第10話 男王になれなかった漢の邪な策(2)

 そう、女王アイカとシルフィーなのだが。二人は余り仲が良くはないのだよ。見た目通りでね。


 だから尚更この国に二人……。女王アイカと、丞相であるシルフィーとの間に闇の噂が、国内で後を絶たない状態なのだ。


だって傍から見ての通りだ。此の国の男王健太が彼女、シルフィーに対して『僕の女神さま』と、親し気に呼ぶ通りと。彼女、シルフィーの健太への甘え方。この領地、エリエの集落までの道のりまでに和気藹々、仲慎ましいデートの様子を思い出せばわかる通りだ。


元々健太は、シルフィーの己の素晴らしく美しい碧眼の瞳に、強引に入れ込んで埋めようが、彼女は痛く無いほどに可愛くて仕方がない。隠し持ち続けてきた財産であり。宝である夫。主なのだ健太は。でも、この度の健太と女王アイカの婚姻の儀式を思い出せばわかる通りで、此の国の丞相として生涯女王アイカへと忠誠を誓う証として、人質、夫質ではないが? シルフィーは、自身の異世界日本に隠していた夫の若い時。一番可愛くて仕方がない。美少年時代の夫のことを泣く泣く差し出したのだ。


だからそれ以来、この二人は、此の国の国民全員が知るほどの険悪な、義理の親子でね。いつ内戦が起きても仕方がない状態なのだが。


その辺りは、女王アイカの妹でありシルフィーの娘でもあるプラウムとサラの二人が、姉と母のいがみ合い。睨み合いを上手く中和させている状態だから内戦には至っていないのだと、説明をしたところで、健太が……。


そう、何で、シルフィー。己の本当の妻、妃に対して太々しい顔、態度、様子……。不快感を募らせた状態でいるかと言えば? まあ、皆もそろそろ気が付いたと思うのだが?


プラウムとサラも健太の妻、妃ということは、二人のエルフ、ダークエルフの姫巫女さまは、健太の娘ではない。女王アイカの他界した父の子であり。女王アイカとは、母親違いの姉妹になる。なると言うことは? 健太は女王アイカの父に、最愛の妻をNTRをされ、奪われたことになるから。自身を裏切り浮気、不倫をした妻のことを健太はいいようには思っていない。いないから。この世界にきて直ぐに女王アイカの夫となった。エリエやプラウム、サラ、ウルハにライザと女王アイカの一族の女達を、次から次へと妃にしては、自身の本当の妻、シルフィーに対して当てつけをしてみせたのだ。


でも彼女、シルフィーは、健太と違い大人の女性……。その上、国政を預かり。軍まで指揮する戦勝の女神さまだから、まだまだ子供染みた夫。建太への所業に対してムキにはならない。ならないのだ。た、多分ね? と、だけ言っておくよ。


だって眼下で、健太を挟んで、女王アイカとシルフィーは、只今対峙──。睨み合いをしている最中──。その原因となっている夫健太は、女王アイカの気に入らない嫉妬心の原因となる女性。シルフィーの匂いを身体中から『プンプン』と醸し出しているから。彼女は二人が気に入らない。嫉妬心を只今募らせている状態。


またシルフィー自身も、何故女王アイカが、自身に不満があるのかもわかっている。いるから尚更気に入らないのだ。元々というか? 未だに健太の本妻は自分だと自負しているシルフィーだから。自分の物、夫と肌と肌の触れ合い、夫婦の営みをしようが、義理の娘に文句を言われる筋合いはないとシルフィー自身も思っているし。再度これは自分の物だと。女王アイカに再確認をさせるために仲の良い行為に及んだ筋もある。


まあ、実際その後だから、此の国の男王健太も、こんなにも機嫌が良い訳だから。また自分の許に、一目惚れ、初恋の相手である美と豊穣、時の女神であるシルフィーが彼の許、手元に戻り甘えてきた訳だから。更に大御機嫌な健太なのだ。


まあ、こんな様子の三人を凝視しながら。悪意を募らせていたウォンは『ニヤリ』と苦笑を浮かべるということは、何かしら策が? 男王健太を陥れるための邪な策が思いついたのかも知れないねと、思うのだった。




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