4 狼の信用

「…空…先輩?」

祐希が目を覚ます。

「ごめん、起こした?」

タオルを持った空が、それを氷水につける。祐希は遠慮がちに首を横に振った。月明かりが窓から差し込む。祐希はそれを眺めて、半目をまた少し閉じた。

「俺、結構寝てましたよね」

空は苦笑する。そして、祐希はゆっくりと話し出す。

「あの二人、来た時からおかしいと思ってたんです。彼らからは犯罪の匂いがする。それにあの西川って人おかしいんです。人間の匂いがしない。で、警戒してたから手合わせにも勝てたんだと思います」

空は二回ほど頷くと、氷水タオルを渡した。真剣な眼差しで向かい合う。

「祐希」

「はい」

「一軍に入らない?」

祐希は固く結んだ。だが、その後大人びた笑顔を見せると

「すいません、今は気持ちだけ」

と言った。残念そうに肩を落とす。

「一応理由聞かせてもらってもいい?」

「嘘臭さ程度で倒れるような俺です。殺人事件の事情聴取とかしたら死んじゃいますよ。何も役に立てないかと…」

空は納得して、少し残念そうに部屋を後にした。一人、広い部屋に取り残された祐希は窓際で月を見上げた。

「陸さん。俺はどうしたらいいのでしょうか」

そんなことをポツリと呟くと月明かりは視界を後にした。首筋の激痛と共に…

「祐希の調子はどうだ?」

部屋に戻った空に問いかける。

「ん?もう大丈夫みたい」

だが、透はその言葉に安心せず、少し視線を逸らした。

「おい、空。祐希が危ねぇかも」

それを聞いて、頭上にエクスクラメーションマークを浮かべる。

「なんか、企んでるぞ。あの二人」

「知ってる」

その言葉に透は少し顔をしかめた。怒りとは少し違う。信頼とも少し違う。音を拾いながら、空の方を見ていた。透は無言のまま、部屋を後にする。

「賭けるよ」

その後ろ姿に一言呟き、一本の電話を掛けた。

「あの、死体蘇生の件で…」


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