第14話 男王になれなかった漢の邪な策(6)

 女王アイカと健太の会話に割って入るように男性の声──。



 そう~? 先程から女王アイカの真横で、王の如く立ち並ぶ、オーク最強の漢が口を開き言葉を放つ。


 またその話を聞き、彼の横で並ぶ女王アイカが健太からウォンへと視線を変えて。


「うん、そうみたい。ウォン~。私も今初めて聞いたのだけれど。健太の故郷もこの国と一緒で相撲が国技みたい。ねえ~? そうなんでしょう? 健太?」


 女王アイカは、最初はウォンと会話──説明をする。


 その後は健太へと訊ねるのだよ。相撲が日本の国技かと?


「うん、そうだよ~。アイカさん~。だから日本は太古の時代から相撲を盛んにおこなっていたみたいだよ~」


 と、また健太は得意げに日本の相撲文化を簡易的ではあるのだが、得意げに説明をするのだよ。


 ウォンの邪な策……。離反の計に、彼も彼女も陥っているとも知らずに。健太は女王アイカへと嬉しそうに笑みを浮かべながら、如何にも、日本の相撲文化に、自分自身も触れているが如く説明をしてしまったのだ。


 だから女王アイカの横で立ち並ぶ男……。ウォンの口の端が、『ニヤリ』と吊り上がるのだよ。


「そんなに時期王の母国で、相撲が盛んならば、俺と手合わせをしてもらいたいものだよ~」と。


 健太に告げる。



 と、いうよりも? 自身の横に並ぶ、女王アイカへと、多分告げたのだと思われる?


 だって~。ウォンの言葉を聞き、健太は「えっ?」驚嘆──!


 それに続くように女王アイカの口から。


「それはいい~」と、彼女は、ウォンの妙案を聞いたような様子で納得した台詞を漏らす。


 それも? 自身の両手を『ポン!』と、叩きながらだよ。


 だから今度は、健太の顔色が変わる。


 ……だけではない?


 健太の後ろで控えるシルフィーや、この町の領主……。長であるエリエや。今迄興味本意に四人の会話を聞いていたウルハもこれには流石に顔色を変えて。


「長~!」と、彼女は慌てふためきながら声をかけたのだ。


 だって~? 誰が見ても~。ひ弱で軟弱──! 


 少女みたいな細い肢体をしている健太では、オークの男達と、武を比べても、明らかに劣る事明白……。


 ましてや? 健太に相手になって欲しいと嘆願をしてきたのは、オーク最強の漢だと自負……だけではなく。


 他国からも絶賛されている武士のウォンなのだよ。


 だから両者が相撲をとれば、大人と子供……。


 いや~、それ以下かも知れない~?


 大人と赤子ぐらい力の差は歴然だから、四人だけではなく。


 この場に集まり、次の祭典の為の、相撲の練習を観戦していた者達皆が顔色を変え始めたのだよ。



 だって~。自分達が敵わない男に、いくら次の王だとしても人種の健太だと闘うだけ無駄だと思うからね~。


 まあ、周りがそう思うぐらいだから、当事者の健太の象牙色の肌を持つ顔が、みるみる青ざめていくのだよ。


 だからウォンはそんな様子の健太を横目で見ては、苦笑──。歓喜をあげたいくらい嬉しくて仕方がないのだよ。


 でっ、従兄のウォンに遠回しに健太と相撲とりたいと嘆願された女王アイカなのだが?


 ウルハの叫びに反応──。


 オーク最強の漢……。自身の従兄妹であるウォン相手に健太では無理だと悟るから。


「う~ん、流石にウォン相手に、健太では厳しいと思う? だからまた次の機会でいいでしょう~? ウォン~?」


 と、告げる。


 また女王アイカの言葉を聞き──。健太やその他の者達……。


 シルフィーにエリエ、ウルハ等は『ホッ』として。自身の胸を撫で下ろすのだよ。


 逆に、自身の邪な策が失敗したと悟ったウォンは、怪訝しい顔……。表情をするのだよ。


 自分自身が妙案した離反の策が功を奏しなかったので。


 う~ん、でも? 取り敢えずは、今迄の重々しい空気から一変──。穏やかな空気へと変わり。落ち着いた雰囲気へと以降し始めたこの場……。


 それをまた重々しい物へと一変する台詞を女王アイカは口にするのだよ。

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