5 狼の作戦

「やっぱり」

祐希のいる部屋に駆け込んだ透は驚きもせず、恐れもせず、ただその悪党を見つめた。

「おやおや、透君じゃないか。見て、聞かれちゃぁ仕方がないね」

透は背後から迫ってくるもう一人の気配に気付かなかった…のか?

「うおっしゃぁ!帰るよー!」

零がいつもの大声で叫ぶ。しかし、皆は深い溜息をついた。

「どうしたどうした」

「ハードスケジュールで疲れたんですよ」

祐希が、さらに深い溜息をつく。零は、ふーん、と頷くと、車を走らせた。車内には零と空の二人。透は祐希が心配だと別車に乗った。重苦しい車内で、空が口を開く。

「僕の恐怖症、知ってる?」

唐突な投げかけに零は一瞬隣を見た。

「返り血恐怖症。死体フェチなのにおかしいやつ」

少し嘲るように言った。

「その理由についてなんだけど」

「うん」

空のじれったさに、握っているハンドルを指で叩く。

「僕の兄について」

「うん」

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