第106話 他国からの訪問者(3)

 だから王になれなかった健太ではあるのだが。


 このように彼を労う台詞は多々飛び──。注がれるのだよ。


 ……ッて? 一体彼の? 何の労働に対して、労いの台詞が飛んでいるのか? 遠目から彼の様子を凝視している者や、この物語を読む者達には、理解ができないと思うから?


 簡易的ではあるのだが?


 我等が少々説明をすることにする。


 う~ん、実はね~?


 王になれなかった健太がしている労働は?


 家の家事……。


 そう~? 自身が一つ屋根の下で、生活を共にしている六人のオーク、エルフ、ハーフの美女達の汚れ物……。衣服や甲冑を、プラウム御姉さまが夜なべをして編んでくれた~。竹細工の大籠に入れ──。持ち歩いているのだよ。


 と、いうことは?


 お婆さんは川に洗濯~ではなく?


 健太は山に芝刈りにいくわけでもなく~。今回は川へと洗濯をしにいくみたいだよ~。


 それも~? 急ぎ足でね~。


 その辺りは、我等も未だよくはわからないけれど?


 とにかく健太は、苦笑いをしながら。


「あっ、ありがとう。御座います~」と。


 御老体達へとお礼を告げると急ぎ足──。慌ててふためきながら、この場を去ろうと試みるのだよ。


 まるで何かから逃走を謀るようにね~?


 まあ、その辺りは我等も、健太が何から逃走を謀っているのかまでは未だ理解ができていない……。


 と、言いたいところだが?


 直ぐに理解ができたよ。


 だって~? 大きな竹細工の籠を抱え──。この場から逃走をするかの如く。急ぎ足で進む健太へと──。オークのうら若き女性達が多々詰め寄り。


「健ちゃん~。うちのもお願いね~」


「あっ、あんた~。うちの服も洗ってよ~。それも~? 丁寧に~」


「殿~! 私の服もお願い~」


「あっ! 私も~。私も~。御方さま~。お願い~」


「家んちは~。子供の分迄お願いね~。あんた~」


 まあ、こんな黄色い声色と台詞を多々漏らしながら。自分達の汚れた衣服……。未亡人などは?


 自分達の幼い子供達の汚れたおしめや衣服まで竹籠に入れる始末なのだよ。


 だから健太は、この場で絶叫──。


「みなさん~、頼むから~。僕を許してください~。こんな沢山の洗濯物を終わらせようとしたら~。僕は他の家事ができません~。だから許してください~。お願いします~」と。


 健太は絶叫をあげながら。自身へと詰め寄り。竹籠へと汚れた衣服を放り込んでくる女性達へと嘆願──。自分を苛めないでくれと願うのだよ。


 う~ん、でもね~?


 健太に詰め寄るオークの女性達は。愛する彼のことを別に侮り、苛めているつもりは毛頭ない。


 これはあくまでも彼女達の女性としてのアピール……。コミニケェショーンと言う奴だから。


 彼女達は、いくら健太の絶叫が国中に響き渡ろうが気もしないで。自身の汚れた衣服を次から次へと健太の持つ竹細工の大籠の中に、競うように放り込むのだよ。


 まあ、中にはね?


 今自身が履いている物を慌てて脱ぎ──。竹籠の中に放り込む者までいるぐらい。大騒ぎにいつもなっているのだよ。


 まあ、そんな最中に、物々しい容姿をした男達に、台座のついた籠を担がせ、乗る──。煌びやかなアクセサリーを身に纏う高貴な容姿のオークの女性が、アイカ集落へと来訪──。


 集落の入り口付近で、女性達と大騒動──。騒いでいる健太達のことを立ち止まり『ジッ』と見詰めて観察をしているのだよ。


 それも~? 長い時間(とき)をね~。沈黙したまま、煌びやか、優艶な容姿の女性は、『ジッ』と見詰め観察をしている。


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