種族性別年齢越えて繋いだモノは?

ーー駆けるのです。


 普段、平地や小さな段差でも滑って転けてしまいそうなボクだけれど…ここはボクのニワ。どんなに泥濘んだ所だって、どんなに大木が倒れその根が行く手を阻んでも。ボクは跳んで跨いで駆けるのです。きっと、ココなら誰よりも早く進んで行けるのです。


 慌てず急いで溢さずです!今日は頼まれたモノを沢山持って、親友の屋敷に届けなきゃなのです。

親友は「エルフの葡萄酒はこの世で一番美味しい」と優しくそして照れくさそうに笑うのです。それをみるとボクも嬉しいのです!大人や長老は彼を毛嫌いしてるし街の人達も怖がってます。でも、彼は本当はとっても優しくてボクの様に照れ屋さんで怖がりさんなだけなのです。



 「着いたのです…」

 マムから借りたちょっと大きな籠からは、彼が褒めていたエルフの葡萄酒、街で評判のちょっとだけ硬いバケット、それとドレ族から頂いたお肉の燻製も全部溢れず倒れず持ってこれたのです!


 森の奥の奥…正に最奥地。日光はあまり入らず、年中涼しい此処がボクの親友の屋敷なのです。

今日の光の差し具合だと…たぶん、親友はまだまだおやすみ中です。大きな茨の囲む門をくぐり綺麗に剪定されたお庭の横を通って…少し歩いた所にある、大きな大きな扉の前に来たのです。




                 コンコンコン…



 「こんばんはなのですー」

…返事がないのです。やっぱり、おやすみ中だったみたいです。

「カノンさーん。ロンドさーん。マーチさーん。籠に葡萄酒入れて置いておくのですー」

親友のお手伝いさん…えっとおーとすこあさん?達に聞こえる様に大きな声を出して帰るのです。本当は、親友に会いたかったのですが、おやすみ中は仕方ないのです。まだ彼が起きるのにはずっとずっと早いのです。

 「また、遊びにきまーすです!お邪魔しました。」ペコリと頭を下げて元来た道を戻ろうと大きな扉に背を向けた時です。






               ガチャ…ガガガガガ…





 後ろから古い木製の何かが動く音がするのです。



 「…あぁ。すまない。我が親友。唯一無二の小さく優しい隣人よ。待たせてしまったね」

「大丈夫なのです!あっ伯爵様。こんばんはなのです!」

「あぁ、こんばんは。サウレ君」


 彼がボクの友達で親友のマウントガーネット伯爵なのです!吸血鬼さんなのです。








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