第70話 女王アイカへの不信と不満……(11)

 と、いうよりも?


 女王アイカの父である前王が、冥界へと誘われた現場に、ウォン自身もいたのだから、十分承知なのだ。


 だからウォンは、女王アイカに慌てふためきながら声をかける。


 と、同時に。彼女の顔色がまた変わっていることに気がつくのだよ。


 まあ、皆も知っての通りで、先程迄の女王アイカは、この集落の者達の騒めき……。女王である自分への不信感と、夫になる予定の健太の瀕死状態……。もう既に、冥界へと誘われている可能性がある健太の様子を凝視しては、自身の顔色を変えながら動揺をしていたのだが。


 シルフィーが自身の父の時には、『私には使用できない。無理です……』と、告げた筈の蘇生魔法……『リザレクション』を健太に使用したことに対して、安堵する訳ではなく。集落の者達の目など気にしないで、憎悪を湧かし、憎しみを込めた表情へと移り変わったことに気がつき。ウォン自身も動揺を始めるのだよ。


 ……ッて?


 皆は何故彼が? 女王アイカが丞相であるシルフィーに対して憎悪を湧かし不仲になることに対して、快く思っていない……。


 と、いうよりも? 不仲になってもらっては困るのだよ。


 だって彼は、次期王になる予定の健太を、あわよくば、今回のような事故死若しくは? 健太とアイカが不仲になり。彼女が健太をこの国から追放をするようになる為にと『離反の策』を弄した訳であり。


 女王アイカと丞相のシルフィーを不仲にするために策を弄した訳ではない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る