第71話 女王アイカへの不信と不満……(12)

 だって~? アイカとシルフィーが不仲になれば、自分自身が王になった時に困るのは、ウォン自身だからね。彼は女王アイカ……だけではないか~?


 自身の魔力を神々しく放出──。愛する健太の唇や舌を貪りながら、魔力を注入している最中……だけではないか~?


 この国の丞相であるシルフィー自身もね~?


 だって~? 愛する健太の為にと、蘇生魔法『リザレクション』を使用している最中の彼女でも。自身を憎悪のある目で見詰める紅の瞳には気がつく。


 と、なれば? シルフィー自身も?


 自分に対して憎悪のある紅の瞳へと臆することもなく睨み返すのだよ。


 それも未だ? 健太の唇や舌を貪りながら接吻をしている最中なのに、構わず睨み返す。シルフィー自身が持つ碧眼の瞳でね~。


 彼女の大事な宝物の命を安易に奪おうとした憎き女王に対して憎悪を湧かす……。


『この度の件は二度と忘れない。必ず貴様に復讐をしてやるからな……。だから首を洗って待っていろ。女王アイカ……』と、でも言いたい様子でいるから。


 ウォン自身も大変に困っているのだよ。


 う~ん、でもね~?


 女王アイカもウォンも忘れている事がある?


 今この場にいるのは、女王アイカと健太、シルフィーとウォンの四人だけではないのだよ~。


 だって~? 我等が先程も説明した通りで、健太と戦士シンとの相撲……。


 というよりも?


 殺戮ショーを観戦していた、この集落の者達は、戦士シンも含めて女王アイカへと、『情のかけらもない。酷い女性……』だと不信感を湧かす……だけではない。


 女王アイカの右翼の翼である、この集落の酋長でもあり。健太の妻となる、戦姫エリエ自身も。夫が実の弟と争えば、こうなることは、安易に予測ができた筈の姉に対して、やはり不信感を募らせるのだよ。


(私の大事なひとが、こんな悲惨な状態になると分かっていて、シンと争わせた姉さんなんて大嫌い……。私がこのひとのことを気に入っていることは、姉さんだって気がついている筈なのに……。もう~、当分姉さんの顔など見たくはない……)


 猛将エリエは、自身の心の中で、外面とは裏腹に。姉に対して不信感を募らせながら。乙女らしく泣いているのだよ。

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