第56話 アイカの落胆(その二)(32)

 と、我等や、この物語を読む者達……。


 特に日本にいる者達は、不思議に思うかも知れない?


 だって日本の『相撲』は、『押して、突っ張り、投げ飛ばす』の三拍子のはずなのに。


 先程から健太は、戦士シンに殴る、蹴る、投げもあれば、羽交い締めに間接技を一方的に受けている状態なのだが。


 これは日本の『相撲』と、いうよりも? プロレスやレスリングに近い気がするのだが?


 と、皆は思うはずだ!


 まあ、我等や皆が思う通りで、このオークの相撲と言うのは、オリンピックのレスリングに近い感じだと思ってくれたらいい。


 だから、武に長けている女王アイカの一族の一人である戦士シンからの攻撃は、先程も告げた通りで。投げに、押し、張り手の三拍子だけではなく。握り拳に蹴り──。関節、寝技もあるのだよ。


 また、そんな技を、自身の口から絶叫上げ──。受けている健太の、象牙色した肢体は、みるみるうちに、紫や緑色の痣だらけの身体……だけではなく。彼の顔の容姿は、みるみるのうちに代わり……。元の顔の容姿がわからないほど、色を変え、腫れ始めるのだよ。


 う~ん、それでも?


 女王アイカは、『フン!』と、鼻息荒く。先程から情けない様子で、許しを乞う健太のことを軽蔑した瞳で見詰め──。蔑み、侮るのだよ。


 まさに? もと自身の彼氏で婚約者でもあったウォンの思惑通りの策……。離反の策に落ちている状態なのだよ。


 だから健太のことを(ハァ~。本当に情けない奴目が~)と、自身の心の中で思いながら腕を組み──、シンと健太の相撲試合をとめることもしないで。次期王になる筈の健太のことを嘲笑いしながら見詰めるのだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る