第16話 初めての経験……(1)
〈ガン!〉
〈ガツン!〉と。
物々しく、荒々しく、刹那な音──。
何かが、誰かが、何かを、誰かを強打──。自身の持つ握り拳。鉄拳で殴る。強打をする鈍い音──。骨にヒビが、陥没が、折れたような鈍い音が聞こえる。聞こえてきたと思うと。
「うぎゃ、あああっ! い、痛い!痛いよぉ、おおおっ! 誰かぁあああっ! 誰か助けてよぉ、おおおっ! お願いだからぁあああっ!」と。
此の国の男王健太の絶叫が、エリエ集落内に仮設で作られた闘技場。格闘相撲大会の練習場。鍛錬場の中から、彼の絶叫と共に放たれ周り。喧騒。騒めきの輪の中に響き渡るのだ。
「許して、許してください。お願いします。お願いしますから。僕にこれ以上酷いことをしないでください。お願いします……」と。
健太の悲痛な声色での、力の無い、弱々しい嘆願と、命乞い。
そう。健太の対戦者であるシンへの嘆願と命乞い、だけではないかも知れないね?
彼、健太が許しと命乞いをしている相手はね。多分、此の国の女王。健太の妃である女王アイカへの願望──。直ちに自分とシンとの対戦、練習試合を止めて欲しいとの嘆願と命乞いも含まれているような気がするのだ。
遠目から健太の悲惨な様子……。シンに握り拳で、己の可愛く柔らかい頬を強打され、数メートルも彼の小さくて華奢な肢体。女の子。少女のような肢体が後方へと吹き飛び──。
その後は、そのまま、自身の顔を押さえながら、陸地に上げられた生きた魚のように悶え、転がり回りながら喚き。絶叫。言葉を放ち。痛みに耐え忍んでいる悲惨な彼の様子を見て確認をすれば、そんな風に見える。思えるのだがと。
今の健太の状況と様子を説明したところで。皆は一体何が起きた。起きたのだと思うに違いないと、思うから。今から説明をしていく。
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