第20話 初めての経験……(5)
だからウォンは、ニヤニヤと、自身の顔を緩める行為をやめ。眉を細め。
その後は、己の顔を引き攣らせ、強張らし。目を細め、険しい顔へと、多彩に変化させながら女王アイカ……。自身の元カノ、婚約者の泣くき叫ぶ様子を面白くない顔を、ウォンはしながら凝視していると。
「どきなさい。女王アイカ」と。
自身の夫の屍、骸の横で泣き叫び、しな垂れ、崩れている女王アイカの背後から、怒気を含んだ荒々しい女性の声が聞こえてきたのだ。
だから女王アイカは、泣き崩れる様子をやめて、自身の目を大きく開けながら。ゆるりと後方を確認する。していくのだ。
『……一体誰? この私。此の国の女王アイカ相手に、怒気を含んだ声音で罵声を放つ者は、一体誰? 』と。
女王アイカは思う、ことはない。
泣いている自分に、夫、健太の横から直ぐに退くようにと荒々しく告げてきた女性が誰。何者かは、声を聞けば女王アイカはわかるし。周で嗚咽や泣き叫んでいる。沈黙。冥福。祈りを捧げ、お別れを告げている者達にも皆、声の主は誰なのか、わかるから。あちらこちら。エリエにウルハ。相変わらず険しい顔。この場の雰囲気が面白くない顔をしているウォンも含めて、エリエ集落の者達は。
「「「シルフィーさん」」」
「「「シルフィーさま」」」
「「「女神さま」」」
「シルフィー」と。
ウォンが言葉を漏らせば、最後に。
「お母様。御免なさい」と。
女王アイカが此の国の丞相であり。此の国の勝利を今迄支えてきた、勝利。戦勝。戦女神である。美と豊穣、時の女神シルフィーへと謝罪をおこなったのだが。
彼女は、「…………」と、無視をしながら。
自身の可愛い夫。生前の可愛い面影が無い程、顔の形が変形、腫らし。手と足も違う方向。明後日の方へと向いている夫の側に近寄ると、そのまま彼を抱き締め、ハグ──。
そのまま抱き締め起こし。「あなたいきましょう」と、(ふふっ)と、微笑みながら。此の国の男王健太の屍を抱き締め、何処ともなく連れ去り。
その場からシルフィーは健太。自身の夫を抱いたまま、「ふふっ」と、薄ら笑いを終えると今度は、「うふっ、わっ、はははっ」と、気が触れたように高笑いをしながらこの場。雰囲気の中から消えていなくなったのだ。
(私(わたくし)の主。夫のことを侮り。蔑む。この国など必ず私(わたくし)が滅ぼしてやる。やるからな)と。
自身んの脳裏で、呪いの呪文を唱えながら消えていなくなったのだ。
◇◇◇
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