第15話 男王になれなかった漢の邪な策(7)

「健太の相手に、ウォンではちと荷が重い。それにウォンに対して失礼にもなるし。私自身も悪いと思う……」と。

女王アイカは、独り言のように言葉を漏らせば。

只今、この場にいる者達に歓喜の声をあげながら観戦をされていた二人……。


そう、格闘相撲の練習をしていた二人の片割れである。エリエの弟であるシンへと視線を変えて注目。女王が注目をすれば。


「シン~! お前が健太の相手をしてやれ。いいな、シン。分かったか?」と。


女王アイカは、何食わぬ顔でシンへと下知をくだしたのだ。


と、なれば?


健太の顔色が一気に青ざめ、血の気が引いてしまうのだ。


そう。別に女王アイカは、自身の夫である健太に格闘相撲の試合。練習をさせない訳ではなく。只自身の主の相手がウォンだと流石に荷が重いのと。


彼に、ウォンに。オーク種族最強の漢戦士ウォンに悪い。悪いから。遠慮して、自身の身内。妹のエリエの弟であるシンへと下知をくだしたのだ。彼ならば、女王アイカとは父も母も違うが。同じ父を持つ、エリエの弟だから。女王アイカの弟と言っても過言ではない相手だから気兼ねすることなく、他種族の夫、健太の、相撲の相手を嘆願できるから。


女王アイカはシンへと下知をくだしたのだ。


それに彼女、女王アイカは。以前から健太の武力がどれほどあるものかに大変興味があったのだ。


彼の、健太の、ひ弱、貧弱、貧相な、胸板も無くペッタン子。あばら骨、肋骨が見える軟弱容姿を見ればわかると思うのに。それでも女王アイカは、自身の夫、王健太に対して少なからずは期待をしている状態だから。本当に困った者。女性(おひと)なのだ。此の国の緑の肌をしたアマゾネスの女王さまは……。



まあ、そう言う訳、理由もあるから女王アイカは、自身の夫健太に格闘相撲を取らせ。闘わせ。争う。


そう。健太がシンと激しく肉弾戦をおこなう格好の良い所を魅入ってみたいのだ。


特に健太は相撲が、自身の故郷の国技だと得意げに話したから。彼の武に期待をかなり寄せてはいる状態なのだ。


だから一度終わったと思われいた健太の、格闘相撲の練習の話しなのだが。


それをまた女王アイカが掘り起こして、強引に話しを進めだしたのものだから。当事者の健太は、また自身の顔色を変えてしまう。


「うそでしょう? アイカさん? ぼ、僕のこの容姿を見てください! 僕のこのひ弱な容姿では、相撲なんてとれるはずがない。ないからぁ~。格闘相撲の練習試合をおこなうのは許してください。おねがいします」


健太は女王アイカに嘆願……。


それも己の顔色を完全に青ざめ、両目には涙を溜め、大変に悲しそう。気弱な声音で女々しく、自身の妻、女王アイカへと嘆願──。命乞い。その場に正座! 土下座! 遜り。泣き声色で妻へと嘆願。女々しく命乞いを始めだしていまう始末なのだ。


と、なれば? 女王アイカは、女々しい主、夫、健太に対して不機嫌極まりない態度になってしまうのだ。


だから此の国の漢王になれなかった漢ウォンの、健太を陥れる邪な策は、成功をしたと言うことになる。




◇◇◇◇


第48話

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