死神探偵社にご依頼を
天津風煉河
第1話
現代において、死神というものは存在しないということになっている
インターネットが普及し、情報が飛び交うこの世界に、死神の情報だけは存在しない
そんな現代における死神は、とある地域で探偵稼業を営んでいた
「……暇」
「そう。なら書類手伝いなさいよ、一樹」
「それは五葉の仕事だと決めただろうが」
赤髪黒目の夜桜一樹の呟きに反応したのは、この探偵事務所の副所長である五葉紫苑
黒髪だが、紫色の目を持っている。紫苑はともかく、一樹は現代日本において、見た目の上でかなり目立つ
「いくらなんでもこの1ヶ月におきた事件をまとめるのは私だけじゃ無理よ。せめて半分はやりなさい」
「お前の彼氏にでも頼め」
バサッという音に一樹が振り返ると、紫苑が紙の束を取り落とし、顔を赤らめながら口をパクパクさせている
「なんだよ」
「な、なんで一樹が玲於のことを知ってるのよ…?」
「ほぅ?お前の彼氏は俺のクラスの玲於なのか」
「あ……」
紫苑は声にならない叫び声をあげて一樹から顔を背けた
「一樹、そういじめてやるなって」
「所長…一樹を何とかしなさいよ…」
紫苑がドアを開けながら一樹に喋りかけた白みが強い銀髪を持つ赤眼の少年に文句を言った
少年といっても、今高校二年生である一樹と同じ年齢だ
「無理に決まってるだろ。俺をなめるなよ?」
「「威張れるところじゃないから」」
紫苑と所長こと八城が声を揃えて反論するのを、どこ吹く風と受け流した一樹は、落ちている書類の中から1枚の紙を取り上げる
「これ、まだ解決してないやつだろ?何故処理しちまうんだ?」
「ああそれ?それはなんか、所長が担当するからいいって言うのよ。全部覚えたそうよ」
「マジかよ。んじゃ八城、事件現場は?」
「東京都にある廃墟。廃墟マニアが入ると、出てけという声が聞こえる。そして解体工事を行おうとすると、重機が壊れて動かなくなり、作業が停滞する」
「……マジで覚えてるのか。すげぇな」
八城は、部屋の隅にある掃除ロッカーから刀身から柄までが真っ黒な日本刀を取り出した
名は
「なんなら一樹も行く?俺は暇だからどっちでもいいけど」
「つまりは話し相手兼盾が欲しいと?断る」
「そうか。それじゃあ行ってくる。学校には体調不良とか言っといてくれ」
そう言いながら、黒刀を入れた鞘をベルトとズボンの隙間に入れると、ポケットから「転移」と書かれた細長い紙を取り出した
「書類は一樹もやっとけよー。んじゃあな」
「いってらっしゃい」
「は?ちょ待て……!」
一樹の叫びも虚しく、八城は紙を自身の前に投げた
すると紙が燃え上がり、転移するための魔法陣が展開する
其の中に走って入ると、八城は事務所から消えた
「クソ…!こんなことなら行っときゃよかった……!」
一樹の呟きは、紫苑に無視され、まだ来ていない他の所員には知られることすらなかった
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