…!俺の拒絶の力の前に、可能は存在しない!」

「なら、その不可能で構成された拒絶を滅殺したらどうなるかな?」



敵がそう言った直後、聖絶ナクロスが砕け散った

音も無く、敵が何もしてないにも関わらず。八城の防御は簡単に破られたのだ

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