第64話 女王アイカの不信と不満……(5)

 でも? この物語を読んでいた者達が知っての通りで健太は、産まれて初めての争いをおこなったのだ。


 それも? 武に長けている、アイカ一族の戦士の一人であるシンとね。産まれて初めての争いだ。


 だから女王アイカの面前で、自身の漢らしい良いところを見せることなどまず出来る訳などない。


 健太自身も産まれて初めての他人との争いだから、肉食動物に襲われる草食動物のように、泣き叫びながら逃げ纏うぐらいしかできない。


 それに、戦士シンに掴まれば健太は、今のような悲惨で悲痛な状態……。


 戦士シンの握り拳が一方的に、健太の顔の至る所に入っている状態なのだ。


 だから二人の試合を観戦していた我等や、民衆……。ウルハやエリエにしても。自身の目を閉じて、両手で覆いたくなる程の悲惨な状態へと移り変わっている。


 それこそ? 女王アイカに?


『健太は息をしているのか?』と、訊ねたくなる衝動駆られるほど。今の健太は悲惨な状態なのだ。


 だから自然と老若男女の民に女王アイカへの不信感が湧き──。不満と疑問の台詞が多々漏れてくる。


 ……だけではないね~?


「女王アイカ~! いい加減にこの殺戮ショーをやめさせろ~! 女王は本当に王を殺す気なのか~?」と。


 女王アイカへと怒号──!


 彼女を荒々しく諫める女性の声──!

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