第17話 初めての経験……(2)

まあ、要するに嫉妬心狂った女王アイカが、冷静に物事を考える。思案する。考慮することができなくなり。あっさりと元彼、婚約者。漢王だったかも知れない漢の、単純な離反の計、策にかかり。自身の夫、王である人種のか弱い少年を他人の目が注目する中で。女王アイカに逆らえば、このような酷い所業が待っている。おこなわれるのだと言わんばかりな、見せしめと。


人種の少年とオーク種族の少年が、拳と拳を交えて争えばどうなるのか? と、沢山の観客、観戦者がいる中で、自身の主、夫を見世物にしたのだ。


女王アイカは今後彼のことを尊み、尽くし。寄り添い支えなければいかない立場の筈なのに。

彼女は自身の男王。人種の少年を。争う前から結果がわかっている筈。自身の大事な物だとわかっている筈。宝物でもある筈の少年を獣のように扱う失態を犯してしまう。


だから最初は、エリエ集落、町の者達も老若男女問わず、健太とシンの争い。格闘相撲大会の練習を一目見よう。観戦しようと。物珍しそうに練習場へと集まり。ワイワイと騒めきながら観戦、応援──。


「王様がんばれぇえええっ!」


「王子さまも負けるなぁあああっ!」


「シンも負けるなぁあああっ!」


「戦妃エリエの弟なのだから負けるなぁあああっ! シンー!」


「二人とも頑張れよぉおおおっ!」と。


格闘相撲大会の練習が始まる前までは、自身の顔色を変え、涙を一杯溜め、流しながら本気で震えて怯えている。此の国の男王健太と、一騎当千の猛者が多々いる戦闘種族であるオークの漢戦士らしい威風堂々とした様子。容姿でいるシンへの二人へと。皆が鼓舞! 声援! 歓喜しながら送っていた。


でも、いざ試合が始まると直ぐにこの通り。健太の悲痛、悲惨な様子……。


そう。健太の対戦相手であるシンの一方的な試合運びになるから。まるで殺戮ショーのような試合の流れが淡々とおこなわれている状態で、時だけ流れ過ぎていくから。自然と歓喜、歓声の騒めき。喧騒も収まり。静まり返ってしまうのだ。


だから健太の絶叫、悲痛な叫びと。シンに対しての許しを乞う謝罪と命乞いが。健太の断末魔のようにエリエ集落内に響き渡っていくのみなのだ。





 



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