12 狼の群れ
「君達」
どういう状況かというと、軍全員正座させられ、目の前に零が仁王立ちをしている。
「何で私を呼ばなかったの?」
横を通る看護師や医師が二度見、三度見としていく。真っ白な床や壁にいい年した大人や子供がずらりと並んでいる。…混沌。だが、それが、日常に戻ったような気がしてならない。透は体を起こし、その姿をニヤニヤしながら見ている。それを横目に見ると、
「ちょっと、祐希それ貸して!!!」
祐希の松葉杖を奪い取り、透に向けた。
「ちょっお前!松葉杖は武器じゃねぇ!」
「うるっさい!お前らがボロボロになって帰ってくるからでしょ!あんたにいたっては喘息があるし。自分のことくらい自分で管理しろ!馬鹿!」
「馬鹿はねぇだろ馬鹿は!」
「うるさい!馬鹿!」
そのあと、もう!と言って、足音を踏み鳴らしながら出ていった。それを見送ると、皆は顔を合わせて笑った。だが、まだ空が目を覚まさない。大規模な脳内弾丸摘出手術を終え、昏睡状態。誰も、もう目を覚まさないとは言わなかった。思わなかった。医師に何を言われても信じ続けている。毎日誰かが見舞いに来ては色々なものを置いて行った。フルーツにお菓子に本に花。それは、空が、この機関がしてきたことの賜物だろう。汚れ仕事やバケモノ、人でなしと言われても尽くし続けてきた。一匹狼が群れとなった瞬間だっただろう。
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