教え導く事は、セイトウホウ以外にもあるのである
「じゃあ、これで私とサーハルは一連托生よ」
「私は、百譲っても“共犯”じゃなくって“道連れの被害者”を貫くから」
「まぁ、私をダシに免罪になるつもり?」
「人聞きが悪いなぁ…」
「でも、あってるで…」
………ドンッ
バニカさん、ヤバイよ。これすっごくヤバイじゃん。少し暗がりの中、早足でしかもちょっと余所見してた私達の斜め前から“イッテェじゃねぇか…”と大して痛くもない癖に大袈裟に突っかかって来そうな感じのお兄さんが私達(というより主にバニカに対してだけれど)ガンを飛ばして来てるんですけれど…えぇっと、此処でレールガンとかスプラッシュは私やバニカにも当たっちゃうし…となるとエスカパル?どこに?工房?固定フゲレがあるのって…
「あら、ごめんなさいね。前を見てなかったの」
「ばばばば!?バニカさぁん!?」
「ごめんなさいでよ、済むなら、憲兵いらねぇんだよ」
「そうかしら?」
「あぁ、それによ。シスター様と魔術師様がこんな所にいて良いのかよ?」
「どうなのかしらね?サーハル?」
「えぇ!?私に振るの?いや…m」
「ほら、大丈夫ですって」
いやいや。言ってないよ、バニカ。私言ってない…ほら相手側さんもちょっとイライラァって来てるっぽいよ?わぁ、本当人間ってイラっとしたら青筋って出るんだなー‥なんて現実逃避しちゃうよ?
「こっちが親切で忠告してやったのによ…」
「まぁ、ありがとう。てっきり私は“脅されて大金払わせるつもり”だと思ってたわ」
「…ッチ。わかってるな…」
「貴方の様な親切な方、ここに来て初めてだわ…どうか、貴方のお名前を伺っても?」
「……………は?」
「あら、“そんな、名乗るモノでもない”っと。あぁ!なんて無欲で慈悲深い紳士なのでしょう!」
「お、おぉう………」
え?ちょっと、相手側さん困ってない?と言うより引いてない?いや、サーハルさんも驚いてると言いますか何と言いますか…バニカさん、大丈夫?私、こんなバニカ知らないよぉ…ちょっと怖いよ…
「あぁ、でもどうかおひとつだけ、私の様な欲深い修道士に質問を!」
「な、なんだよ」
「…サーハル、アメジスト」
「…!アイヤイサー!『その命、冥府への手土産としろ!ダスヴィダー・アメジスト!』」
「……な、なんだ!地面に足がズブズブって!」
「あら?今の聴いてなかったの?」
「は?」
「なら、そこの魔術師さんに聞いてみたら?」
「えっ‥ちょっと、え?」
「手前ぇら俺になにしやがった!」
「ほら、サーハル。聞かれてるわよ」
「はぁ…『その命、冥府の手土産としろ』つまり、“
あーぁ。相手側さん、真っ青通り越して真っ白なんだけれど…って!シスター胸で十字を切っちゃるの!?しかも割と適当だったし…えぇ、何でなんで?どぉして歩き出してるの?ほら、相手側さん泣いてるよ!割とガチで泣いてるんだけれど!?
「ちょ、ちょっと、バニカさん?」
「なに?早く行くわよ。憲兵来たら厄介でしょ?」
「「…え?」」
「なによ。サーハル。何か問題でもあるの?」
「えぇ、彼そのまま?」
「…あの、自分このまま?」
「平気よ。十字切ってあげたでしょ?」
「いやいや。あれは、切った内に入るの?」
「ま、待ってくれ!おおお、俺はまだ死にたくねぇ!」
「あぁ、そうだった。オタクに質問なんだけれど」
「そうだ!質問返す前に死な………」
「オタクと連んでる憲兵さんの所属教えて頂戴?私が代わりによろしくしておいてあげるか、安心して悪魔でも閻魔でも神でも仏でも会っていらっしゃいな」
…バニカ、すごい。
何が凄いって、大分物騒な事を普段通りのトーンでサラッと言っちゃうし…何より聖職者らしからぬその笑顔…私、知ってる。この顔するのってオペラやミュージカルに出て来る
「ほら、行くわよ。またこんなクズ相手にしたいの?」
「ま、待ってよー!『我らを守護せし聖なる龍よ、我がサーハル・ヴァルシェブニクの名に置いてその力解き放て。エンタドール・ヴァルシェ』お兄さん、次は気をつけてよ。」
「ひひゃぁーーーーーー!ああ、悪魔と悪魔使いぃぃ。」
「失礼な!」
「…あら、逃しちゃうの?」
「いやいや、流石に…
「良いのよ、修道士と魔術師に喧嘩なんて売る輩の命なんて、k…」
「あぁーっと。待ってそれ以上はいけない。君のシスターって職がさらに危ういものになっちゃいそうだし…」
“あら、それはどうも”なんて真顔で言わないで欲しかったのは此処だけの話。
でも、そんな外道紛いなバニカも大好きなサーハルさんなのでした!
【教え導く事は、セイトウホウ以外にもあるのである】
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