第63話 女王アイカの不信と不満……(4)

 また漏れ始めると二人のツンと尖り、上を向く笹耳にも、老若男女の『ザワザワ』と、した騒めきが聞こえてくるのだ。


 まあ、ここで言う二人の者はと言うと。言わずと知れた邪な策を練り女王を嵌めたウォンと。その下策にまんまと嵌った女王アイカなのだが。


 この場にいる民の健太への同情の台詞が二人の耳に入ったと同時に、自身の顔色を変えるのだ。


 だってオークと呼ばれる種族は基本争いを好む、荒々しい傾向があるのだ。


 それも? 男女問わずにね~。


 だから女王アイカ自身も、次期王になる予定の健太と、自身の一族の戦士の一人であるシンとの相撲の試合をさせ、一方的に争いが進んでいる殺戮ショーの試合を見ても。健太に対して、慈愛や慈悲……。悲痛な気持ちなど、アイカ自身は募らせることはない。


 う~ん、それどころか?


 自身の夫になる予定である健太の、父や母への助けを呼びながら泣く様子……。


 まるで幼児のような不甲斐無い様子を傍から見て──。


 女王アイカは『ハァ~』と、溜息……。


 そして? 彼女は自身の心の中で、健太への嫌悪感を湧かし募らせて、弱者を見る冷たい目で見詰めていたのだ。


 健太が余りに武力に長けていないから。


 特に女王アイカは、異性の好みを智よりも武に重きをおいている傾向がる。


 だから健太とシンとの相撲も、最初は歓喜をあげて、観戦をしていたのだ。

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