2 狼の本音
「あなたが現機関長の如月空さんですか?」
一人の女性が空にマイクを向ける。数台のカメラにキャスターが集まっていた。空は黙ってこの状況を見つめていた。
「はい、そうです。えーと何か?」
「今日、前機関長の岡村さんと話をされると聞きまして…」
空は眉をひそめた。
「何をお話しされるんですか?」
「知りません」
「何かありません?」
とマイクを傾ける。空は女性を一瞬睨んだ。女性は小さく悲鳴を上げる。しかし、空は絶え間なく言葉を並べた。
「何で静かに食事させてくれないんですか?というか何処からその情報を?確かに新旧機関長が食事会なんて良い記事になるでしょうが、プライベートなのでやめていただきたい。それにあの人はもうすでに一般人なのですから」
と言って微笑んだ。記者達は次々に目を逸らすと、道を開けた。中にはもう岡村が到着していた。
「まったく。マスコミが集まっていると思えば、こうゆうことですか」
と深い溜息をついた。
「僕、どれだけ警戒されているんですか。重装備ですね」
岡村の周りには武装した人が十人ほど立っていた。そのツッコミにも応じす、座りなさいと指示した。が、椅子を引かないうち、おもむろに机の下を見た。岡村は口をポカンと開けている。空は機械を手にして、下から出てきた。
「それは…」
「盗聴器ですね」
と言うと、握り潰した。それはパキッと音を立てて散った。落ち着いたところで腰を下ろすと、岡村は即座に話し始める。その目は子供のような輝きと大人な冷静さを兼ね備えていた。
「君のその能力はいつからのものだ?」
「生まれつきですよ」
「そうかい、まあこれは余談だ。本題だ、君の兄のことだ」
空は少し目を細める。ただ、なにも言わず、黙っている。
「八年前のことは残念だったよ。そこで…だ。先日の事件をうけて、君が真の撲滅会の会長なのではと私は疑っている」
両眉を上げ、歯を食いしばった。
「それについて君が撲滅会について、知っていることを話してほしい」
感情を押し殺し、拳を固く握った。
「虫唾が走るんですよ、何を訴えたいか知りませんけど。ワラワラと。それに、先日皆殺しにしましたよ」
岡村は眉一つ動かさずに聞いていた。
「じゃあ、何で入った?あの時期に」
「元々入ろうと思っていたので。特に深い意味はありません」
そうはっきり答えると、お茶だけを飲み干し、店を出た。料理には手を付けずに。岡村はポケットから白い粉を取り出すと、机に置いた。
「岡村さん、それは…」
「麻酔薬だよ。彼は気付いていたようだね」
付きの者はさっと身を引いた。岡村は少し笑うと、空の背中を思い浮かべ言った。
「まったく素直じゃないな」
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