第55話 アイカの落胆(その二)(31)

 彼女のことを信頼……。自身の知らない世界へと。自分の意思とは関係なく強制の召喚をされた少年の心の拠り所と安堵……。自分を絶対に他者から庇護してもらえると思っていた。将来を誓いあった女性に裏切られた少年健太……。


 今の女王アイカの台詞を聞き顔色変える。


 ……どころではないようだね?


 彼は呆然……。心を病んだ者のように沈黙……。


 女王アイカの艶やかな足を、自身の両手で抱きつき、しがみついて──。女性のように男性へとしな垂れかかり、泣き叫ぶ行為をやめて沈黙……。


 ウォンに自身の髪を鷲掴みにされ、円の中央へと強引に引きずられながら『ズルズル』と移動をしていくのだ。


〈ドン~!〉


 こんな音を立てながら、中央へと投げ捨てられた健太──。


 この後は、この物語を読む者達の想像通りで、健太への手加減無しの殺戮ショーが始める。


 だから円を描くように観戦をしている者達……。


 ウォンを含め、オークの老若男女は子供に至る迄歓喜──!


 ましてや? オークの戦士シンの相手が次期王……だけではなく。この領地の主の婿にもなるのだから。野次馬の数が増える一方……。


 そんな最中を健太は、「うぎゃ、あああ~」とか?


「ぎゃ、あああ~」


「助けてぇえええ~」


「痛い~。痛いよ~。お母さん~。お父さん~。助けてお願いだからぁああ~」


「痛い~! 痛い~! うぎゃ、あああ~」と。


 こんな感じで、戦士シンから繰り出される。拳と足蹴り。投げ技──。羽交い締めや関節技を受ける度に無抵抗のまま絶叫をあげるのだ。



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