3 狼の辛さ


「おい、祐希はどこ行った?」

辺りを見回してもあのムードメーカーが見当たらない。すると、目の端に蓮の手が映る。

「あの…昼寝してます」

「昼寝ぇぇぇ!?あいつは幼稚園児かぁぁぁ!」

空が隣でクスクスと口を押えて笑っている。透は図ったようにくしゃみを一つ。すると、突然蓮に監督を任せ、他二人を外に連れ出した。

「どうした?」

「祐希のことなんだけど」

二人の脳裏に阿保面の彼が映る。それも、空が話した内容によって、緊張が駆け巡った。

「ってことは私達と一緒ってこと?」

空は無言で頷く。

「で、さっき祐希が気分悪いて言ってたからどうしたのって聞いたら」

二人は息をのむ。

「あの二人の嘘くささに気分が悪くなったんだって」

「マジかよ」

透が声を漏らす。

「祐希曰く、この合宿は必ず何かが起こるって」

「マジかよ」

今度は。零が声を漏らす。やっぱり、似た者同士じゃないか。戻ると、二グループに分かれて練習をしていた。

「一~四、五~八軍に分かれています」

「良い判断だ」

空が蓮に笑いかける。蓮は嬉しそうな表情を見せると、走っていった。

「じゃあ俺、五~八軍行ってくる!あいつらを鍛えてやる!」

透が突然、腕を振り回しながら去って行った。空と零は口をあんぐりと開け、お互い顔を見合わせた。

「あれ?透先輩向こう行ったんですか?」

蓮が零に問いかける。不思議そうな顔をして頷いた。

「あれ?透さん。こちらに来たんですか」

小百合が問いかける、笑って頷く。

「どうしたんです?」

「んー。いや、あいつらと一緒にいるとなんか辛くて。一軍だと俺が一番弱いからさ」

遠い目をしていた。初めて見せた顔に皆は首を傾げる。

「透さん!贅沢すぎます!!」

小百合が珍しく声を上げた。透は目を丸くする。

「私ら、こんなに頑張っても追いつけないのに!」

と頬を膨らませた。透は何だか救われた気になる。小百合の頭を撫でると、よっしゃー!と気合を入れて、始めた。

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