第6話 エリエの集落、領地にて……(2)
「……ん? きちゃった」
そう、女王アイカに問われた健太の口から漏れた言葉、台詞は、女性が男性に対して、何の予定も報告も無し、しないで抜き打ち。突然に訪問、現れた時に使用するような甘え声音で、女王アイカへとアヒル口で告げるものだから。
女王アイカの周りに集っているオークのアマゾネス達……。女王アイカを筆頭に、妹のエリエに従妹のウルハと。その他の一族のアマゾネス達や一般のアマゾネス達も皆揃って、少女、乙女のように可愛い美少年王健太の微笑みとアヒル口顔に対して、魅入り。うっとりしながら。『萌!』、『萌! 萌!』、『萌、萌キュン!』なのだよ。
健太が余りにも可愛いから見惚れてしまうのだ。オークのアマゾネスのお姉さまたちはね。
でも直ぐに、一人だけ我に返る者、アマゾネスがいる。いるのだよ。
そう、健太の妻である女王アイカだけは、彼女の身近、側近の一人である
オークの漢戦士であり。領主でもあるウォンと言う名の男性、だけならばいいのだが。
彼は! ウォンは! 女王アイカの元婚約者、彼氏、夫だったかも知れない程、仲慎ましい二人だったのだが。彼、ウォンが、女王アイカの逆鱗に触れる行為をしてしまい別れ、婚約解消、離別といって経緯を持つ男性だから。自身の元カノ、婚約者が。自分以外の男に対して、己の目尻を下げ、顔を緩め、見惚れ、『萌、萌キュン!』、『ハートマーク』をしている様子を見るのは面白くはないから。彼は「ゴホン!」と、一咳入れると。
「試合中だぞ。アイカ」と。
不満、不服のある声色で、女王アイカへと名指しで呼びかける。彼女、彼達の目の前には、女王アイカの完全な夫である健太いるにも関わらず名指しで、気安く。此の国の女王を呼ぶのだが。
この場にいる者達は、いつものことだからと余り気にしていない様子でね。二人と向き合う健太でさえ、全く気にもしない。とめてもいない様子なのだ。だが。向き合う男と漢──。
その男達の横に佇む女達、此の国の女王アイカと丞相であるシルフィーの二人は、そうはいかない。いかないのだよ。
先ずは女王アイカなのだが、自身の元カレに声をかけられて我に返ると。自身の夫、主、男王の横に仲良く並ぶ義理の母であるシルフィーのことを、己の美しい顔の眉間に皴を寄せて怪訝な表情で見詰める。
そう嫉妬心を募らせた女、女性の目で、『何故貴女が、私の夫と今一緒にいるのだ? それはもう、貴女の物ではなく。私の物だ! 財産だ!』とでも言いたい。不満のある顔で健太とシルフィーのことを交互に見詰める。
でっ、逆にシルフィーの方はと言うと?
『何でアイカさん,、貴女は元カレに、未だに名指しでアイカと呼ばせるような事、行為をさせているの。貴女はうちのひとの妻であり。一族の女性。妻達を束ねる者なのに。何で未だに、そんな優柔不断事。ウォンの奴を自身の身近に置くような事をしているの。まさか貴女は、家のひとの事を侮り。蔑ろのにしている訳ではないでしょうね?』と。
まあ、お互い。男の側に並ぶ女性同士が怪訝な表情で睨みあいをしながら対峙を始めだすのだが。
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